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運命の恋人

2006年09月12日 07:27


すてんれす
或いは
びにーる傘
みたいな色合いで波打った
今にも夕立がきそうな空

その空の下に
世界中で生き残ったのは
自分一人だ
みたいな顔をした
少年が立っていた
少年は眼を閉じていた
こまかな睫毛が震えていた

何をしていたのかと云うと
呼んでいたのだ
誰をかと云うと

実は
思春期の少年には
誰にでも
みんな超能力があるのだ
だが
その超能力は
十五歳になると自動的に消滅してしまう

そして少年は今年十五歳だった
だから手遅れになる前に
地球の真裏にきっといるはずの
自分と感覚のかっちり合う少女を
てれぱしー
で呼んでいたのである

すらすらっと風が吹いた
少年の前髪が揺れた

さて同じ頃
地球の真裏に住む少女が
どこからか自分を呼ぶ声を聞いた
少女は乗っていた牛から降りて
耳をすました
どうやら遠いところから
呼んでいるようだった

少女には超能力がなかったが
その代わり
賢い頭と
きらきらした眼と
よく聞こえる耳とがあった

少女は暫く耳をすましていたが
空耳だと思った
神様なんていない
とわかっていたから
やがて牛が焦れたように鳴いたので
少女は慌ててまた牛に乗り
ゆっくりゆっくりと帰っていった

少女が通り過ぎたあともなお
そのあたりの空には
少女を呼ぶ声が
暮れ残ったように
漂っていた

すらすらっと風が吹いた
少女は一度だけ振り返った
だが
引き返すことはしなかった

二人は俗に言う
運命の恋人同士
だったのだが
結局出会うことは無かった
世界中には
そんな風に
出会わなかった恋人達が
無数に存在するのだ

だからどうということもないけれど

少年は
何事もなく十五歳を迎え
超能力を無くし
ほどほどに好きな女の子と
円滑に
恋愛とその行為とを済ませた

少女も同様に
何の支障もなく
成長しやがて子を成した

二人は
あれからずいぶん経って
空港ですれ違った

眼と眼が一瞬合い
火花が散った
だが
それだけだった

あのときのような
夕立がきそうな空だった

風は吹かなかった

ざわざわした空港の中で
二人はそれぞれの行く先へ溶け込み
そうしてもう
死ぬまで出会うことは無かった
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コメント

  1. 月代佑 | URL | hzq8qpAo

    うーん。。。

    いつもいつも、素晴らしい詩を読ませてもらってます。ありがとう。


    僕もずっと、ぼんやりと考えていたけれども、詩に書こうとは思わなかった事を、僕には思い浮かばなかった見事な言葉遣いと構成で書いていて。
    改めて、詩人に大事なのは何を見るかじゃなくて、見たものをどう詩に変換するかなんだなぁ…と思わされまして。


    やっぱり群青さん、さすが。。。

  2. BlogPetの小雨 | URL | -

    小雨がざわざわするつもりだった?

  3. のの | URL | D6osuj36

    これすごいですね。なんだか胸が熱くなりました。まだドキドキします。

    2連目は個人的にツボでした。「映画の主人公に
    なりきっちゃう」みたいな、思春期の男子の滑稽さがにじみ出てて。

    よいものを読ませてもらいました。ありがとう。

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