スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

三回の恋の結末

2006年09月02日 17:18


ある日の夕暮れ
わたしは三回恋をした

一人目は
怪しげな露天商だった
かれは褐色の肌をしていた
錆びたような夕暮れによく似合う色の
更紗のような質感の

うつむいたときに浮き出す首の骨が
美しい野性動物
もう絶滅したはずの野性動物
みたいに見えて

気がつくと
心臓の部屋が左右とも火事だった
消防隊の要らない火事

わたしは
じゅうじゅうしながら
二千円払って
がさがさした首飾りを購入した

露天商はわずかに笑った
ありがとう
と言った
そして装飾品が並べられた絨毯に乗って
遠くへ飛び去ってしまった

わお

こうして
最初の恋は
五分で終わった

二人目は
肉体労働者だった
かれは汚れた頬に
もっと汚れた眼鏡をかけて
道端で烏龍茶を飲んでいた

細い腰に作業着がたぶついていて
なんだかか弱い中学生
制服を初めて着た中学生
みたいに見えて

わたしは洪水に襲われた
わたし以外の
誰ひとり溺れない洪水に

かれの眼鏡を拭いてやろうと
わたしは一歩近づいた
と同時に
ガードウーマンらしき女性が
横から走ってきて
素早くかれをさらっていった
そのまま二人は何処かへ消えた

わお

二回目の恋は
十五分もった

三人目は
サラリーマンだった

かれは永久機関のように
高速で眼球を動かし
ときどき珈琲をすすっていた
喫茶店で
誰もかれには気付いていなかった

突然
わたしは落雷に打たれた
絶対に焦がされることの無い落雷に
そしてそれは
今までで一番酷かった

わたしはゆっくり近づいた
敏捷な雌ライオンみたいに
最初は斜め後ろの席
次は真後ろの席
次は横の席
最後に
何食わぬ顔で向かい側に座った

かれは一瞬目を上げたが
すぐ本に戻った
結ばれた口は
亜熱帯の花
深夜にひっそりと暑い地面に咲く花
のように見えた

一時間して
かれは本を読了すると
かばんに本とわたしをひょいと入れて
立ち上がった

かばんには煙草とライターと筆記用具が入っていた
わたしはずっと
膝を曲げてじっとしていた
鎖骨に何度もライターが当たったけど

三回目の恋は
今でも続いている
幸いにも

あとは
絨毯で逃げられないように
誰かにさらわれないように
祈るしかない
スポンサーサイト


コメント

  1. 秋 | URL | -

    恋話だ

  2. | URL | .R6HY82k

    最後の方で現実感が薄れて崖から落下した気分に。面白い。よいです。よいです。

  3. 禮 | URL | -

    楽しい

    パン屋のオソノさんみたいに「ワアーオゥ」て言いたい詩です。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。