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薬局と薬剤師

2006年09月02日 05:03


絶え間無く流れる
ジェイポップ
その間を縫って
病的な化粧のままで
わたしは薬局へ向かう
こまごました錠剤を買いに
毒薬のように光る顆粒を買いに

その薬局は
小さい蜘蛛の巣みたいに
ひっそり
壊れそうに建っている
前を歩く人たちは
その存在にさえ
気付いていないのじゃないか
そう思わせるような
そう思うしかないような

自動ドアーをくぐると
店内はうすぐらい
棚の間にはいつも
誰もいない
ちょっとばかし冷房が効き過ぎていて
水の中を泳ぐような案配

わたしは真っ直ぐ薬剤師の前に立つ
他に店員はいないし
見たことも無いから
ただ背後で勝手に
薬箱が動いたり
足音がしたりするので
おそらく
透明人間でも雇っているのかも知れない

わたしは弱々しい笑みを浮かべて
ミスター薬剤師
薬をくださいな
強烈であればあるほどいいな
そして褐色の紙を一枚
ひらりと

薬剤師は感じ良く返事をして
箱をいくつも積み上げる

鎮痛剤
総合感冒薬
栄養補給剤
トローチ
タイガー・バーム
便秘薬
サプリメント
胃薬
睡眠補助剤

箱はうずたかく城壁のように積まれ
薬剤師の手は白く華奢で
薬を量るためだけに作られたようだ
わずかに冷たいにおいが漂い

わたしは無数の箱の中から
たいてい鎮痛剤を選び取る
錠剤がからからと鳴る
四分の二拍子で
メトロノームにも似た硬質な

薬剤師はわたしから箱を受け取ると
あまり飲み過ぎないように
と言いながら包装する
わかっているのだ
もちろんわたしは飲み過ぎる
だから二週間おきに来店するのに

レジがチンとかいいながら
高速で開閉する
わたしは紙袋を右手に握り
ありがとう
ミスター薬剤師
これでもう大丈夫だ

振り返らずに店を出る
大丈夫じゃないのに

歩きながら紙袋をひらくと
鎮痛剤の箱の横に飴がおまけで入っていた
れもん味の

降水確率五十パーセント
朝のラヂオで言っていた通り
雨が降りだし

頭が痛む
どうやら微熱が出てきたようで

いつの間にか薬剤師の顔も
店の名も忘れていた
探しても薬局なんか
どこにも見えなかった

鳩が一羽
虚空に円を描きながら
幻みたいに
飛び去って行く
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