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妊娠検査薬は大抵コンドームの横に置いてある

2011年04月23日 04:34

 (たしかなことなどなんにもないのだ)

とろりと何かが流れ出してくる気配がし
ぼんやり臍下を見下ろした
女性特有の何かが分泌されたというより
今日いちにち体内へ取り込んだ陽光の
取り込みすぎた分だけが
自動的に排出されたような温度を感じた
信号が点滅をはじめる わたる
青信号の中にとじこめられているひとは
憧れるような角度でいつもすこし上をみあげている

待ち合わせに指定した場所は
公衆便所の目の前のベンチ
大きな桜が身悶えしながらひらききっている真下だった
奇妙にあかるいのは
桜が発光する性質を持っているためだろう
どう目を凝らしてみても群がっている花のひとつひとつに
焦点を合わせることができない
(だから未だにわたしは桜の花の形を知らない)

便所に入りひとつひとつの個室を覗いているととつぜん眼前に汚いタイルの上に産み落とされ赤い顔で喚く嬰児の姿が浮かび呼吸が浅くなるなぜだろうわたしにはまったく関係ない光景なの ほんとうにそうだろうか? に 一番らくがきの多い個室に飛び込み鍵をかけ 壁に目を這わせる そこから人の臭いと体温を読み取ることに集中する やがて落ち着いたわたしはしゃがんで排泄する 陽光が流れ落ちてゆく 立ち上がりざま便器に唾を吐く 唾液に花びらが混じっている ドアを開ける

―ベンチに座る 明るすぎてねむい
―キオスクで買った新刊の推理小説を結末から読む
―(1時間が経つ)
―深く満足して文庫本を閉じる
―殺されたひとが蘇生して日常に戻る
―とても平穏なおはなしだった
―(1時間半が経つ)
―木の棒を拾って足元をえぐる
―どこまで深く掘れば
―この地のちょうど反対側にある
―外国に到達するんだろうな
―(2時間が)

経ったところでベンチを立つ
(もう来ないのだろう な)
数歩を踏み出す 急に電気が消えたように目の前がまっくらになる はっ とする
手首に目をやる 時計の文字盤が逆になっている
(あ 今日いちにち逆に嵌めていたんだ)
正しい向きに直す
(待ち合わせ時刻は午前10時で今は午後8時半)
振り返ってみる
しいんとそこだけ明るい桜の下の公衆便所とベンチは
残り物がごたごたとのっかった深夜の食卓によく似ていた
光ごと 闇ごと 息を吸い込む
(にんしん、した、かもしれない)
来るはずだった相手に言うはずだった言葉を
すぐ飛び出してくる形に折り畳んで舌へ載せ鞄を探る
未開封の検査薬が安っぽい感触で指にあたる
わたしは携帯電話の発信ボタンを押し( ――― )
首を傾げ ( おかけになった電話番号は )
耳に( 現在 )
当てた ( つかわれておりません )

暗転

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