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2011/2/17

2011年02月18日 20:01



テーブルの上に置いてある
覚えのない手紙を焼き捨ててから
ごみを出しに階下へゆく
ぬるい雨が降っている
わざと傘をささずに出て
優しく突き刺される感触をあじわう
路傍の濡れた土からは
いつか誰かが遠い日に埋めたもの
花の芽や手や髪の毛やねこのしっぽなどが
だんだんと萌してきているから
春がもうそこに来ているとわかる



金魚店で金魚の餌を買う
いつからだか忘れたが
わたしの心臓の辺りは
硝子のように透け
向こう側を
金魚が泳ぐようになってしまった
誰のせいでもないのだろう
店を出てすぐしゃがみこみ
授乳するように胸をひらく
最初
可憐な金魚だと思っていたものは
このごろ急に大きくなり
醜い深海魚の姿に似てきた
進化しているのか退化しているのか分からない
これ以上おおきくならないでくれよ
餌をやりながら言うと
わたしそっくりの声で
おまえが望んだんじゃないか
と笑う
胸の奥が泡立つのを感じる
否定できないから
悲しい



君の体を蛍光灯の下で
すみずみまで眺め
細部のかたちまで憶えようと努める
何かの拍子に君がばらばらになってしまっても
すぐに組み立て直してやれるように
或いは君の存在が
爪いちまい
指いっぽん
耳ひとつしか
残らなくても
必ず君だと気づけるように


深夜
だれ宛でもない手紙を書き
四つ折りにしてテーブルの上に置く
このごろのわたしは
眠ると何もかも忘れてしまうから
どうか覚えていますようにと
祈るようにそれだけ念じて目を閉じる
瞼の裏に浮かぶ模様は鮮やかだ
見惚れているうちに眠りがやってきて
おやすみ、も言い終わらないうちに
わたしはあっさり沈んでしまう

すとん



月刊 未詳24/2011年1月・2月合併/第46号 投稿

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