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なつのたべもの

2010年09月24日 20:28



あまりに暑い日々だった
空は暑さに希釈されたように薄い薄い水色をしてい
飛ぶ鳥たちはまるで紙飛行機のように頼りなく滑空していた
わたしは毎日
起きている間は絶えず
ソーダ味のアイスキャンデーを口に咥えて過ごしていた
それは凪いだ海と同じ色で
舐めていると
わたしの体内を
すっと風が吹きわたってゆくような
そんな気持ちになって落ち着くのだった
まったく
あの暑さで頭が狂わなかったのは
コンビニのアイスコーナーの片隅に
常に積まれていた
あの62円のアイスキャンデーのおかげだと思う
あんまり舐めすぎたせいか
夏が終わった今でもわたしの肌は
なんとなく薄青いままだけれども


洗面所でずいぶん長い間
夫が髭を剃っている
見に行くと
夫は半泣きで剃刀を動かしていた
剃っても剃ってもあとからあとから
毛穴から染み出すようにして
かいわれ菜が生えてきていたからだった
もったいないのでそのまま生やしてもらい
夕飯どき
冷奴の上に載せて食べたのだが
醤油と混じってなんとなく
血の味がしたようだった


味の濃いものや色鮮やかなものは
ちっとも食べたくならなかった
色の薄い半透明な
たとえばくずもちやところてんやゼリーや
何かそんなものばかりが食べたくて
せっせと買ってきては食べていたのだけれども
八月の終わりの或る晩
わたしは腹痛を感じて目覚めた
身を起こすと何かにゅるりとしたものが
股の間から出てくる感触があった

と思って眼を遣ると
そこには半透明の人の形をしたもの
赤ん坊の幽霊みたいなもの
がひこひことうごめいていたのだった
そうかあの欲求は
暑かったからじゃなくて
赤ん坊がいたからだったんだな
と眠い頭で考えながら
一応抱いてもうひと眠りしたのだが
朝になるとそれはびしゃびしゃに溶けてしまって
あとかたもなく消えてしまっていた
わたしは
びしょびしょのパジャマを着たまま
しばし呆然と窓の外を見ていた

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