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くふし

2009年11月27日 00:57


好きだか嫌いだかわからない人と
居酒屋へ行って
お酒をのんで帰宅した夜
浴槽のなかでそっと体を開いて
固結びになっている腸をほどく
ついでに
心臓のあたりをまさぐって
引っかかっているものを
取り出してみる

鋭角に折りあげられた
赤い折り鶴がいくつも出てきた
あの人と会うといつもそうなのだ
知らぬ間に体内は
鶴のくちばしで浅く切りつけられて
じくじくと真っ赤に傷ついていて

もしかしたら
憎んでいるのかもしれない



誰かに
好き
と言いたくなったのだけど
誰もいないから
冷蔵庫を開けて
好き好き好き
と言いたいだけ言ってみる
ひいやりとした薄暗い冷蔵室は
死んだものの肉や
ねぎの青いところや
生卵や木綿豆腐などと一緒に
わたしの 好き を
容易く閉じ込めてしまう
ドアを閉めると
うん、と答えるように一度だけ唸った



夜中
階段を昇ってくる足音がする
いつからか忘れてしまったが
もうずいぶん前から
足音だけがこうして昇ってきて
わたしの部屋の前に
ぴたりと止まるようになった

開けてもそこには誰もいない
ただ微かな息遣いと
海のようなにおいがするだけである

きっと何かを悲しんで
自ら消えてしまった類のものなのだろう
かわいそうなので
夕飯の残りを皿へ盛り
ドアーの前へ
置いてやることにしている
朝になるといつも
あらかた無くなっている
とくに
煮崩れた肉じゃがを好きなようだ
舐めるようにべろべろ食べるらしく
洗ったように綺麗になくなっている

話しかけても
返答があったことはないが
昨日
皿を置くときに
もうすぐクリスマスですね
と呟いてみた

すると今朝
どこから持って来たものか
皿の脇に隠すようにして
指輪をかたどった飴がひとつ
ころんと置かれていた

それ以来ぱったりと
足音は昇ってこなくなった

わたしは無性にいらいらとして
肉じゃがばかり作って食べている

指輪の飴は
一度はめて近所を歩いたら
通りすがりのおばあさんに
とてもよく似合うと褒められた






※くふし…恋し。「こひし」の上代東国方言。
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