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かがなぶ

2009年10月01日 14:46


鏡を見ると知らない女が映っていた
日を経るにつれ
だんだんわたしの顔は変わってゆくようだ
知らない人になったらいやだなあ
と思いながら
眼を閉じてもとの自分の顔を
思い浮かべようとしたんだけれど
見えるのは曖昧な灰青いろばかりで
まなうらには
輪郭さえ浮かんでこなかったんだ

眼を開くと相変わらず
鏡のなかの女はじっと立って
中空をぼやん、と眺めていた
そのさまはなんとなく魚に似ていて

あさましい
とつぶやくと
ほんのわずかに顔をゆがめた



路傍に
軍手やかたっぽだけの小さい靴や
幼児用自転車なんかが
ぽつりぽつり
と置いてあるのを
見かけるようになってきたから

透明なひとたちが
夏よりも増えたんだとわかる

置き去りにされたようなものたちのそばに
持主はたぶんいるんだろうけれど
どうすればいいのかわからなくて
途方に暮れているのだろう
何も知らなくてかわいそうだ

わたしは手をのばして
透明なひとのいるとおぼしきあたりを
うすくうすくなでさすってやる
背後では
踏切の警報音が鳴りはじめて

遠くでだれかが
笑った気がした



スーパーで段ボールを選んでいる
平均よりすこし大きいわたしを
詰めるためのものだから
なるべく大きいのを探さなくてはならない

こんな風になったのはいつからだったろう
ある日部屋にひとりで帰ったとき
なんて広いんだろうと思って
しん、としてしまったのがきっかけだったように思うのだが

すっぽり入れそうなのが見つかったら
持ち帰って台所で組み立て
上手に手足を折りたたんでから
するりと隠れると安心する
だってもう誰にも見つからないし
きっとなんにも請求されないし
自分を
必死で証明しなくてもいいのだ

天井を仰ぎ見ると
夏の間に死んだ虫が
電灯のかさの中にたいせきし

なんてやすらかな夜なんだろう
きき、と笑ってそのまま眠った

おやすみ、二度と起きないよ















かがなぶ(日日並ぶ)…日数を重ねる。
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