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ファミリア

2009年07月29日 15:14


夕飯のあと
残した刺身を生姜醤油に漬けて冷蔵庫へしまう
こうしておいて翌日に
焼いて食べると美味しいというのは
母に教わったことだ
そういえば結婚して引っ越す当日に
母がお餞別と言ってわたしにくれたのは
蟹缶だった
昔から実家に置いてあったもので
父が出張帰りにお土産で買ってきてくれて
だけどもったいなくてずっと食べなかったやつだ
ところどころ錆びついていた
どうしようもなくさびしくなった夜中に
ひとりで泣きながら食べた
あの時笑った母に手を振ったまま
もう一年くらい帰省していない
刺身を漬け込んだ人差し指を舐めてみる
同じ材料同じ分量で作っても
どうしたって生姜醤油は
母の味に近づきすらしない


雨の降るうすぐらい昼さがり
こわいものが入ってこないように
窓もドアもすべて施錠して
安心して横たわり目を閉じる
もう誰も守ってくれる人はいないから
この身はじぶんで守らねばならないんだ

だけど
こわいものはいつだって
どこからだってやってくる

血の沢山出てくる悪夢を見て
あ、おかあさん おとうさん たすけて
と言って目覚めた
午後七時の闇が
親しげに部屋全体を覆っている
しいんとした台所には
炊飯器が静かに湯気をあげているだけで
誰もいない
そうだ
わたしから捨てたんだ


お中元を実家へ持っていくのがこわい
例外なく老いた
母と兄と父と祖母の待っている家を
夫と二人で訪ねてゆくのがこわい
お中元を持って行って帰ったあと
わたしのいない家で
みんながどれどれとか言いながら
まるで宝物を触るみたいにそうっと
わたしの持って行ったキャノーラ油三点セットとか
永谷園お茶漬けセットとかを
あけるかもしれない
と想像するのがこわい
二つ折りの携帯電話を開けたり閉じたりしながら
わたしの細胞にまで深くしみ込んでいる
市外局番からの電話番号を
押そうとしてでもやっぱり押さない
子供のままの甲高い声で
わたしや兄や妹が出たらどうしよう
と思ってしまうのだ

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