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2009年06月16日 01:04


陽の差し込む部屋で折り紙を折る
わたしは奴さんしか折れないから
床は色とりどりの奴さんでいっぱいだ
それらは
開いた窓の隙間から吹き込んでくる風で
生きているようにかさかさと
音を立てる

教育おりがみと書かれた折り紙の袋の表には
ヴィヴィッドでいびつな動物が
裏には
鶴の折り方が載っているのだが
どんなにひそやかに折っても
途中でくしゃりと潰れて
首になる筈のところや羽になる筈のところが
不格好に飛び出して
ただの死骸になってしまう

たぶんわたしは
何かを作るというよりかは
壊すために生まれてきたんだろうとおもう
指は細くて不格好な形をしていて
何かを取る時よりも捨てる時の方が素早く動く

その指で折れるのは一番単純な奴さんだけなのだ
折り紙のきれいな色を選り出して
角を合わせて縦横に折る
ふくろになったところを開く
たしか足の折り方も習ったはずなのだが
忘れてしまったから
わたしの折る奴さんはどこにも行けない形をして
ただだまって
友達みたいに横たわっている


ナイフで切った傷よりも
紙で切る傷の方が深いらしい

わたしは不器用だったので
学校で使うノートでよく指を切った
2Bの鉛筆で一生懸命書いては
くしくしと消した罫線の
ぼやけた白は暮れてゆく空によく似ている
せんせいは白墨で黒板いっぱいにたくさんの文字を書くから
慌てて写して頁をめくるときにすっと切れる

と声が漏れるとせんせいがやって来て
木の物差しでたたかれるから
くちびるを噛んで我慢する

学校で覚えて今も役立っているのは
我慢することだけだ
放課後の階段にて
背後から突き落とされたあのときを除き
わたしは一度も泣かなかった

精緻な直線ですっと切り込まれた傷から
わたしのうすぴんく色の中身が露出している
傷ついていることを誰にも知られないように
すばやく机の中に隠した


棺という言葉を知ったのは新聞でだった
葬式や惨殺や遺棄なんかも同様で

そのときわたしは
新聞の切り抜きをする宿題をやっていたのだった
子供用の鋏は先が丸いから
裁ち鋏のように
素早くまっすぐに切ることができないのが不満だ
裁ち鋏は大人のいるところでは使わせてもらえなかったから
留守番をしているときなどに母親の裁縫箱から持ち出して
こっそり部屋の隅っこの空気をしょきしょき切った
早く大人になりたいと願いながら

息を止めて新聞紙に鋏を入れる
案外容易く切れるのが面白くて
新聞紙をこまかな断片にするまで止められなかった
幾つもの切り抜きは
まっすぐ切ったつもりなのに
ふよふよと縁が曲がっている
畳の上に散らばった灰色の断片は
そこだけ陰鬱な景色が見える窓みたいだった
太い明朝体の文字は真っ黒くて
檻のような形の
難しい漢字ばかりが並んでいる

なんだか世界が生きにくい場所だということを
おぼろげながら理解できたような気がした

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