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ははおやたち

2009年04月11日 15:28


ある町の雑踏で
すれ違った母子連れの話だが

手をひかれている子供は
火のついたように泣いていた
母親はなんとなくあやしたりなだめたりしていたが
どうも泣き止まないらしいと気付くと
子供を苦もなくくるくるっと丸めて
ちょうど柔らかな毬みたいな形にしてしまってから
ひょい
と持っていた鰐皮のハンドバックに仕舞った
ハンドバックはしばらくもぐもぐ動いていたが
やがて動かなくなってしまった

誰も騒ぎ立てなかったし
わたしもなんとも思わなかった
帰りの電車に乗ってから

と気付いたのだった

あの小さな鰐皮のバックのなかで
あの子はどんな夢を見たかしら



きちっと飾り立てた礼儀正しい子を従えて
着飾った母親がぞろぞろと
うちの前の道を通ってゆく
入学式でもあるのだろう
さんさんと平和な朝の陽射し

ときどき子供たちは
はたっ
と静止してしまう
母親たちは慣れたふうに
彼らの後頭部あたりをねじ回しでいじくり
電池をぱかぱか交換するのだった

それらが全部通り過ぎ
あとに残ったものといえば
使用済みの夥しい単三電池と
不幸にも
電池を換えてもらえなかった
出来損ないの子供たち

ガラスみたいな透き通る眼で
じっと空を眺めている



深夜
ふと
わたしもいつか母親になるかしら
と考えると
どうしようもなく怖くなる

あんな人間になりかけの
花みたいに弱々しいかたまりを
慈しむことができるだろうか

考えたがわからなかった

代わりに子供の泣きまねをしたら
案外うまくできたから
ずっとそれをやっている

遥か彼方で最終列車が
戻れなくなるところまで
乗客を運んでゆく音がきこえる



月刊未詳24 四月号 投稿作
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