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日々の泡

2008年12月07日 04:20



走る列車を踏切から眺めている
始発から終電まで
同じ路傍でしゃがんだり立ったりして

動体視力を鍛えるためだ
と自分には言い聞かせていたけれども
いま思い出すとはっきりわかる
わたしはただ動くものを
見ていたかっただけなんだ
静止している眼前を
何もかもがすぐに通り過ぎてしまうから

終電の列車の四角い窓の内側で
みかん色の灯に揺られてる人々は
なぜかみんな眼を見開いて
物言いたげに
こちらを見つめていた気がする


深夜
顔に手を這わせると
かなりの高確率で
吹き出物が指先に引っ掛かる
それは熱を帯びていて硬く
まるで種子のようにも思える

人差指のつめで ぎっ と掻きとると
少し血が出たようだ

掻きとったものを見ると
それは紛う方なくわたしの一部で
そのまま土にまけば
やがて寸分たがわぬわたし自身が
土から発芽するであろうが
いつもそれをせぬままに
つい口に入れてしまう
すこししょっぱいような
淡い鉄の味がする
そういう風にして
かさぶたでもなんでも
口に入れて
飲み込んでしまうのがわたしの癖だ
体から出たものを
きちんと体へかえさないと
損なわれ続けて擦り減って
そのうち無くなってしまいそうでこわい

ファンデーションに塗り込められた皮膚は
いつまでもどこまでもするするで
砂漠のようなさわり心地だ


タップ・ダンスをかっこよく踊りたくて
時間が空くとどこででも
おかまいなしにステップを踏む
しかしあの踵の音が素晴らしく響く靴は
五千円以上するので買えないのだ
だからいつも
想像上の自分に履かせることにしている
想像上での自分は
舞台のスポット・ライトに照らされて
残像をまき散らしつつ誇らしげに踊る
ぴかぴかに光るとんがった革靴で
しかし実際は
路上ではスニーカーだし
家ならばスリッパだ
てててぱたたん
とつま先を上げ踵を打ちならし
以前よりはだいぶ上手になったと思うけれども
アパートの階下の部屋からの苦情もだいぶ減ったし
この頃は駐車場で踊っていると
階下の部屋に住む子供たちが
わたしの周りで一緒に踊ってくれるようになった
風になびく子供の髪は
男の子でも女の子でも
とても清潔で壊れやすいもののにおいがする

タップ・ダンスは
他のダンスよりも
孤独な感じがするから好きだ
踵を高速で鳴らし続けるところも
誰かを呼んでいるようでいいと思う
もしこの音を聞きつけて
誰かがそばへ来てくれれば
たぶんもうさみしくないだろう

アパートの駐車場には月光がさして
影もずいぶん長く伸びた
そんな場所でひとり踊るわたしは
何か非常に大きなものと
たたかっているように見えるかもしれない
たたたぱたたん

ベランダに干してある洗濯物が
手を振ってるみたいにゆっくり揺れてた

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