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妹との旅行記

2008年11月28日 01:27


巨体の割には玩具めいた動作をする
白い飛行機が
赤い土の露出した空港へ
ぽとりという感じで降り立ったとき
わたしは家から持ってきた
英会話集を読んでいた
隣に座っていた妹が
おねえちゃん
ここはニッポンだよ
と言うのでようやく
その西の果てのようにも思われる地が
ニッポンに属していることを知った
ナリタから飛んで三時間ほど経っていて
あまり何百も雲を飛び越したので
妙に年をとってしまった気分だった


空港へ降りると
変に天井が低い気がした
寒いかと思って
北極へ行くみたいな
厚手のジャケットを着てきた
わたしと妹は
物凄いよそ者の感じだった
そんな厚い上着を着ている人は
他にいなかった
重いバッグを右手に提げて
馬鹿みたいに立ち尽くすわたしたちは
最初すこしきょとんとして
それから確かめるみたいに手をつないだ
妹の指は細くて冷たい

わたしたち
とても遠くから来たよね
そして
どこまで行くんだろうね


町をふらついていると
雨が降ってきた
花のにおいがする
女の人は綺麗
でも
言葉の通じそうな人は一人もいない


商店街のようなところで
バッグを買った
そのバッグは留め金や材質が
非常にちゃちな作りで
持ち歩いているうちに
すぐ壊れた
だいぶ歩いてからだ
取っ手しか握っていないことに
気づいたのは


ビジネス・ホテルにチェック・インすると
妹は精液にも似たいろいろの化粧品で
顔を撫でくって
すぐに寝てしまった
わたしはベッドに横たわって
付けぱなしのテレビから流れる
衛星放送の
外国のアニメを観ていた
様々の色が行き来するアニメだったが
言ってることはひとつも分からなかった
何でこんなことしてるんだろう
その前に
何でわたし
こんなところに居るんだろう


明け方近くに
妹が寝ながら何か言おうとした
無理に何か言わなくていいよ
と言うと
安心してまた深く眠った
バラ色の頬をしている
少し微笑んでいる
この妹もわたしや他の人たちと同じように
誰かを愛したり
憎んだりしているんだろうか


やがて朝になって荷物をまとめると
一日でずいぶん増えている気がした
買った覚えのない生きたひよこや
何百本もの鉛筆や
目覚まし時計なんかが
バッグに入りきらず床に広がってゆく
妹はボストン・バッグに
三匹目の子猫を入れている途中で
でもあんまり無理に詰めると死んじゃうな
とか呟いていた
バッグに入りきらなかったひよこが
わたしのジャケットのポッケットで鳴いている


ナリタへ戻って
わたしと妹は
手を振りあって
あっけなく別れた
明日も会えるような気持ちで

けれどもあの旅行以来
わたしは一度も妹に会わない
あの子猫をどうしたのか
聞いてみたい気もするけれど
持ち帰ったひよこは
アパートの部屋で驚くほど成長し
ときをつくるようになったので
親戚の農家へ貰ってもらったのだが
それから食べきれないほどの卵が
アパートへ箱で届くようになり
処理に困っている




※今年の一月、妹と福岡へ一泊二日で旅行した時、旅先で書いたものを加筆・修正。
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コメント

  1. 青海亀 | URL | -

    はじめまして。
    素敵な詩ですね。
    他の作品もそうですが、
    そっけない感じでありながら、
    じっくりと展開してゆく感じが面白いです。
    それに、もちろん、
    ちょっとずれた(ずらした)感受性が魅力的です、私には。

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