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家族のこと

2008年11月18日 01:06


まるのままの白菜の芯の近くを
全体重をのせてざきんと切ると
その断面は薔薇の花に似ている
酒で煮込むと水がたくさん出るから
出し汁などは入れなくてよいと
教えてくれたのは祖母であった
彼女は白菜に
異常なほどの愛着を持っていて
それはごろりとしたその野菜が
ちょうど子供の大きさだったからかもしれない
白菜を抱いて
その辺を散歩してくることもあった
きれいな景色を見せてやるとうまくなるんだ
と言って
そのせいかどうかは知らないが
祖母が油揚げと煮付けた白菜は
りんごのように甘かった


庭の隅に枯れかけて
ひょろひょろと根付いている柿の木は
兄が六歳の頃に
小学校への入学祝いとして
親戚からもらったものであった
それを植えるための穴を
驚くほど素早く
錆びたすこっぷで掘ったのは兄だ
五歳だったわたしは
その光景を見て
この兄は
人を殺す方法を知っているのかも知れない
とぼんやり思った
あれからもう二十年になる
秋になると思いだしたように
たくさんの実を生らせるその幹には

兄が彫刻刀で彫った
呪詛のような文字が連なっている
ああ
あの頃から言葉が通じなかったんだなあ
なまっちろい体の兄は
成長することを拒否しているので
わたしより一つ年上のはずなのに
今でも小学生のように小さい


妹は
細い指と透明なつめを持った
たいへんに美しい子供だった
彼女は
人の畑からもぎってきたきうりに
しこたま味噌をつけて食べるのが好きであった
そんな妹は
美しいまま成長し
トウキョウの
イチブジョウジョウの企業に就職した
東京土産を携えて
時々こっちへ帰ってくる
まるで大人の女の人みたいだ
しかし帰省した妹と一緒に風呂に入って
鼻をつけて背中を嗅ぐと
洗っても落ちないほど強い
きうりの青臭いにおいがする
なんだかとても安心する


深夜
家族のうちの誰かが
そこにいるような気がして
ふと振り返るけど誰もいない
家のどこかに
隠れているんじゃないかと思って
カーテンの裏や
台所の収納や
いろんなところを探すけど誰もいない
随分遠くまで来てしまったんだな
わたしは
たった一人で
こんなところで
何をしているんだろう
と思う
血縁というのは呪いにも似て
そんな風にしていつまでも
わたしの体をざわざわ揺らす
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