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ぱくさん

2008年10月14日 02:24

ずうっと昔
いや昨日だったかもしれない
中国人留学生の ぱくさん と云う人と
わたしは知り合いだった
ぱくさんは日本語が上手で
人当たりがよかったので
誰とでも仲が良かった

或る日
ふと二人きりになった時
君の趣味はなに と訊かれて
少しも躊躇せずに
詩を書いている と言った
するとぱくさんは鼻で笑った
そんなお金にならないこと と笑った

わたしはぱくさんが好きだった
恋愛というほどではないが
互いの国の差異を理解し
中国語の文法をマスターしてもいい
と思うくらいには好きだった

黙っているとぱくさんは
日本は物価が高い
ぼくがマクドナルドで
アルバイトをして貰ったお金を持って
国に帰った時だけ
お父さんもお母さんも六人いる弟妹も
みんな喜ぶ
お金持ちになるから喜ぶ
というような意味のことをぼそぼそ言って
どうして働かないの
どうしてお金にならないことをするの
と本当に不思議そうな顔で
わたしを見つめた

一瞬だけ
ほんとうに一瞬だけ
わたしは ぱくさんを抱き締めたかった

けれど抱き締めることで埋まらない溝は存在する
わかるよ
という薄っぺらい相槌で慰められないことも
この世には無数に存在する
そんなことはどうしようもないほど分かっていた
だから何も言えなかった
時刻は日没の頃だったと思う
二人とも真っ赤な顔をしていたから

ぱくさんはその後しばらくして国に帰ってしまった
革命を起こすんだと言っていたけれど
今現在
中国で革命は起こっていないみたいだ
手紙を書くよと言ったのに
一度も書いていない
ぱくさんからも手紙はこない
それでもこうして
わたしはぱくさんのことを
お金にならない詩に書いている
わたしは全然偉くならないままだけど
ぱくさんは偉くなっただろうか
もう顔もよく思い出せなくなってしまった

日没がくると思いだす
振り返ってみると部屋の隅には
中国語を勉強しようと思って
でもニイハオだけですっかり投げ出してしまった
中国語の教材が転がっている
埃をかぶっているそれを見て
ニイハオと笑ってみた
鏡に映っているわたしの顔は
何もわかっていないような笑顔で

きっともう
二度と会えないから
切ない


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