スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

暑がりと寒がりの夫婦の最期

2008年09月29日 02:29

暑がりの女と
寒がりの男の夫婦だった
二人がどこでどうして出会ったのかは誰も知らない

ただ
靴がやがて汚れてしまうように
春がいつしか冬になるように
そうした当然の営みのような感じで
いつの間にか二人は一緒に居た

妻が表で生活できるのは
夏を除く季節の早朝と深夜
それ以外の時間は冷蔵庫に正座をして
ひとりで氷を齧るのだ
冷蔵庫はビルのように巨大なもので
中には赤い座布団がひとつと
黒い座卓が置かれていた
食料は入れられない
買ってきたものはすべて
腐るものは腐り
常温で保存できるものは包装のまま
べどんと積まれ置かれていた
妻は少しでも長く外へいると
一秒間に身長が三センチ縮む
透明な水を出して
氷のように溶けてしまうのだ

夫はいつの季節でも
毛糸の帽子マフラー手袋を付けて
寒い寒いと震えていた
どうしてか夫の吐く息はいつでも白いのだ
体内に雪が降り積もっているみたいに
夫は帰宅するとまず
ストーブをかんかんに焚いて
その前にしゃがんで手や尻を炙った
異様な光景と云えばそうであった
夫の顔は蒼白で
ストーブに当たった時だけは橙色である

二人が顔を合わせる時は殆ど無かった
セックスの時くらいだ
それすらも
ひっそりと静かに
すぐ終わった

そんな或る日
夫が何の気なしに冷蔵庫を開けると
妻はくの字に体を折って
体中に霜をつけて倒れていた
あわてた夫はうっかり妻を外へ出して
それから救急車を電話で呼んだ

受話器を置いて振り返ると
妻は
少しの水と白濁した液体になってしまっていて
跡形もなく溶けてしまっていて
真ん中に眼球が二つ
融けずにゆらゆら残っていた

夫はすこし躊躇ってから
静かに服を脱ぎ
全裸になってその場に倒れ

ドアが叩かれている
救急隊員が来たのであろう
力強い音であり
切迫した音である
家じゅうに鳴り響くドンドンドンは
応えるものがいないので
夫が最期の息をつくまで
鳴りっぱなしになっていた

救急隊員の話によると
冷蔵庫の前で
全裸の男が掌に眼球を握りしめ
かちかちに固まって死んでいたそうだ

きっとあの男は変質者ですね
にこりとも笑わずに隊員は
新聞の取材にそう答えた





スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。