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きおく

2008年09月22日 01:49



いじめられたり
仲間外れにされて
悲しいときには
必ず文房具店へ行った
陳列されている
機能的なボールペンや
流線形の絵筆に指先で触れる
このような小さいものを
手先を汚しながら作って
必死で生活をしている人たちがいる
ということは
わたしの心を少なからず慰めた
文房具屋の店主は
もう人間の形には見えないほどの
すさまじい年寄り方をしていたが
お釣りを間違えたことは一度もなかった

文房具屋の外へ出ると
きまって噂話をしている人たちがいて
あのじいさんはせいよくがつよいから
とか いつも同じことを言っていた
せいよくって何だろう
たべられるものかしら
噂話をしている人たちは
いつも黒い服を着て
帽子を目深にかむっているから
悪い鳥みたいに見える


昼間の半透明に明るい浴室で
空の浴槽にしゃがむ癖があった
裸になって三角に膝を折って
人知れず変態したり
小さな声でうたをうたったりした
何かが厭だと思っていて
でもそれが何かは分からなかった

長時間同じ姿勢でしゃがんでいると
体から夥しい水が流れ出してくる
その水は瓜のにおいをたてていて
尿とは違うようだった
膨らんで
もうすぐ咲くような予感がしていた
昨日床屋で刈り上げた襟足がちくちくして


甘いものを好んで食べ続けた為だろうか
家の庭へ出てしゃがんでいると
蟻にたかられることが多かった
わたしは知らぬ間に
夥しい糖分を分泌しているらしい
しちしち音を立てながら
体中の穴という穴から侵入してくる
規則ただしく列を成して
まるで鋼鉄で出来ているようだ
振り払っても逃げないし
閉じようと思っても意に反して
体は開いてゆくばかり
自分の体が隙間だらけだと知るときの
なんとなく張りつめたような気持ち
とか

お腹の中や食道や耳に入り込んだ蟻は
そのまま死んでしまうらしかった
痛さも苦しみも感じなかった
動くと死骸がぶつかりあって
小雨のような音を立てた

苛立たしくて
足もとの蟻を渾身の力で踏みつぶす
しゅくっ と音を立ててつぶれた

縁側で陽に当たりながら
祖母がしずかに眠っている




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