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2008年09月02日 20:15


電車の中に雨が降っている
どこからか漏れているというのではないらしい
天井全体から
灰色の雨粒が間断なく降ってくるのである
みんな透明のビニール傘を差して
何事もなかったかのように読書をしたり
ぼんやりと風景を見つめたりしている
傘を持っていないわたしは
びしょ濡れで手摺をつかんでいる
外は抜けるような青空で
空っぽの本棚みたいなかたちのビルと
そこから飛び立つ練習をしている人が見える


喫茶店の片隅の席で
女の子が手首を切っていた
どうしてそんなことをするのか聞いたら
生きるためにやっていると
生きていることを実感するためにやっていると
うつむいたままでそう答えた
女の子の手首は陶器のようになめらかで
切り裂かれた傷口から
夕焼け空が覗いている


帰宅途中の夜半
繁華街を通りかかった時
青白い 疲れたような顔の人たちが
黒々とした頭をゆらゆらさせて
行列を成しているのに行きあたった
よく見てみると並んでいる人々は
夜空色をした切符のような紙を持っている

行列の最後尾の人に
ねえこれはなんですか
と尋ねてみると
朝へ向かう行列だよ
と言われた

その切符はどこで買うのですか
君 持っていないの
これは買うものではなくて
いつの間にかポケットに入っているものなのだよ

ポケットを探ってみたが
くしゃくしゃに丸まったレシートしか出てこない
ふうん とさみしくなる
周囲には空疎なネオンがまたたくばかり
町にはだあれもいないみたいだ

空は何時の間にか
白々と明けかけて
朝へ向かう行列は
諦めたようにぞよぞよと動き始める


※月刊未詳24 9月号 投稿作
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