スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

街の女たち

2008年04月23日 03:01


街の女たちは
春になるといそいそと
裏山や土手や工場で
鉄屑やプラスティックなどを集めてくる
それで頑丈な巣を作るのだ
春になると とんてんかんかん
女たちが巣を組み立てる音が
そこらじゅうから響いてくる
そうしてだんだん街中は
錆びた釘や包丁が
そこら中から突き出ている
基地のような巣でいっぱいになる


やがて巣が出来上がると
女たちは自分の持っている中で
一番丈夫でいい着物を着て
いそいそと巣へ入っていく

巣にこもる直前の女たちの唇は
養分を蓄えて奇妙に真っ赤だ
それを子供が吸うのである
他にたべものはないのである


薄暗い巣の中で
女はたった一人きり
両手をせわしく震わせながら
子供を育てなくてはならない

女は子供に唇をあたえる
遠い異国の儀式のように
または花が散るように
子供と母親はひらりひらりと
とても静かに唇を交わす


ちなみに子供はみんな女だ
きっとそういう生態なのだ
間違って男が生まれたりすると
母親はその子を巣から捨てる
男の子供は強いので
地面に落ちる前に両腕を広げ
うっすら青くわらいながら
らひらひどこかへ飛んでゆく


やがて母親が死ぬ頃に
娘はやっと成人し
初めてはっきり眼を開ける
最初に見るのは死んだ母親
次に母親の着ている着物
娘は自然に手を伸ばし
その着物を奪いとる
何しろ丈夫な着物だから
めったなことでは破れない
そうして娘はそれを身につけ
たふたふ巣から這い出てくる

あたりには
同じように巣から出てきた
他の女たちでいっぱいだ
やがて女たちは示し合わせたように
同じ方へ向かって歩き出し
生まれ育った街を捨てる

そのときの女たちの顔は
当たり前のように無表情だ


残されたのは朽ち果てた巣と
唇のない死骸だけだった

音という音はなりをひそめ
色という色は褪せてゆく

まるでいたわるかのように
そよそよと風が吹き抜ける
誰もいないアスファルトの上を
黄色い風が吹き抜けてゆく

スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://michmichi777.blog31.fc2.com/tb.php/372-5d065d8b
    この記事へのトラックバック



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。