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外の気配

2007年12月08日 02:09

戸外から帰った君は
すっかり全身に外の気配をまとって
少しぼやけたような灰色に見える
大急ぎで外套を脱がせ
靴下を脱がせ
ぶらしで体じゅう払わないと
外の気配は落ちないから
落ちないまま定着して
よその男の人みたいな顔になってしまうから
君が帰ったらなるべくすぐに
ぶらしをかけるようにしている

それでも昨日は
ぶらしのかけかたが足りなかったようで
今朝見た君は少しだけ
よそよそしいちゃんとした
大人の男のようになっていた

こうやってどんどん別の
知らない男になってゆくのだろうか
誰でも

それでわたしは
外の気配が定着してしまわないうちに
君をぬるま湯を張った浴槽に入れて
押し洗いしてすすいで脱水して
物干し竿に干したのだ

君が素知らぬ顔をして
風に吹かれて乾いている間に
部屋中ほうきで掃きだしたら
今までに溜まっていた外の気配が
山のように集まった
外の気配のかたまりは
ひとつところに集まると
灰色の人間のような形になって
なんだか少しこわく見えたが

ちりとりですっかり取ってしまうと
あわれっぽく一声
きゅん
と鳴いた




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