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擬音マン

2007年10月21日 17:19


しいん
とした窓辺に立って
外を見ていた


わたしがまだ健康で
素粒子みたいに小さかった頃の話だ

ふと振り返ると
人のような犬のような男が立っていて
わたしの耳元で
しいん
と言った

それ以来
人のような犬のような男は
わたしの背後にぴったりついてきて
ぽっかり空いた穴を見ていれば
ぽっかり
と言ったし

すきっと晴れた青空を見上げたときは
すきっ
と半ば怒鳴るように言った

いま思えば
なかなか親切な人だったのだと思う

見ているものの状態を
的確に擬音で表現してくれたのだから

それから何年も
人のような犬のような男はわたしと一緒にいた
わたしは歳を重ねるごとに
色んなところを膨らませたり
膨らませすぎて爆発したり
冷めきって硬くなってしまったりと
色々な変化を遂げたのだが
男は最初に会ったときからずっと
犬みたいなままだった
歳をとらないみたいだった

ある日
思春期の真っ只中にいたわたしは
朝食の席で男がずっと
むしゃむしゃ
むしゃむしゃ
むしゃむしゃ
と言い続けていることに腹を立て

もういいですから
あっちへいってください

と言ってしまった

男はしばらく表情を変えずに立ち尽くしていたが
やがて小さな声で
しゅん
と呟くと
くるりと背を向け
とぼとぼ
と言いながらどこかへ行ってしまった

以来二度と見かけない

しかし今でも
すきっと晴れた空なんか見ていると
すきっ
と言ったあの男の
犬みたいな顔を思い出してしまう

今も元気でいるんだろうか
相変わらずどこかで誰かの為に
しょんぼり
とか
きいん
とか
言っていてくれたらいいのに

本当に
そうだったらいいのに

たった一人で立ち尽くしていると
ひゅるう
と高らかに叫びながら
風がわたしの足元を吹き抜けていった
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