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彼女

2007年08月23日 23:23



彼女は眼から鱗を落とす
こんたくとれんずよ
と言うけれど

それにしちゃあんまり落としすぎだ

何せ彼女の歩いたあとには
透明な鱗が無数に落ちて
月光にしゃりしゃり光るくらいだ

ぼくを振り返って微笑むとき
彼女は一瞬うみへびになる



彼女はドアーを隙間なく
ぴったり閉めるのが習慣だ

ドアーに限らず
あらゆるものを
見事な手際で密閉する

だってちゃんとしめないと
すきまから
小人がはいってくるじゃない

そう言いながら
彼女は閉める
あらゆるものを
まるで憎んでいるみたいに



彼女は
読書を邪魔されることを嫌う

あたしいま
文字とせっくすしてんだから
じゃましないでよ
なんて言う

そう言うときの彼女の眼は
確かに充血していて
呼吸も荒く

ぼくはそれ以上
何も出来ない



彼女は約束をしたがる
どんなささいなことに対しても
執拗に指切りを強要する

一度理由を尋ねたら
おまじないなの
と言った

たとえはぐれてしまっても
やくそくをおもいだして
またもどってこられるように
かならずもどってこられるように

彼女の指は細くてつめたい

まるで心臓が無いみたいだ

人が死ぬということを
まだ知らないのかもしれない



彼女は空を見上げる
自分がどこから来たのか
わからないみたいな顔をして
空を見上げてじっとしている

そして必ず
あたしどこからきたのかな
と呟く

ぼくはいつでも
知らない
と答える
君のことなんか知らない
と答える

そうすると彼女は笑う

そういうときにしか
彼女は笑わない



彼女は浴室で消えてしまった

昔から長風呂だったのだが
夜が明けても戻らなかったので
浴室のドアーを開けてみたら
浴槽にぬるま湯が
たぷたぷ揺れているばっかりで

彼女はどこにもいなくなってた

彼女がどこへ去ったのか
ぼくはいまでもよくわからない

彼女の残したエナメルの靴は
いまでもぼくんちの玄関で
おりこうに帰りを待っているというのに
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