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かえりみち

2007年06月18日 12:00


月は幸福なのだろうか
毎日毎日
あんなに太って
しかも冷たく笑っている



仕事を終えた日の夜は
なるべく歩いて帰るようにしている
疲れたわたしの足音は
ねぐらに向かうけものそのもののように
てちてち
と湿った音を立て
月をわずかにふるわせて消える



夏の夜の虫は
明るいほうへと導かれて飛ぶ
なんだか
天国へ行くときみたい
つぶやくと
道端に寝ていた野良犬が鼻で笑った

その声がすこし君に似ていたので
野良犬をそっと抱き寄せて
君にするみたいにした

野良犬は抵抗しなかったが
一度だけ大きなくしゃみをした
だから最後まではしてあげなかった



ため息をついたら
心が左にすこし傾いた
平衡を保つために
体を右に傾けて歩いたが
歩きにくいうえに効果は薄く
体を右に傾けるほどに
どんどん不安になっていった
どんどん不安になりながら
携帯電話を取り出してひらく

電池が切れていた

いよいよ駄目かもしれない

わたしは平衡を失って地面に倒れ
そのまま冷たくなるまで動けなかった

コンセントを探したけど
無かった



寄り道ばかりしているので
家に帰り着く頃には
たいてい朝方になっている
その上つむじから足の先端まで
月光や涙や鼻水で
くまなくぐっしょり濡れている
シャワーを浴びる手間が省けるので
大変たすかるのだが
しょっちゅう風邪をひくので困る

それからわたしは
ぐっしょり濡れたまま
体をちぢこめて寝床に入る
生まれ直そうとしているみたいに



月は幸福なのだろうか
毎日毎日あんなに太って
夜明けの空にぱちんとはじける



ねとねとした朝陽を浴びて
わたしは一度だけ眼を閉じる

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