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小魚の降った日

2007年04月19日 02:29


恋人に別れを告げる為
今朝は早起きをした

天気予報によると
午後から小魚が降ると云う
猫を持って行くべきだとは思ったが
生憎と僕は猫を飼っていないし
たった一本持っていた傘も
なにかの拍子に無くしてしまった
仕方ないので
フライパンを持って
出かけることにした
なにかの役には立つだろう

議論は三時間にも及び
その間僕らは二人とも
めがねをかけていた
相手がよく見えるように
それと
傷つけられても眼が見えなくならないように

夕暮れにようやく
議論は終結した

疲れきった僕らは
百回くらいさよならを言い合い
それでもなんとなく
別れがたくて
小魚の降る町を
駅まで一緒に歩くことにした
空気は全体的になまぐさかったが
耐え難いほどではない

僕はフライパンを頭に被り
元恋人は洗面器を被っていた
遠くから見た僕らはきっと
間抜けな兵隊みたいに見えただろう

町はすっかり銀色に染まった
靴には魚の鱗が当たり
しきりにかしゃかしゃ鳴っている

駅に近くなったところで
元恋人が
急にしくしく泣き始めた
しくしくしくしく
泣くごとに
背骨がぎゅうぎゅう曲がってゆく

そういえば元恋人は
牛乳を飲まない女だった
もしかしたら骨が
千歳飴のようにやわらかいのかも知れない

僕は慌ててフライパンで
降ってくる小魚を受け止めて

君はカルシウムを摂らないから
そんなに脆弱なのだよ
とかなんとか
おろおろ言い
ひとつかみぶんを半ば無理矢理
元恋人の口に押し込んだ

元恋人は
くんにゃりと背骨を曲げたまま
それでもしくしくと小魚を食べた

不思議なことに
小魚を食べている元恋人は
だんだん猫に似てゆくようだ

その旨申し伝えると
元恋人は泣き笑いしながら
だってあたしいま猫と同じくらい飢えてるもの
と答えて
銀色のげっぷをちいさく漏らした

駅に着く頃にはもう
元恋人は
完全に猫になってしまって
改札を抜ける僕へ向かい
百一回目のさよならの代わりだろうか
首を傾げてにゃあと鳴いた
中々かわいらしい三毛猫だった

別れるんじゃなかったかな

一度だけ後悔した
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