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自殺に失敗した日の話

2007年04月15日 18:56


あるうららかな春の日にふと
生きることに飽きてしまった

これはいけないと思ったので
春の新色のくちべにを買ってみたり
大富豪になった自分を想像してみたり
夢はいつかきっと叶うと
歌いながら踊ってみたり
色々努力はしてみたが
どうも未来というものに
希望がもてなくなってしまった

それで自殺をしてみようかなと思った
自殺をしてみようかな
と口に出してみたら
不覚にも少しわくわくした
遠足の日の朝みたいに

最初は包丁を使おうと思った
それで台所へ行って
包丁を抜き出して首に当てたが
いつまで立っても血が出ない
あれえと思ったら
それはおたまだった
すると母親がやって来て
仕事もしないで何あそんでんの
とわたしを叱った
すいません
ごめんなさい
とすごすご退散するしかなかった
だから包丁は諦めた

次は睡眠薬を使おうと思った
しかしうちの救急箱には
セーロガンとワカマツくらいしか無い
どうしたものかと思いながら
とりあえず薬局へ出向き
店主に
致死量の睡眠薬ください
と頼んでみた
店主は
致死量の睡眠薬はあげられないが
代わりにこれをあげよう
と言って
チェルシーを一箱くれた
帰り道で立ち止まって
一粒口に含んでみたら
ヨーグルト味のチェルシーで
わたしはヨーグルト味のチェルシーが一番好きで
ほのぼのとした気持ちになった
だから睡眠薬も諦めた

あとは首を吊るか入水くらいしか
わたしには思い付かなかったが
日没が迫ってきていたし
ちょっと疲れてもいたので
思案した揚げ句に
どちらかと云えば楽そうな
入水をすることに決めた

入水と云えば川か湖か海
だが
生憎とここいらには沼しかない
沼ではちょっと気分が出ないが
はるばる玉川上水まで行くのも面倒だし
沼で我慢することにした

水は青緑色で生臭く
死んだ魚なんて浮いていたが
贅沢は言っていられない
よいしょ
と欄干を越えて
それっ
と飛び込んだ
どぷん
と気持ち悪い音がした

沼の中は視界が悪く
しかもごみでいっぱいだった
嫌だなあ
と思いながらしばらく沈んでいって
底のなまぬるい泥にぺたっと着地した途端
急に上へ引き上げられた

何が何やら解らぬうちに
わたしは岸辺に投げ出され
びちびちと跳ね回っていた
わたしを引き上げたのは
釣り人だった
釣り人は眼を丸くして
あんた何やってんだ
と言った

わたしは
さて
何をやってるんでしょうね
と苦笑し
ポケットからチェルシーを出して
釣り人に一粒進呈した
釣り人は合点がいかぬ顔をして
去ってゆくわたしを見つめていた

びしょびしょになって帰宅したら
案の定
散々叱られた

翌朝から
ひどい風邪で寝込んだわたしは
自殺もなかなか難しいし
面倒なものだなあ
とひとりごちながら
チェルシーを舐め舐め
とろとろ眠った

なんで自殺なんてしようとしたのか
さっぱり思い出せなくなってた
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