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ばらばら恐怖症の男

2007年03月24日 18:17

ばらばら恐怖症の男がいた
ばらばら恐怖症の男は
ばらばらになっているものが怖くて仕方が無い
だからポッケットにはいつも
クリップや糊やホッチキスやねじなど
およそものをまとめる為の道具を
一揃いしのばせていた

ばらばら恐怖症の男の部屋は
常にきちんと整頓されていた
著者名別に並べられた本棚
完璧に対となった靴下の曲線
乾物類は口を封じられ
ネックタイは尖ったままうなだれ
小物類は透明なケースに閉じ込められていた
その静謐な空間
そこはばらばら恐怖症の男の
理想の楽園であった

ある日ばらばら恐怖症の男は
道端で出会った女に恋をした
女は電信柱に寄りかかって
見るとも無く星を見つめており
だからその瞳の中には
星がまとめられて入っていた
ばらばら恐怖症の男は
星が大嫌いだったのだけれども
不思議と女の瞳に映った星は
きれいだと思った
その夜
ばらばら恐怖症の男は
女を家に連れ帰って
コルクボードに留めた
女は何も言わなかった
そのまま一年が過ぎた

ばらばら恐怖症の男は
今朝も泣きそうな顔をしている
子供が家を散らかすからだ
透明ケースをひっくり返し
海苔をびりびりとちぎっては投げ
ネックタイを握り締めては引きずりおろす
ばらばら恐怖症の男は
ねじや糊や紐などを駆使して
子供の後始末に追われながらふと
コルクボードに留まったままの女を省みた

女は子供を産んでちょうど二月目に
ものも言わずに干からびてしまった
だからコルクボードに留まっているのは
女ではなく
正確に言えば
女の抜け殻なのである
ただひとつ不思議なのは
干からびたあとも
女の瞳はつやつやと輝き
部屋の中でも星を映し出すことだ

ばらばら恐怖症の男は
その瞳の美しさにため息をついた
そのとき子供が女の抜け殻を
コルクボードからひっぺがして笑った
ばらばら恐怖症の男はつられて笑いながら
もう一度
今度は前よりもっと強固に
女の抜け殻を留めなおした
それがばらばら恐怖症の男の愛だった

子供の名前はクリップという
母親に似てものを言わないが
最近やっと糊の使い方を覚えた
ばらばら恐怖症の男は
クリップと手をつなぎ
女の抜け殻に接吻して家を出た

幼稚園バスが来る時間だった

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