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深夜、家出に似た事を

2007年01月29日 13:27

雨が降っていた
彼方には赤信号が幾つも滲んで
まるで夜空全体が
こちらを見ている
巨大なうさぎみたいだった

わたしは
握っていた掌を少しひらいた
家を出る前に聞いていた音楽の
一小節がぽろりとこぼれて
それっきり
他には何も出てこなかった
もっと何かいいものを持っていたような
気がするのだけれども
いいにおいのするきれいな何かを
しっかりと握り締めてきたような気が
するのだけれども

しばらく歩くと
路傍に
打ち捨てられている廃車を見つけた
きちんと白線に沿って停まり
そのままの姿で朽ち果てた廃車は
夏の終わりの
かぶとむしみたいな形をしていた

鍵がかかっていなかったので
そっと潜り込んで
運転席に座ってみると
まだ温かい
自分がさっきまでここに
座っていたみたいだ
俄かにこわくなる

このまま勝手に巻き戻されて
気づいたらまた
握っていた掌を開くところから
始まるんじゃないかと

わたしはドアに鍵を掛けて
シートベルトを締める
その行為に意味は無かった
せいぜい自分を閉じ込めて
その場に静止させるだけの行為だった
その場に静止することと
その場から逃げないことは
イコールではない

運転席から見えるのは道路だけだ
車を運転する人は
こんな淋しい景色を見ながら
停まったり動いたり曲がったりしていると思うと
なんだか可哀想になる
かじかんだ人差し指で
適当な釦を押してみると
硬質な音がして
カセット・テープが飛び出してきた
抜き取って眺めてみる
両方のリールに
同じくらいの分量のテープが巻きついていた
B面の途中で止めたみたいだった

雨がやんだ

鍵を開けて車から降りると
何だか何キロも走った後のような気分で

わたしはカセット・テープを握り締める
彼方の信号は青に変わっていた
少し歩いて深呼吸をすると
ようやく目的を思い出した

わたしはスーパー・マーケットへ
りんごを買いにゆく途中だった

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