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熱帯魚

2006年12月12日 14:55

路傍に捨てられた
熱帯魚用水槽の中に
一人の男が住み着いた
と云う噂を聞いた

見に行ってみたらそれは
昔交際していた男で

背骨も骨盤も上手に曲げて
きちきちにおさまっている

右側面に顔があったので
叩いてみると
眼を開いて
久しぶり
とか言った
山椒魚みたいだ

なにがあったかは知らないが
そこは狭いだろう
と言うと
底に敷かれた砂利をぱらぱら落としながら
立ち上がった

骨が気泡を吐き出す音が聞こえる

男は
なまぐさい体臭を振りまきながら
君も一緒に暮らそうよ
とへらへら笑いながら
わたしを抱きしめた
指先から鱗のようなものが
落ちて
ああ

一瞬だけ
一緒に暮らすのもいいかな
と思った
隙間なく体をZ状に折り畳み
男と限りなく密着し
ただ外を見つめる
時々空を見上げる
そんな暮らし方も
それなりに幸福かな


しかし済んでのところで
思い止まったのは
男を愛していないからだった

わたしは
御免被る
と体を離し
そのまま
水槽より少し大きめの
ワンルームアパートに帰った
なんだか皮膚がぬるぬるしていたか
構わず
体をS状に折り畳んで眠った

数日後
トラックに突っ込まれ
水槽もろとも男が大破した
と云うニュースを聞いた

現場は
硝子片が散乱し
魚を捌いたあとのまな板みたいで

わたしは
持参した水草を供え
しゃがんで空を見つめる
ビルに邪魔されて
空なんか一ミリも見えなかったけれど
構わず凝視した
何だか悔しくて

立ち去るとき
空中に熱帯魚のまぼろしが
見えたような
見えなかったような

背後で
水草が揺れる
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