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泥棒ハムニ

2006年09月30日 08:27

・兄の話

ハムニは泥棒だった
成りたくて成った訳ではなかったらしいが
まるで天職みたいに
何だって堂々と盗んでみせた
ハムニの部屋には何でもあった
新品のラジオ
ポスター
高い服
文学全集
それら全てを
ハムニが盗んだのか如何かは知らないが

或冬の寒い晩だった
ハムニが事故に遭ったという連絡があった
車に轢かれて
右手首が千切れてしまったらしい
右手首は余程勢いよく飛んだのか
何処にも見つからなかった
その右手に
ハムニは
何か大切なものを握っていたらしく
泣きそうな顔をしていた
ハムニは其の儘入院した
やがて病院から脱走して
以後ハムニを見た人は誰も居ない


・恋人の話

ハムニさんと出会ったのは路上でした
ハムニさんには右手が無くて
その時は乞食をしていました
わたしは
まだ若いハムニさんが気の毒になって
そっとアパートに連れて来て
お風呂を貸したのです
交際はその時からです
身の上話ですか?
家族は兄しか居ない
ということしか聞いていません
それ以外のことは何も知りません
ハムニさんはわたしのアパートに
三ヶ月間居ました
結構幸福そうにしていたのですが
初夏のよく晴れた昼間に
書きおきを残して何処かへ行ってしまいました
書きおきはレシートの裏にペンでたった一行
探し物があるからもう行くよ
と書かれていました

・老人の話

私はこの地域の清掃業をしてます
ハムニという若者のことを
知りたいんだそうですね
心当たりはありますが
一週間前の朝
いつものように
清掃をしに来ましたら
あの街路樹の下
あそこにこうして
脚を投げ出すようにして
若者が座っていましたよ
見ない顔だなと思ったので
よく覚えています
右手ですか
ポケットに入れていたので
あるか無いかまでは
見えなかったです
何か探してる風でしたね

・詩人の話

ハムニ君のことですか
どうしてまた
ハムニ君は確かに
わたしのところに
詩の勉強をしに来ていましたが
まるきし駄目だったんですよ
失望の詩とか
身上を嘆く詩とか
そんなのしか書けないみたいで
それでも一ヶ月教えたら
様にはなりましたよ
え いや残ってません
ハムニ君が全部持っていってしまいました
何処へ?
さあ
何処へ行くと行っていたか
常々
遠いところへ行きたいとは
言っていましたけど

・こどもの話

ハムニお兄ちゃんが
居なくなったの
あたし知ってるよ
ハムニお兄ちゃんは
お菓子をくれたよ
いつも甘いお菓子をくれたよ
あたしがおかあさんがいないの
かわいそだって
どうして居なくなっちゃったの
だってハムニお兄ちゃん
あたしに
おもちゃの指輪くれるって言ってたのに
まだもらってないよ
あたしたち将来けっこんするんだよ
だって
ゆびきりげんまん
したもん

あ ハムニお兄ちゃん
きっとかくれんぼしてるんじゃない
誰にも見つからないところに居るんだよ
神様のところとかさ
おてがみ?
きてないよ
くるわけないじゃん
ハムニお兄ちゃん
かくれんぼしてるんだから

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コメント

  1. のの | URL | D6osuj36

    おとなのための童話って感じで、ひじょーに好きです。グラッチェ。

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