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或る女学生のツイート

2011年07月07日 20:03

永遠は美術室の石膏像のくちのなかにある
こじあける、
放課後、チャイムが鳴ってる

月曜日
数式という巣のなかで眠っていたやわらかな解を
残酷にシャーペンで突き回しては繰り返し追い出す遊びをした
その痕跡をとどめて黒板はいまだに残響のように濁っている
イコールはいつまでも平行に均整を保ち続け
すべすべと優しかった、さよならのように
わたしたちは無力で
机と椅子は誂えたように体にぴったりと沿っていた、棺桶、まるで棺桶みたいに、

火曜日
水兵リーベが海原に漕ぎだすうつくしくごく短い物語を聞きながら
頬杖をついて窓の外を見ていた、退屈な幻の王国にいた、
ときどきこっそりと教科書の偉人を傷つけるくらいしかすることがなかった
(わたしたちは無意識のうちにしばしばちり紙を使った)
(授業が終わると夥しい枚数の湿ったちり紙がお菓子の屑とともにごみ箱へ棄てられ、そのうち幾つかはあとで芽を出した)
(何かへの抵抗あるいは屈服の印みたいに)(でも本当はきっとそうたいした意味はなかった)

水曜日
授業中よりも休み時間の方が考えることが多かった、チャイムと同時にわたしたちは頭を膨らましてあらゆることを考えた、仲間外れにされない方法、人目を惹く方法、効果的に不健康になれてしかも跡の残らない方法、、、
考えるのに疲れて歴史の教科書を開く、もう重大なことや残酷な事件は終わってしまっているみたいに思えた、いい人も悪い人もみんな殺されてしまって、わたしたちだけが陽光の白々とした平坦な世界に取り残されていた、もう何も起こりっこないね、過去にすべてが起こり切ってしまったのだから
そんな気がしていた、
(わたしたちはしばしばお互いを何かに例えあった)
(なんでもよかった、歌手でも動物でも家具でも、少なくとも何かに似ているうちは生きている意味はあった、ストーブの前で、廊下で、更衣室で、校庭で、)
(わたしたちは笑いながら生きている意味を易々と相手に与えた)
誰もいない女子トイレに摘出されたばかりの温かい心臓が落ちている、気づかないふりをして手を洗った

木曜日
わたしたちは似通っている、男も女も似通いすぎてまるで同一人物だ、ひとりぼっちみたいだ、発達しきらない骨を制服に包み込んで、ポケットには(望みもしないのに!)xだのyだの歴史の年号のごろ合わせだの、入り組んだごちゃごちゃしたものばかりが入っていて、実用的なものなんて何一つ持ってない自殺すらできやしない、
三階の音楽室から発声練習が聞こえる、それは台所の隅の闇でひそやかに伸びてゆく羊歯植物みたい、遠慮がちにひよひよと広がってゆく
生物室へ移動するくらすめいとの群れの最後尾に並んだ、彼らに埋もれてしまったらきっとわたしは最早わたしを取り出すことができない、形を保っているだけで精いっぱいなのだ

金曜日
将来はなにをしたいの、なにになりたいのと古文の教師に問われる、彼女の口臭は古い紙のにおいがする、
なにもしたくなくなににもなりたくない場合はどうすればいいんですか、選択肢は用意されていない
明日ねって友達が帰ってく、明日また会える保障なんてどこにもないのにね

((どれくらいのさよならを重ねればわたしは透明になれるんだろう))

俄雨の気配、塩素の匂い、土手を奔ってゆく一匹の犬、派手な色のマニキュアを塗るのは毒を持たないこの体に毒があると錯覚させるためだ、
(すり減ってゆく言葉たちはいつだって抽象的だね)
(愛 恋 未来 希望 夢)
きれいに包装された箱の中身は空っぽだってことぐらい、あかんぼだってしってる

土曜日
永遠は美術室の石膏像のくちのなかにある
忍び込んだ美術室の静寂はひたりひたりと足元に押し寄せて
あたしのくるぶしを這い上がってくる
その冷たさに耐えきれなくなって
無理矢理に石膏の口をこじ開けた
(破砕音)

日曜日
(永遠はえいえんにやってこない)
(あたしは今も真っ白い破片の中に立ち尽くして)
(雨の降り出すのをじっと待っているというのに)
(今も)
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二十四時間という真っ黒な獣

2011年07月06日 20:07

二十四本の歯を持った獣と並んで
天井を視ている
獣はいびつな丸いかたちをしていて
からだの殆どは口だから
まるでわたしの隣に巨大な穴が
ぽかりとあいているようである

獣の歯は一時間に一本ずつ抜けてゆき
零時に一斉に生え変わる
ときどき苦しがるので
口のなかに手を入れて抜けきれない歯を抜いてやる
するとごうごうと嵐のように笑い
そのお礼にほんの少し
わたしの身体を食べてくれるのだ

時計が午後三時を打ち
獣は濡れた歯をまた一本吐き出した
わたしはそれを拾い上げ弄ぶ
弄んでいるうちに崩れて消えてしまう

死にたいね
と言い間違えないように気をつけながら
つまらないね
と獣に言ってみる
獣の解する言葉は
死にたい
のたった一言だ
そうわたしが口に出せば獣は容易く
わたしをその真っ黒な身の内へ飲み込んで
容易く殺してしまうだろう
それは奇妙に深い安堵をわたしに与える
安堵しながらわたしは束の間ねむる

開け放った窓から温風が入ってきて
部屋の中を歩き回っている気配
眼を開けると
温風の履いている白いスカートのすそが見える
もう外はよほど暗く
もはや何を識別するのも不可能である
獣がまた一本
歯を吐き出す音
カチリ



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