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真夏の陽はレモンのにおいがする

2010年08月08日 08:11


あまり気温が高いものだから
真昼の空は少し溶けて
ときたま
ぽとぽと水色の絵の具が垂れてくる
塗りの剥げた部分は真っ白く
穴があいてるみたいに見える
しばらく時間が経つと
その部分はそういう仕事をする人たちの手で
いつの間にか元通りに補修されているけれど
あまり頻繁に溶け出すので
水色の絵具が足りなくなるのだろうか
よく見ると
微妙に違う色で塗りなおされていたりする


庭に生えている雑草を刈ると
切り口から勢いよく
鮮烈な色の血が噴き出してくるから
刈りおえる頃には袖のほうまで
血まみれになってしまう
残酷なことをわざとするのは
ときどき
とてもいい気持ちだから
少し薄ら笑いを浮かべながら
ざくざく
わたしは草を刈り続ける


夕暮れ
半透明のくらげが
空いっぱいに浮かんでいる
その光景を見ると
わたしは今まさに
夏のさなかにいるのだな
と強烈に実感する
強烈に実感しながら
毒のある触手にさわらないように
注意深く歩いた

運悪く刺されてしまったひとたちが
ひくひくと痙攣しながら
路上のそこここに倒れている


一瞬
風が強く吹いたとき
死にたくない
と聞こえた
路傍の草から
鳴いている蝉から
転がっているちっぽけな石から
ありとあらゆるところから

この季節はどんなものだって
死にたくない
と主張してきて
ちょっと外へ出ただけでも
そうした思いがそこらじゅうに
むんむんと色濃く漂っている
生まれてきてから今までに
そこまで強く
死にたくない
と思ったことのないわたしなどは
なんとなく生き難い
途方に暮れてから
息を吸い込んでみる
埃に混じって
かすかにレモンのにおいがした



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午前4時

2010年08月02日 16:56

真っ白い己の腿に鋏でも突き立ててみたいような夜です

自分より哀れで小さい生き物をただ滅茶苦茶に愛してみたい

キッチンで体育座りする夜は冷蔵庫だけがともだちみたい

真夜中の横断歩道の真ん中に画鋲がひとつ落ちてた、罠かな?

唐突に不安になって左手の生命線をじっと見つめる

眠れない夜にはやたらと画数の多い漢字を練習してみる

ひたすらにクロスワードを埋めてゆく君のことなど忘れた振りして

ベランダに落ちてきた星を拾い上げボンドで空へ留め直す夜

嘘みたいな薔薇色の夜明け眺めてる全部やり直せそうな気がして





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