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私は、此処に産まれて生きていてそして最期は何処へ行くのか

2009年06月29日 05:36

☆自然編


へたへたとあるいていますさんだるで
まなつ、みどりのくうき、じゃすみん


がいとうのしたでみどりがさわぐよい
やはりおまえも、よるはこわいか


なんごくのごくらくちょうよきみたちは
こんなよるにはなにをうたうの?


ろじょうにてらっぱのおとをきいたので
ふりかえったらゆりがさいてた


ほしぞらに ぎんがてつどう はしるよる
ちら、とだれかがよんだきがした


☆自分編



わたくしのあたまのおくにかくれてる、すぱなをもったきょうぼうなひと


ねえきみをたべちゃいたいよあたまからほねまでぜんぶのこさずぜんぶ


かみのけがはらりはらりとぬけおちる、ああわたくしも老いている、いま


えんぴつでなまえじゅうしょとたんじょうびかきかべにはるわすれないため


わたくしは、ここでうまれていきていて、そしてさいごはどこへゆくのか




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桜桃が実る頃の日記

2009年06月26日 05:25


6月×日
すれ違う女子の肌の露出具合に夏を感じる。
中でも白く細く長く、全く以ってすばらしい脚をした女子に暫時つきまとってみる。通報されそうになりやめる。
そのあとふらふら歩いていたら、さっきのすばらしい脚の子がぺとんと転んでいるのが見えた。
あ、と思って眺めていると、すばらしい脚の子は、どこからかわらわら駆け寄って来た男子たちに、脚から何から全部持っていかれてあっという間になくなってしまった。

あとにはその子がつけていた、蝶の形の髪留めが落ちていて、風に吹かれてかろかろ云っている。

男子たちはあれをどうするのだろう。夢中になって食べるのかも知れない。あれはたしかにすばらしい脚で、お菓子みたいにおいしそうだったものなあ。


6月〇日
サンショウウオから電話がかかってきた。
電話が鳴ったので、受話器をとって耳に当てたら、
わたくし、サンショウウオと申します。
と言ったのだ。本物かどうかはわからないけれど、とてもいい声をしていた。
何の御用でしょうかと尋ねると、どうかわたくしの棲みかに来てほしいのです。あなたはまったく魅力的な雌の顔をしております。と言う。
はあ、わたくしは人間でありますが、と言うと、ええええ、まあそうでしょうとも、大概はね、と言う。わたくしは泳げませんので、水の中には行かれませんと言うと、私は陸の上にあがることもできます。わずかな時間ですが。と、どうも諦める様子がない。
とにかくわたくしは異種と交際するつもりはありませんので、ときっぱりと断わりの口上を言って電話を切った。
以来、サンショウウオからは、三日に一度の頻度で電話がかかってくる。わたしに交際する気が全然ないのを知ってか、今日はいいお天気で大変結構でございました、とか、池の水は澄んでおります、とか、当たり障りのない世間話を、いい声で少し喋って、電話を切るのである。
国語辞書で調べたら、サンショウウオは一般には百年生きると云われているらしい。困った。もしそうだとしたら、死ぬまで見守られてしまう。
電話が鳴る。どきんとする。
この頃では、サンショウウオの棲みかに行って、あのぬめりとした肌を触ってみたいような気もするのである。
全く以て、世知にたけているなあ。さすがは両生類である。暑い日だ。空を見上げる。池の水は澄んでいるらしい。


6月△日
すっかり熟したトマトやはち切れそうに水を含んだ胡瓜やつぶつぶと骨の色をした玉蜀黍など、この頃の野菜類はむっちりとした人の手足のような形をしている。
気持ちの凶悪な夜などに、台所に立ち、すこんすこんと切り刻むと、切り口から透明な液がたくさんにじみだしてきて、包丁もまないたも指も、みんな濡れてしまう。まるでひどいことをしているような気持ちになる。ふ、ふ、と息を荒げながら続ける。気持ちが穏やかになるまで続ける。
そのあと、切り刻んだ野菜をぶきぶきと噛み砕く。青臭いにおいがくちいっぱいに拡がる。塩もドレッシングもかけずに、これはあのひと、これはあのひと、と呟きながら、そのまま全部食べてしまう。
台所の薄暗い灯りの中で、歯がいつもよりとがったわたしは、獣の顔をしているに違いない。
どうせならそのまま獣になれたらどんなにか楽だろう。溜息をつく。
月が蒼い。夜明けはまだ遠いらしい。


月刊 未詳24 2009年7月第28号 投稿

死にたがる君の頭上に夏きたる

2009年06月26日 05:06


死にたがる君の頭上に夏きたる


青葉闇アオバヤミふとみずからを見失う


向日葵のぶきりぶきりと咲き誇る


物憂げにひらいちゃってる百合のシベ


果物が人の顔して熟れている


体液のぬるさで浸みる夏の雨


発条式バネシキハネふるわせて夏の蝶


何処イズコへとかえるつもりか灯取虫ヒトリムシ



※青葉闇―木が茂ってその木陰が暗いこと。 木立闇。木の下闇。

※灯取虫―夏の夜、灯火や誘蛾灯に集まってくる蛾をはじめとした虫のこと。火取虫。火入虫。灯虫。火虫。燈蛾。火蛾。火取蛾。燭蛾。夜盗蛾。夜蛾。


夫の浮気

2009年06月19日 08:35


夜九時
知らない香水のにおいをさせて
夫が帰宅した
なんだか疲弊している様子である
立ったままコップ一杯の水道水を飲みほして
すぐさま寝床へ行って横になってしまった
脱ぎ捨てられたシャツをたたんでいるときに
汚れが付着しているのに気づいた
よく見るとそれは汚れではなく
小さな楕円形の卵である
何匹か死んでもいいように
大量にうみつけてあった
なんとなく女の仕業だなと思う
連なった卵のうちのひとつを
爪で削ぎ取ると潰れて
嫌な色の汁が
執着しているみたいに染みを作った


昼間
夫が出勤したあとに部屋の掃除をしていると
夫の使っている部屋から
虫の脚がたくさん出てきた
ちりとりで集めて灰皿の中で燃やした
あの人は何に騙されているのだろう
そういえば最近夫からのメールには
いやに句読点が多くて
文章全体が虫に喰われたように見えるのである
考えすぎかもしれない
と思いながら
殺虫剤を部屋中に散布した


夫が蜘蛛に抱かれている夢を見て
はっと目を覚ました
手を伸ばすと夫の体はそこにあるのだが
いやにねばねばする
電灯をつけると
夫の体全体が繭につつまれているのだった
そのなかで幸せそうに眠っているのだった
ああ夫は守られている
わたしが守るよりも完璧に


その翌日から夫は家に帰らなくなってしまった
電話をすると出るのだが
話している向こう側から
かさかさと
無数の虫の歩きまわる音が聞こえるのである
だんだん人間の言葉も忘れているようで
問いかけると意味のない音を発したり
奇声をあげたりする
子供ができた
と夫は言う
だからもう帰れない

うん
とだけ言って電話を切った
そのあと
愛していたのにな
と思ってちょっと泣いた


それから
一人でいることにも慣れた
ある雨の降る晩
乱暴にドアーが開けられて
唐突に夫が帰ってきた
無精ひげを生やして
憔悴しきった顔で
玄関口に座った夫は
けっこう好きだったんだけど
やっぱりあれはただの虫だったよ
おれは人間だし
あれは虫だし
なんかもうどうしようもなかった
とつぶやいた
そうか
と答えて黙った
静かに雨が降りしきっている

でもこのまま許すのも癪なので
こんどはわたしが
蝶々とでも浮気をしてやろうと思っている

2009年06月16日 01:04


陽の差し込む部屋で折り紙を折る
わたしは奴さんしか折れないから
床は色とりどりの奴さんでいっぱいだ
それらは
開いた窓の隙間から吹き込んでくる風で
生きているようにかさかさと
音を立てる

教育おりがみと書かれた折り紙の袋の表には
ヴィヴィッドでいびつな動物が
裏には
鶴の折り方が載っているのだが
どんなにひそやかに折っても
途中でくしゃりと潰れて
首になる筈のところや羽になる筈のところが
不格好に飛び出して
ただの死骸になってしまう

たぶんわたしは
何かを作るというよりかは
壊すために生まれてきたんだろうとおもう
指は細くて不格好な形をしていて
何かを取る時よりも捨てる時の方が素早く動く

その指で折れるのは一番単純な奴さんだけなのだ
折り紙のきれいな色を選り出して
角を合わせて縦横に折る
ふくろになったところを開く
たしか足の折り方も習ったはずなのだが
忘れてしまったから
わたしの折る奴さんはどこにも行けない形をして
ただだまって
友達みたいに横たわっている


ナイフで切った傷よりも
紙で切る傷の方が深いらしい

わたしは不器用だったので
学校で使うノートでよく指を切った
2Bの鉛筆で一生懸命書いては
くしくしと消した罫線の
ぼやけた白は暮れてゆく空によく似ている
せんせいは白墨で黒板いっぱいにたくさんの文字を書くから
慌てて写して頁をめくるときにすっと切れる

と声が漏れるとせんせいがやって来て
木の物差しでたたかれるから
くちびるを噛んで我慢する

学校で覚えて今も役立っているのは
我慢することだけだ
放課後の階段にて
背後から突き落とされたあのときを除き
わたしは一度も泣かなかった

精緻な直線ですっと切り込まれた傷から
わたしのうすぴんく色の中身が露出している
傷ついていることを誰にも知られないように
すばやく机の中に隠した


棺という言葉を知ったのは新聞でだった
葬式や惨殺や遺棄なんかも同様で

そのときわたしは
新聞の切り抜きをする宿題をやっていたのだった
子供用の鋏は先が丸いから
裁ち鋏のように
素早くまっすぐに切ることができないのが不満だ
裁ち鋏は大人のいるところでは使わせてもらえなかったから
留守番をしているときなどに母親の裁縫箱から持ち出して
こっそり部屋の隅っこの空気をしょきしょき切った
早く大人になりたいと願いながら

息を止めて新聞紙に鋏を入れる
案外容易く切れるのが面白くて
新聞紙をこまかな断片にするまで止められなかった
幾つもの切り抜きは
まっすぐ切ったつもりなのに
ふよふよと縁が曲がっている
畳の上に散らばった灰色の断片は
そこだけ陰鬱な景色が見える窓みたいだった
太い明朝体の文字は真っ黒くて
檻のような形の
難しい漢字ばかりが並んでいる

なんだか世界が生きにくい場所だということを
おぼろげながら理解できたような気がした

オートメイション

2009年06月12日 05:02


エスカレーターに乗れば段を踏み外す
券売機のタッチ・パネルはいくら押しても反応しない
施錠をすれば鍵を無くす
自動ドアには挟まれる
わたしは
文明というものに適応するように
生まれつかなかったのだと思う

泣き面で夕暮れまで
券売機の前でうらうらしているわたしに
たまりかねたように駅員さんがやってきて
代わりに切符を買ってくれた

かっちりとした駅員さんは
たしかにひどく文明的で
てきぱきとうごくたびその体からは
歯車の噛み合う音が聞こえてくるようであった


いつもはあまり人の通らぬ表通りから
らうらうと子供の歌う声と
ざわざわと人の行き交う音がする

珍しい
祭でもあるのだろうか

うきうきしながら玄関を出ると
しかしそこには誰もいなかった

そのかわり無数のラジカセが置いてあり
そこから音がしているのだった
何故か無性に腹が立ち
ラジカセを消して回ったのだが
最後のひとつのラジカセから
夫の声が流れていて
それだけはどうしても消せなかった
真昼の路上に
愛している愛していると言う夫の声が響く

みんなどこへ行ってしまったのだろう
わたしだけ置き去りにして

それとも最初からここには
誰も居なかったのだろうか

愛している愛している愛している
無性にさびしくなって立ち尽くす
愛している愛している愛している
ぽつりとわたしの影だけが長い


ともだちと並んで歩いているとき
彼女の背中から
何かが飛び出しているのに気づいた

そうっと近づいてよく見てみると
∞の形のゼンマイであった
触れてみると金属のつめたさを感じる
ともだちがしゃべったり笑ったりするたび
それはききりと回るのだ
そのさまは正確で緻密で冷静で
だからこそとてもおそろしかった
わたしは
彼女を置き去りにして
後も振り返らずにその場を逃げた
空が信じられないほど青かった
あの夏の日

それからわたしはすぐに引っ越してしまい
ともだちと会うこともなくなったのだが
機会があって再びその町を訪れたとき
あのとき逃げたあの場所に
錆びた塊があるのを見つけた
形は何がなんだかわからないくらい崩れて
表面には蔦が這っていたが
あのともだちだとすぐにわかった
風化していて見えにくかったが
顔は笑ったままらしかった

ぜんまいが切れたあと
まわしてくれる人がいなかったのだろうか
せめて静かなところへ
移してやろうとも思ったのだが
重くて引きずってさえいけなかった

だからあの塊は
まだあそこにあるはずである

あれ以来わたしは
二度とともだちができなかったから
あれはわたしの生涯で
たった一人のともだちである


夏のこと

2009年06月05日 03:23


此の頃
朝起きると見憶えのない傷が
いろいろな場所についているようになった
オキシドールで消毒をしながら
夏が来るのだなと思う
春の頃より鋭さを増した風は
銀色に光りながら硬質な音を立てて
わたしをはじめさまざまなものを
切り開きながら過ぎ去ってゆく


ぼんやりと道を歩いていると
前を歩いている人が突然咳き込んで
金魚を一匹するりと吐いた
その人はそのまま行ってしまったのだが
金魚は生きているらしく
しばらくぴちぴちと跳ねていた
かわいそうになってハンカチでくるみ
持って帰って飼ってやることにしたのだが
帰宅してからハンカチを開いても
そこには何もくるまっていなかった
ただ赤い染みがついているだけで

そのときの染みは何度洗っても
落ちることはなかった

あのとき金魚を吐いた人は
いったい誰だったんだろうか
近所の人に聞いてみても
そんな人は知らないと言う
ようく思い出してみると
あの人には顔が無かったような気がする
多分
この世のものではなかったのだ


暮れてゆく空がざわざわと音を立てて
耳に入り込んでくる
それが嫌で
イヤフォンをきっちりと耳にはめ込むのだが
そのわずかな隙間からも夜は染みてきて
心が薄青くなるからさみしい
とぼとぼと歩くと
引きずっている自分の影の長さに驚いて
思わず立ち止まってしまう
もうすぐ家のすぐそばまで来ているのに
そんなことばかりしているから
いつまでも家に帰れないわたし



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