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ゆめかうつつか

2009年04月13日 06:22



もう夜も遅くなった頃に
近所のペットショップ店で
女性のトリマーが動物の毛を
丁寧に丁寧に刈っているのを見た
あれは何の動物なのだろう
女性が鋏を入れると
入れたところからまた毛が生えて
だからちっとも毛刈りは終わらない
彼女は困ったような顔で
しきりに汗をぬぐって
動物はうるんだような黒い眼で
虚空をぼんやり見つめている

結局そのペットショップでは
何日経ってもその動物は陳列されないのだった

裏ではあの女性トリマーが
今でも毛を刈り続けているのだろうか
あの動物はいったい何だったのだろうか
現実だったのかどうかも分からない
そういうような現象をときどき眼にする


昨夜 夢で
無闇に吠えかかってくる向かいの家の大型犬を
執拗に蹴り続けて殺す夢を見た
そして今日の仕事帰り
いつも通る暗い道で
夢で見た犬が夢で見たのとおんなじに
腹をへこませて血を吐いて
死んでいるのを見た
向かいの家の窓は煌々と電気がついていて
誰も気づいていないかのようだ
わたしは暫く立ち尽くしていた
街灯がぽつりとさびしげで
周囲は大変静かであった


帰宅して押入れを開けたら
知らない女の子が入っていた
体育座りをしていて
触れようとすると怯えたように まあだだよ と言う
きっとかくれんぼをしているんだ
そっとふすまを閉めてまた開けたら
もういなくなっていた

あのときわたしは
本当はどうすればよかったのだろう
なぜだか知らないが
あの女の子はもう
遠い森の中かどこかで
死んでいるような気がする
胸がいたむ
眠れぬ夜が続いている


いつか
胸が悪くてどうにも起き上がれない日々が
幾日か続いたことがある
息を荒げて薄い布団の上
眼を閉じて寝ていたのだが
あるときどうしても我慢ならなくて
枕元に吐いてしまった
目をひらいてそっとみると
あのべとべとの粘液や
忌わしい未消化物は一切見当たらず
掌の上に載せられるほどの
小さい小さい人間が
ぴゃああと言いながらちょかちょか走り回って
少し開けていたドアの隙間から
外へ出て行くのが見えた
呆然として呼吸をすると
胸の悪さは
嘘みたいにおさまっていた

そのせいだとも思われないが
あれ以来
どうも放心状態が続いて
体が自分のものでなくなってしまったような気がするのだ
指一本動かすのも苦心するようになってしまった
あれはもしかしたらわたしを動かしていた
司令塔のような存在だったのかも知れない
また放心して我に返り苦笑する
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ははおやたち

2009年04月11日 15:28


ある町の雑踏で
すれ違った母子連れの話だが

手をひかれている子供は
火のついたように泣いていた
母親はなんとなくあやしたりなだめたりしていたが
どうも泣き止まないらしいと気付くと
子供を苦もなくくるくるっと丸めて
ちょうど柔らかな毬みたいな形にしてしまってから
ひょい
と持っていた鰐皮のハンドバックに仕舞った
ハンドバックはしばらくもぐもぐ動いていたが
やがて動かなくなってしまった

誰も騒ぎ立てなかったし
わたしもなんとも思わなかった
帰りの電車に乗ってから

と気付いたのだった

あの小さな鰐皮のバックのなかで
あの子はどんな夢を見たかしら



きちっと飾り立てた礼儀正しい子を従えて
着飾った母親がぞろぞろと
うちの前の道を通ってゆく
入学式でもあるのだろう
さんさんと平和な朝の陽射し

ときどき子供たちは
はたっ
と静止してしまう
母親たちは慣れたふうに
彼らの後頭部あたりをねじ回しでいじくり
電池をぱかぱか交換するのだった

それらが全部通り過ぎ
あとに残ったものといえば
使用済みの夥しい単三電池と
不幸にも
電池を換えてもらえなかった
出来損ないの子供たち

ガラスみたいな透き通る眼で
じっと空を眺めている



深夜
ふと
わたしもいつか母親になるかしら
と考えると
どうしようもなく怖くなる

あんな人間になりかけの
花みたいに弱々しいかたまりを
慈しむことができるだろうか

考えたがわからなかった

代わりに子供の泣きまねをしたら
案外うまくできたから
ずっとそれをやっている

遥か彼方で最終列車が
戻れなくなるところまで
乗客を運んでゆく音がきこえる



月刊未詳24 四月号 投稿作



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