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ユーチューブでアニメ観ようとか考えている

2008年07月31日 09:58


がちゃがちゃと音を立てて歯車が回転している
巻き込まれてすりつぶされないように
慎重に道路の右端を歩く
あの鉄の歯車が見えるようになったのは
職を失って家に閉じこもるようになってから

眠る時間さえ見失い
深夜 昼 夕方に起きる日々
どうしてだか一度も朝に目覚めたことはない
毎日
目覚まし時計が鳴るから起きるのだけど
セットした覚えがないのになぜ鳴るのだろうか
また買った覚えもないのにどうして
部屋じゅう目覚まし時計だらけなのだろうか

電池を抜こうと思って裏蓋を開けたら
最初から入っていなかった
透明の単三電池を抜くふりをしてみる
乾いた笑いが口から洩れる

じっとしていると病気でもないのに
いきなり体が膨れ上がって
死んでしまいそうな感覚を覚えるので
用も無いのに町へ出てみた

頭上では今日も歯車が回り
その回転に巻き込まれて
仕事があって恋もあり悩みも適度にあるような
なんだか素敵な人たちが
人生に陶酔しているような笑顔で
一緒にきりきり回っている

なんとなくグロテスクであるが
抱いている犬も動かないようであるが

あれを見るとなんだかもうしばらくは
働きたくないような気がしてしまって

でもこれは言い訳かもしれない
本当は
ウィキペディアとユーチューブのことばっかり考えている

そのうち
証明写真機の前を通りかかったので
なんとなく写真を撮ってみた
画面の指示に従って
やる気のある表情とか作ってみる
出来上がった証明写真は
なんだか斜めに傾いて
笑顔も怪物じみていて
呆然と立ち尽くしてしまう

びりびりに破いて宙に撒く
紙片が歯車へ吸い込まれてゆく

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著しい退化

2008年07月31日 09:56


めざめたら
体中が赤の水玉だらけになっていた
なんだか痒くて仕方がない
そのうえ頭皮にまで広がってるらしく
頭をかきむしらないといられない

体中かきむしっていたら
いつしかわたしは皮膚病の犬となり
ひよひよひよひよ
毛をまき散らしながら
自分の尾っぽを追いかけている

けして手に入れられないもの
けれども追わずにはいられないもの
ああ希望とは理想とは
こういうものであったのか

分かった
と叫んだつもりだったけど
喉から漏れたのは悲しげな遠吠え


立って冷蔵庫の前へ行く
この頃は冷凍庫の霜ばかり食べている
暑さの為だと思うのだけれど
ラーメンとか牛丼とかそういうような
生きていると実感するようなものが食べられない
霜は独特の味がする
空気と風と埃の味だ
自分がどうして生きているのか
分からなくなるような味である


机の前に座って手紙を書いている
手が震えてうまく書けない
罫線から文字がはみ出して
呪いの手紙のようになってしまう
仕方がないので封筒に向けて
手紙ありがとうとか喋り
声が逃げないうちにすぐ封をして
切手を貼って投函したりしているが
なぜか返事の返事はこない
声が悪いからだろうか
空に向かって発声練習をしてみるけれど
なんだかどこにも届かないみたいだ
空が果てしない


美しい風景を見て何か書こうと思った
早速ノートを膝に広げて
削っておいたHBの鉛筆を走らせる

直線を引っ張り曲線を描き
ようやく出来上がったものを見てみたら
そこに広がっていたのは数字だった
何の脈絡もない数字の羅列
87397871231354682103212314564
消しごむで消して書き直したが
何度やっても数字しか書けない

それ以降わたしのノートは全頁
数字で埋め尽くされるようになった
1213215648778829852258164165416

足し算はとても早くなったし
数字もゴシック体のように正確に書けるようになったけれど
なんだかやっぱり満たされない
溜息をついてノートを閉じる
57852134897651352415867563467856
白い花が咲いている
12124547987882828541328719999363

学校と女子と男子

2008年07月28日 07:20



机を彫刻刀で切り付けて
切れ目をひとつ作って指で開くと
そこに海が広がっているときがある
授業中やお昼休みの間はつま先から飛び込んで
そこでじっとしていた
息ができないという点では
水中でも教室でも同じだった
彫刻刀をしっかり握りしめて
それだけがわたしの武器だった


担任の先生は
○ばっかり付けていると不安になるらしく
答えが合っていても時々×を付けることがあった
そういう回答は
テスト後の答え合わせの時に申告しても
それは言うなればバランスなんだと言って
けして○にしてくれなかった
だからうちののクラスには満点を取れる子が一人もおらず
その代わり零点の子もいなかったけれども

何事もバランスを重んじる先生で
テスト中や授業の小テスト中は
教卓にいつも入れているやじろべえを出して
人差指の上に載せて遊んでいた


美術の授業中に何を言われても
紙粘土で同じ人形ばかり作っている子がいた
通学かばんにはその人形の
砕けた足や手が詰まっていた
いつもうまくできないのだろう
それはすらりとした女の子の人形で
眼が一つしかなく
またその眼はあごのあたりまである巨大なものだった
町内の美術展覧会のときにその人形を
おかあさん
という題で出していた


全校集会の校長先生の話は退屈である
あんまり同じことばかり言うので
機械ではないかという噂があった
校内ですれ違うときに挨拶をすると
きゅっち と何かが軋む音を立てながら
正確に九十度の礼をする人だった


靴箱から上履きを出すと
いつも画鋲が落ちてきた
たまに靴底に刺さっているときもあるので
履く前には気をつけなければならない
たぶん画鋲が生えてくる材質の上履きなのだと思う
そう思い込んだ方が生きるのが楽になる


貧乏な子や容姿の悪い子は必ずいじめられて
性格の悪い子はひっそりと仲間から外される
休み時間に全裸にされて
肛門に鉛筆を突っ込まれ
泣いていた男子のことが忘れられない
けんちゃんという子だった
幼馴染だったが
クラス二十九人を敵に回す勇気がなくて
たすけられなかった
見ていることしか出来なかった

学校というものは自由平等の精神を学ぶ場所ではなく
不自由と格差を学ぶ場所なのだと思う


放課後けんちゃんと喋っていたら
ふうふ ふうふと囃されたので
校庭に転がっていた石をつかんでぶん投げた
その石は正確に囃した男子の額を割って

謝らされたのはわたしだ
どうしてなのか今でもわからない

(また)見えない人の話

2008年07月28日 06:13

わたしの生まれ育った村には
鮮やかな花が咲いていて
広大な田地が広がっている
野良犬がそこらじゅうにべとっと寝ていて
曖昧な微笑みを浮かべる村人と
いないはずの人たちが生きていた

たとえば幼稚園生だった頃に
ご飯だよ と毎日公園まで呼びに来る
灰色の服を着た男の人は
家族でも親戚でも友達のお父さんでもなかった

いつも素直についていったけれど
家の前を過ぎてもまだ歩こうとするので
ここが家だからと言って手を振り払っていた
手を振り払わなかったら
いったいどこへつれていかれただろうか
でも悪い人ではなかったように思う
かすんだような記憶の彼方に
そういう類の思い出が幾つがあるのだが
泣くわたしをおろおろしながら背負ってくれたり
手のひらから動物ヨーチを出して食べさせてくれたりした
顔を思い出そうとしても
いつも逆光で黒く塗りつぶされたようになっていて
わからないのだが

思い出すといつも泣きそうになる
夕暮れと毛羽立った灰色のセーター
夏でもつめたかった背中であった

小学校のときには
いつも家まで迎えに来て
学校まで手を引いて行ってくれる女の子がいた
わたしは生来ぼんやりとした子供で
脇道や路傍に何かの死骸や木の実が見えると
それを触ろうとして道を逸れるような性質だったが
その子はそれを正そうとするかのように
強く手を引いて戻してくれた

その子の机はいつも無かった
教室の後ろで立ち尽くし
切望するような眼で黒板を見ていた

卒業してから不思議に思った
わたしはその子の名前を知らない
一緒だったのは毎朝の登校時だけ

卒業アルバムを見れば
わかるだろうと思ってめくってみたが
そんな子は居なかった
家族も覚えていないと言うし
なんだか切ない
切れ長の眼をしたおかっぱの女の子だった

ある時何かのはずみで
あたしは必要の無い子供だから
と言ったあの子の横顔を思い出す
そんなことなかった

少なくともわたしだけは今も昔も
寄り道から引き戻してくれるあの子が必要だった
もう言えない
たぶん二度と会えないし

それでもこんなにやさしい人々がいたと
誰かに伝えたくて一心に指を動かしている

濃い青空の広がる夏
道端で雑草を摘んでいたわたし
地平線まで続く土を踏んで
半透明の人が手を振っている
涼しい風が吹いて
麦藁帽子が飛んだ
それを笑って追いかけた日々

ブログを書くこと

2008年07月27日 22:11

午前一時
不健康な光を浴び
ワット数の高い電灯を当てられて
一日に二度たまごを生むしかない鶏のように
痙攣しながら日本語を一文字ずつつなげてゆく

午前二時
読者から
ブログを毎日更新しているようだけれども
あなたの書くものは自慢ばっかりだ
読むに値しない(笑)
というご意見を頂いた
ふざけんな馬鹿野郎と言いたいけれども
絶対に書けない

項垂れて読者
というか読者様
について考える
読者様は売って金にすることが出来ない
たべられない
困ったときにたすけてくれない
それでも嫌われたくないのである
友達を作るためにブログを書いてるわけではない
と 時折放言するわたしであるが
見放されることに非常な恐れを抱いている
何かトラウマがあるのかもしれない
実は捨て子だとか

ここにいるここにいるよと呟いている深夜二時半
日の暮れた丘の上で一人
モールス信号を発しているような

掌が非常に熱い


を打つと予測変換で無数に顔文字があらわれる
人生で一度もこんな顔をしたことはないが
とりあえず適当に選んで文末へつける
打算的な書き方だと失望する
失望するたび背がちぢむ

深夜三時
右上のバツボタン若しくは左矢印の戻る で
ブログを閉じてはっとする
まだ書き足りないことがあったのではないかと思う
まあ書き足りないことと言っても
魚肉ソーセージの外装フィルムに付いた身は必ず歯でこそげ取るんだ
とか
明日歯医者へ行ってきます
とかそういった下らないことなのだけれど
でもその一行を書き足せば
誰かが見てくれるかも知れないと思うのである

広大なインターネットの海に浮かぶ無数の
四角いウインドウの向こう側から
覗くさまざまの人の顔
その中のどれか一つに
わたしを何から何まで完璧にわかってくれる誰か
が居るかもしれないと思っているのである

まあ居るはずないんだけども

夢を見ることは自由だから

午前四時
挨拶はおはようございますに変わる
明朝体の文字が11ptの大きさで
病原菌のように目の前に打ち出されていく
布団にうつぶせて眼を閉じる
身長がだいぶちぢんでいる
おやすみなさい

(^◇^)ノシ

バッグの意味

2008年07月25日 20:41


わたしのバッグは黒色で
いつもぷくっと膨らんで
それで非常に重たいです
いつも利き手で持つ為か
右腕だけがだらりと伸びて
地面に付くほどになりました

バッグを持っていないと均衡が取れず
無様に転んでしまうので
トイレに行く時でさえ
バッグは欠かさず持って行きます
うまくやるので拭くときも
特に支障はありません

問題なのはバッグの中身です
持っていてもそう何回も
開ける機会はありませんので
何が入っているのか分かりません
おそるおそる開きます

ある時は無数の鳩が飛び立ったし
またある時はボルトばかり何百個もこぼれおち
先日は水がとめどなく溢れてきたし
人形が詰め込まれていたときもありました
油断もすきもないのです
わたしの意思ではありません

今日もバッグを持っています
路上にしゃがみこんで開けてみました
すると切符ばかりがばさばさと
何百枚も何千枚も
路上を埋め尽くす程に出てきました
一枚一枚確認すると
乗った場所はばらばらですが
いつも一区間分しか買っていません
端の方には駅員さんが
鋏を入れた跡さえあります

切符はわたしの誕生日
昭和五十八年十月六日から始まり
本日平成二十年七月二十五日まで
一日一枚 計九千百二十五枚ございました
すべての切符を出しつくすと
あとに残ったのは百円硬貨五枚とインク切れのボールペン
たったそれだけでありました

立ち尽くしてしょんぼりします
わたしの持っているものはたったこれだけ
消費税がありますので
百円のものも四つしか買えません

切符は夜風にさらわれて
空へ舞い上がり消えました
まるで雪のようでした
あんなにもたくさんの日々を
無為に過ごしてきたのかと思うと
なんだか背筋が凍えます

どこかでお祭りでもあるのでしょうか
とんとことんとこ儚い太鼓
よくよく聞いてみましたら
それはわたしの心臓の
小さい鼓動でありました

2008年07月21日 03:38

海を見るのは好きだけれど
泳ぐのはあまり好かない
ぬめぬめしたものが絡まりつくし
飲んでしまう海水はいつだって
あまりにのどに塩からすぎる
それなのに夏になると
いつの間にか海に居るのは
夜中になると上がる無数の手や
砕けた貝殻や魚や宇宙
そういったものに呼ばれているためだろうか

何年か前
海水浴へ行った帰りの道で
わたしを含めて二人だけの筈だったのに
後部座席に一人
人が増えていたことがある
それに気づいたのは高速をおりてからで

ねえ一人多くない
と顔を近づけて囁いた相手は
湿って歪んだわたしだった

夕暮れの海に向かって体育座りをして
ともだちの惚気話を聞いていた
そろそろうんざりしてきた頃に
眼前に扉が現れた
ぺらぺらの一枚だけの扉
どこにもつながっていないようだった
ふとともだちが立ち上がり
それを開けて中へ入っていった
入っていって出てこなかった

え と思ってわたしが開けても
そこには眼前の風景があるばかりで
ぱたん と倒れた扉は
波にさらわれていってしまった

それっきりともだちの姿は見ない

でもほんとうに正直なところ
ちょっと いい気味だと思っている

暗い海に胸まで浸かり
火のついた煙草をくわえて
こちらを見ている人がいる
夜はとっぷり更けているようで
その人の顔は見えない
ひとすじの煙が空に立ち昇って
送り火のようでもある
やがてそのひとは何も言わずに
ざぶざぶと沖のほうへ行ってしまう
煙草の先端の火だけが
小さくゆらゆらと進んでいく

そういう夢をよく見るのだけれど
目覚めたあとには必ず
布団に砂がこぼれている
そして
財布を覗くとレシートとレシートの間から
ポケットティッシュを出すとそのパッケージの隙間から
ぱらぱらぱら
砂がこぼれてくる

服を着てポッケットに手を入れてみた
ざん と海水が指先にふれ
いったい海はどこからどこまでつながっているのだろう
わからない
寝転がると溺れてしまうそうだから
ずっと正座してテレビを見ていた
砂嵐は潮騒の音がする

 ミ ミ 

2008年07月21日 01:34



ミミという女の子がいて
今もどこかで生きています

彼女は
ゲームセンターのUFOキャッチャーで
お母さんにキャッチされ
取り出し口から生まれてきました

生まれたての彼女は
背中にすこし毛が生えて
それで耳がとても大きかったので
お母さんが ミミ と名付けました

ミミのおうちはどこもかしこも
四角いおうちでした
お母さんは家の中で
刃物を握ってばかりで
目や口元をひからすばかり
ミミにはご飯もくれません

お父さんは初めからいませんでした
その代りに
おじいちゃんとおばあちゃん
という名前の木の胸像がふたつ
リビングに並んでおりました

そのうちミミは痩せて目ばかり大きい
お母さんにそっくりの女の子に育ちました
ミミの服はいつもたばこくさいのです
それはお母さんがたばこを吸うからです
そのお母さんは春の終わりに
刃物を握ったまま浴室に入り
水の満たされた浴槽で眠っております

あんまり起きないので とうみん かもしれない
でも今は夏なので とうみん ではなくて
なつみん というものなのかもしれない

ミミは水道水を飲んでちょっと膨れて
おなかがすいたと手を見つめました
でも 指は
全部たべてしまってもう無いのです

仕方がないので
痩せた足で飛び跳ねて遊んでいます
あんまり体が軽すぎるので
飛び跳ねることを覚えたのです

何も教わらないのに
飛び跳ねることと食べることだけは
自然に覚えたミミでした

おなかがちゃぷんちゃぷん
音を立てて

半透明な光が射し込んでいます

夏の変なこと或いは、幽霊の始まり

2008年07月19日 16:13



川底いちめんに
青白い子供たちの顔が
隙間なく敷き詰められて
にこにこ笑っている
岸辺で何かを探すように
水底を見回しているのは母親たちだ
自分の息子や娘を探しているのであろう
でも みんな同じ顔をしているから
幾日探したって見つけられない

名前を呼んだって全員が全員
まるで返事をするかのように
岸辺の草を揺らすのだ


真昼の太陽は硝子の破片のような
鋭い光を降らしつづける
あんまり強く降らすから
地上に立っている人たちは
少し血を吐きながら歩いてゆく


夕暮れは幻のような薔薇色
染まってゆく地平やビル群
惨殺事件のあとのような
ある種のぽかんとした気持ちで見つめた


やがて街灯がぽつぽつ灯り
途端に街は色を失う
昼間オールカラーだった人も建物も
全部白黒になってしまう

鮮やかなのは野菜や果物ばかり
赤い林檎や黄色い檸檬が
路傍に点々と落ちている

拾って齧る人々は
それぞれ赤や黄色一色に染まって
自信なさげに少し踊る


やがて本格的に夜がやってきて
そこここに
いるはずも無い人影が現れだす

今夜はあんまり大量なので
ちょっと困った
何しろ一歩ごとに袖を引かれたり
断りもなく背に乗られたり
体のまわりをぐるぐる彷徨われたりするのだ

鬱陶しいのでポケットにあった
ゲームセンターのメダルを投げてみたら
みんな わわわわ 
とそっちへ行ったけれど
すぐ戻ってきて
お金じゃなかった
としょんぼりしている

お金だよ
と騙してその場を切り抜けたが

そのあと自動販売機でジュースを買おうとしたら
財布の中の硬貨がすべて
ゲームセンターのメダルに変わっていた


電車に乗るために切符を買おうとする
けれども
買えない
ゲームセンターのメダルは
投入口から何度入れても
ちゃこんちゃこんと戻ってきてしまう

そうしているうちに夜が更けて
どこへ行きたいのか忘れてしまった

生暖かいメダルをいじりながら
少し笑う

行き場を失ってしまったわたしは
その場でゆっくり消えてゆく


ブルーベリージャム

2008年07月19日 14:17


ジャムだったらパンにつけずに
そのままスプンでしゃくって食べるのが好き
前歯にあたってかちかち云うのがいいから
銀の冷たいスプンを使っている

ブルーベリージャムが一番好きだ

紫の小さなつぶつぶは善良そうで
涙を溜めた犬の眼みたい
わたしは犬が好きだから
できるだけ丁寧に噛み砕いて
かわいがるみたいに食べてやる

昔マルチーズを飼っていたんだ
小さくてふわふわの白い犬
ジョナサンという名前をつけて
いつも一緒にいたんだけど
ある日浴槽に沈めて
溺死ごっこをやっていたら
ジョナサンは動かなくなってしまって

舌舐めずりしながら思い出す

あのときジョナサンの開けっぱなしの両眼は
遠くのなにかを見つめて
うす紫色してた

お菓子

2008年07月19日 09:35


半永久的に腐らないもの
なんて
加工して密封された
お菓子しかないのです

だからわたしはお菓子しか食べない
密封された袋を開けると
清涼なくだもののにおいがして
それはおそらく賞味期限として定められた
一年後の今日でも同じことであろう

鮮やかな色に染められたお菓子を
ためらうことなく口へ運ぶ
何かの味がするんだけど
それが何の味だったかは思い出せない
咀嚼し飲み込んで手を伸ばす
その動作を繰り返す

此の頃はなんだか食べてばかりいるから
耳の穴の入り口まで
甘いにおいのするお菓子でいっぱいだ

お菓子では埋められない空洞が
体の中に存在しているのだろうと
うすうす感付いてはいるのだけど
それでも もう どうしようもない
暗い穴は底無しで
いくら詰め込んでも終わりがない

誰かが目の前で
何か言っているんだけれど
全然聞こえないから
曖昧に笑う

花と戸棚と着信音

2008年07月19日 08:55


ポストには請求書ばかりが届き
携帯電話の受信フォルダは
迷惑メールでいっぱいだ
履歴書を書けば誤字脱字ばかりで
修整液はとうに使い切ってしまったし

紙屑ばかりあふれる部屋で
どうしていいかわからない
一日中がさがさと動き回っている


冷蔵庫に入れ忘れた長葱から
虫が生えていた
昆虫図鑑にも載っていない虫だと思う
キャラメル色の頼りなさげな姿態
細い細い半透明の

たぶんすぐ死ぬ虫だろうから
放っておいた

あの虫とわたしとの違いを考えてみたけど
何も思いつかない
案外同じものなのかもしれない


食器棚を開けて中に入る
すこし窮屈だったけどちゃんと収まった
入っていた食器やスプンやフォウクを
全部床に落としたら
豪華な音がして 目の前が眩んだ


ちぢかまって静かに息をし
瞼を下ろすと宇宙が広がる
☆の形をした薄っぺらい星が
瞼と眼球の間の闇に貼りついて
アルミホイルのようにしらしらとそよぐ

こうして見る限りでは
天国も宇宙も案外狭いもののようである


いつの間にか眠ってしまって
外は丸っきりの闇だった


握っていた掌を開いたら
白い花が零れ落ちた
なぜだろう
立ち上がろうとしても
花びらばっかり散って
うるさくて仕方がない


遠くで携帯電話の着信音がして
いいや
それともあれは
わたしの笑い声だったろうか


なまぬるい闇
笑った口が裂けて落ち
暗闇の中で三日月となる

未来ちゃん

2008年07月11日 20:07


同級生はドラッグストアで働いていた
名前はみらいちゃん と云った

休みの日には呼び出されて
公園を匍匐前進させられたり
炎天下の坂道を延々往復させられたり
首を革紐で縛られたり
草を食わされたり 色々した
それでも甘んじて受けていた
みらいちゃんしか遊んでくれる人が居なかったから

今考えるとあれは遊びではなく
一種のプレイだったと思うんだけど
まあそれはそれで興奮したし
見下ろすみらいちゃんもやたらにハアハアと興奮していたし
同病相哀れむというものだ
少し違うか

ある日
みらいちゃんが働くドラッグストアに連れてこられ
監視カメラがあるけど
あれは張りぼてだから絶対大丈夫だ
と 万引きに行かされた

リップグロスとマスカラと制汗剤
それから何に使うのか知らないが
ラテックス製コンドーム三箱

それらを全部盗んで
店を出るときつかまった
元締めみたいな女の人だ
いやに爪の食い込む細い指をしていた

みらいちゃんが待っている筈の空間はぽかんと空いていて
わお と思った
それしか思うことがなかった

それから事務所という場所に連れて行かれて
何時間か説教を食らった
盗んだものを全部並べられ
欲しかったなら何故買わない と言われ
わたしが欲しかったわけではないので
何故買わないのかは分からないと答えると
頭をぶん殴られて ちょっと笑えた

翌日学校へ行ったらば
みらいちゃんはもう友達ではなかった
ピンク色のどろどろした
よく分からない生物に変わっていた
そのどろどろが他のどろどろにくっつかって
わたしのほうに押し寄せてくる

廊下に押し倒されたとき
窓からいやに青い空が見えた
何もかも全部嘘くさいなあ
涙も出なかった


都市伝説

2008年07月07日 03:06

「口さけ女」

耳元まで、口が裂けて広がっている女性噂妖怪。
幅の広いマスクで口を隠しており、道行く男性に、
「私、綺麗?」 と尋ねる。
答えた男性には、マスクをはずし、口を見せ付けた状態で、
「これでも?」 と念を押して尋ねてくる。


口紅をつけると
何故か獰猛になる母親であった
外出する前で気が立っていたんだろうか
普段なら怒ることもない些細なことで
よく平手を張られた

座り込んだまま見上げる

実家の玄関には
細長い小さな鏡が掛けてあって
母親はいつもそこで化粧をした

わたしを殴った興奮からか
母親の手は震え
頬骨まで達しそうなほどに勢いよく
口紅で大きな口を描く
パールピンクの三日月である

それでいて
顔は逆光でよく見えないのだ
にたりと笑うその人は
母親と云うより
なんだか知らない女に見えた


「潜む男」


「一人暮らしをしている女性の部屋のベッドの下に包丁を持った男が潜んでいたが、気付いた女性の友人の機転で難を逃れる」、「少女が友人の部屋に忘れ物をしたので取りにいったが電気が点いていなかった。しかし、少女は電気を点けずに忘れ物を回収して帰った。次の日、友人がころされていて『電気を点けなくて良かったな』という書置きがあったことを知らされる」、「親が出かけていて愛犬と夜を過ごすことになった少女が夜に『ピチョン、ピチョン』という音に気付き目を覚ます。怯えてベッドから動けないでいると犬が手を舐めてきたので安心して眠る。朝、部屋のドアを開けると犬が喉を切られてつるされていて『手を舐めるのは犬だけじゃないんだぜ』と壁に書かれていた」など、さまざまなバージョンが存在するが、いずれも体験談として語られ、女性の一人暮らしの恐怖に関連する点が共通している。


住んでいる市から広報が届き
一人暮らしの女性は家に入る前に
ただいま
か何か言って
中に人が居るように演技したほうがいい
ということが書かれていた

でも未だにそれを
実践することが出来ない
誰もいない家に帰ってきて
ただいま
と言って
おかえり
と返されたらどうしようと思うからだ

シャンプーをしているとき
振り向かずに何か作業しているとき
ベッドに横たわって本を読んでいるとき
確かに人の気配を感じるので
この家にはわたしの他に
透明な人間が住んでいるに違いない
それが声をかけることによって
実体化してしまうのが厭なのだ

ベッドの下を覗いてみる
埃まみれのその空間には
誰もいなかったからよかった
けど
奥の方に何か押し込まれていた
引っ張り出してみるとエロ本だった
外国のものすごいエロいやつ
ページが少し湿っている
こんなもの買った覚えはないのに

男だ と思う
この家に住んでいるのは
透明な男だ


「隙間女」


隙間に現れる妖怪。
目が合うと、異次元に吸い込まれ二度と戻れなくなる。
「かくれんぼしよう」と言われ、見つかったら異次元へ連れて行かれる。


麦藁帽子をかむって
夏の真昼間に外出すると
塀と塀の隙間に女のようなものがいて
こんにちは と挨拶すると飴をくれた
薄荷の味がする緑の飴だった

女のようなものはしゃべらない
ただいつもにこにこしているだけである
優しいのでわたしは好きだったんだけど
誰に言っても
そんなものは見えない
と否定されるばかりで

ある日
女のようなものをそこから出してあげようとして
掴んで引っ張った

わずかに苦しそうにした女のようなものを
全体重をかけて引っ張りだしたら
途中でびちんと千切れてしまった

あわわ
とびっくりして手を離して
ぼとりと落ちたものは
可愛い薄紅の花を咲かせた
ペパーミントの茎であった

夜の幻覚

2008年07月06日 23:58

幼い頃は
兄と妹と三人で
床を並べて寝ていた

がっしりした骨格の子供だったが
神経質で泣き虫なわたしの為
寝室はいつも完全な暗闇にならないよう
蛍光灯の一番小さな橙の光がともされ
両親は呼べばすぐ来られるように
襖を細く開けて隣の部屋に寝ていた

ある年の夏のこと
湿度が八十パーセント
気温が三十度を下らない夜だった

他の二人は死んでいるみたいに
手を組み合わせてすやすや眠っている

暗闇の粒子がとても大きくて
呼吸をするたびに喉に引っかかるので
わたしは咳をしながら眼を開いていた

枕元には
何の胎児だろう
眼だけぎょろぎょろした襞だらけのかたまりや
紐のようなものがたくさんぶら下がるぼこぼこしたものが
くるりくるりと回って消える

理科室で見たホルマリン漬けの瓶だ
学校の一時間目
理科で鮒の解剖をしたからだろうか

妹が寝返りを打つ
組み合わせた両手の隙間から
小さい羊がはみ出している
いまみている夢の断片かも知れない

遠くで兄のうなされる声
女の人が胸の上にまたがって
にこにこしているのが見える

少し開いた襖の隙間からは
誰かの手がこちらまで伸びてきて
湿ったわたしの頬にそっと触れる
やさしく白い手であった
よく見ようとすると白い蛇に変わり
天井まで這い上がって消えた
そういうものだろうか

そしてわたしは

いつの間にか眠ってしまったらしい
気がつくと朝で
今日は遠出をするというので
みんな目一杯のおしゃれをしている最中であった

兄が野球帽のかぶり具合を調節しながら
おまえいつまで寝てんだ
と言う
頬に女の人の爪あとがついてる

髪の毛に羊毛が付着している妹は
木綿糸でつくったお手製のネックレスを首にかけ
おねえちゃんはやくしなよ
と笑った

天井裏からぞろりぞろりと
何かが這うような音が聞こえる

たべっ子どうぶつに関して

2008年07月04日 12:03

M_tabekko63g.jpg



どうぶつの形のビスケットをつまんで
無造作に口に入れてゆく
指先はあぶらじみてぎらぎら光り
塩っぽい油脂のにおいがする

嚙み砕くときすこし躊躇した
りすもかばもさいもらいおんも
血すら出さずに容易く砕ける

箱を紙に 外装フィルムをプラスティックに
跡形もなく処分してから
毒草を乾燥させて紙で巻いたものに
火をつけて咳き込む
殺人的な量の砂糖が入った飲み物を飲む
機械に囲まれてやすらかに眠る

よつあしのどうぶつが
どうもうだなんてうそですねえ
すくなくともわたしたちの方が
ずっとずっとどうもうですよ

細く開いた窓からは
湿っぽい風が吐息のように吹き込んで
何か甘いにおいがする
暗闇に咲く花のにおいだ

遠くから太鼓の音が聞こえる

少年と少女

2008年07月04日 11:07



丘の上で十字架の形に両手を広げて
ほう ほう
と叫ぶ少年は
自分のことをテレビだと信じている
一度話しかけたら
いま電波をつかまえているからじゃましないで
と怒られてしまった

少年の身体からはいろいろの音がする
ぐうぐう
とくとく
ぽこぽこぽこ
きっと
おなかがすいているんだろうと思うのだけど
少年には両親がいないという噂だ
きっと本当にテレビになれば
誰かに買ってもらえると思っているんだろう
ほう ほう
今日も夕暮れの丘に
少年の甲高い声が響く



足が速い
と方々で褒められている少女は
毎日 町中を駆け回っている
だけども誰もその姿を
しかと見たことはない
あんまり速すぎて
誰にも見えないのだ

メリットのにおいがする
七色の風が吹いたとき
それは
あの子が近くを通り過ぎたところ
少女は
ひゅうい
と笑いながら
美しいわざわいのように
どこまでも駆けてゆく
行き先は知らない


ハローとグッバイ

2008年07月04日 11:02


何百万という携帯電話やパソコンや
手紙や声の隙間から
玻璃みたいなハローが
次々と剥落し
路上で死んでグッバイになる

グッバイは綺麗な青色であるから
それが一面に落ちているさまは
一見すると
空が落ちているかのように見える

人通りの絶えた夜中
冷たくなったグッバイをひとつ
拾い上げてみた

みっしりと冷たいグッバイ

ようく見てみると端に
まだ生きているハローが
ほんの少しだけ付着している

早送りの挙句のたまごかけご飯

2008年07月04日 10:50


燃えるごみを
ごみ捨て場へ持って行こうと
外へ出たら雨であった

透明のビニール傘を差して
そのままぼんやり空を見上げる
水滴の降ってくるさまが見えるのが
大変おもしろい

周囲でくるくると人が渦巻いては離れ
ごみ収拾車が走り
花が咲いては散り
草は手を伸ばし続ける
誰かの声が近くで響いた
途端に遠くまでいき
また戻ってくる


と気付くと冬になっていた

手元のごみを見ると
半年前に捨てた
古くなった鶏卵から
ひよこが孵り 鶏へ育ったらしい
足元をせわしなく走り回っている

傘をつぼめて部屋へ帰った

君は居なくなっていた
その代わり
君の形をした影が
待っている姿のまま壁に染み付いてて
夕飯の上に雪のように埃が積もっている
食べないで待っていたんだね

抱きかかえていた鶏を放したら
君の染みの前で卵を産んだので

ごめんね
と言いながら
埃まみれの米飯に
生卵と醤油をぶっかけて
埃もろとも掻き混ぜて食べた




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