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君とわたしの生活

2007年12月21日 18:06


君は怒ると口から吹雪を吐き出す
最初見たときは
なんてダイナミックな怒り方をする人だろう
と思ったけれど
今ではもうすっかり慣れて
うわっ
と君が吹雪を吐き出し始めたら
きちんとマフラーを巻いてコートを着て
手袋をしてじっとしている
そして吹雪が止んだら
床に積もった雪を掻き出しながら
気が済んだ?と静かに聞く


暖房をつけても
ストーブを焚いても
君の震えが止まらないときがある
そういうときは距離を置いて
様子を見ることにしているけれど
ある夜
君はあんまり震えすぎて
かちゃん
と割れてしまった
粉々になった君をどうしたものか
少し迷ったけれど
普通に布団を敷いて
ちりとりで集めた君の破片をのせて
毛布を掛けておいてやったら
朝にはちゃんと元に戻っていた


おまえは無理をすると縫い目が破れて
その破れ目から中綿がはみ出してしまうんだから
決して無理をしないように
と言われたことを忘れて
米を五キロ買って歩いて帰ってきたら
べっ
と縫い目が破れてしまって
中綿がすっかりはみ出してしまった

なす術も無くそのまま
こたつで転がっていると
君が来て
赤い糸で破れ目を丁寧にかがってくれた
駄目だって言ったでしょう
と叱りながら


そうやってままごとのように遊びながら
君と暮らして一月が過ぎたが
いくら一緒にいても
解らないことばかりだ
もしかしたら君もわたしも
人間でないのかもしれない
それともこれが普通なのかもしれない

それはともかくとして
今晩はシチューだから
部屋もあたためておいてやるから
早く帰っておいで
死んでしまったって
何回でも生き返って
ずっとここで
待っていてやるから

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喫煙者

2007年12月21日 17:20

雑踏で喫煙をしていると
衛生的な感じの服を着て
酸素マスクを付けた人たちが
群れを成してやって来て
あなたはどうして煙草を吸うのか
と言う
くちごもっていると
健康の為に今すぐにやめるべきである
それに煙草には副流煙というものがあり
それは傍らの人にも害を及ぼすものである
わたしたちがこのようにマスクをしているのは
外気に混じった副流煙で
健康を害される可能性があるからで
まったくもって喫煙者と云う人種は
迷惑千万な生き物であり
罪のない非喫煙者たちは外を歩く事も出来ない
とくどくど叱り始めた
わたしは聞いているうちに
なんだか悲しくなってしまって
指に挟んだ煙草から
灰がぽろぽろ落ちるのを止める事も出来ないでいる

それにほら
そうして町を汚すのも
あなたがた喫煙者である
今すぐひろえ
いますぐひろえ
とあんまりだ
そんなのあんまりひどい
一言も反論できないまま
ポッケットから携帯灰皿を取り出して
自分の吸殻と
それと他の人の吸殻も拾って
手で灰も集めて
地面をきれいにした

酸素マスクをつけた人たちの群れの中には
青白い小さな子供もいて

そんな風に子供を青白くしたのも
わたしのような喫煙者である
とその人たちは言いたいのだろう
食品添加物より
ファーストフードより
車の排気ガスよりも
わたしたち喫煙者の立てる
か細いため息のような煙の方が
害があると言いたいのだろう

町に灰皿は一つもなくて
喫煙の出来る店もなくなってしまって
そのうちわたしたち喫煙者は
一人ずつ捕らえられて縄で縛られて
ガス室かどこかで処刑されるかもしれない

そうして世の中には
無菌室で育てられたような
透き通るような純粋な人間ばかりになってしまって
そうなったらどうすればいいのか
わたしのような
煙草の煙と一緒にしか疲れを吐き出せない人たちは
疲れたまま
体操か何かやって深呼吸して
空が青いと思いながら
虚ろな眼で生きなければならないのだろうか

誰もいない裏路地で
ひいひい泣いてから
誰も来ないことを確認して
素早く煙草を吸ってすぐに消した
そんなでも煙草はおいしかった
みじめだった

本当にごめんなさい
でもきっと死にますから
すぐに死にますから
いまはもう少しだけ許してください
と誰かに向かって呟いて
無様に洟をすすりながら
もう一本だけ
今度はゆっくり煙草を吸った

冬のチョコレートケイク

2007年12月21日 14:54


静かな冬の部屋で
チョコレートケイクなんて食べていると
ばりばりばりっと
ものすごい音がする

あんまり静かなものだから
そうしてあんまり寒いから
ケイクはすっかり凍ってしまって
それでそんな音を立てるのだ

緻密に美しく建てられた
ビルジングのようなケイクを
銀のフォークですっかり崩すとき
わたしは
強い強い大きな化け物になったような気がして
深く深く満足する

深く深く満足して
熱い息を吐き出すと
普通の女に戻るので
なんだかつまらないけれども

仕方がないので
膝を丸く折って
くちびるをすっかり冷たくして
まるで普通の女みたいに
破壊しつくされたケイクを食べるのだ

かんけり

2007年12月08日 02:22

深夜の路上に
空き缶がひとつ
ぽつりと立てて置いてあった
こおん
とけっとばしてみると
そこいらじゅうから
わああああ
と逃げてゆく子供らの声がして
にわかに恐ろしくなったものの
わたしはかんけりのルールをよく知らないので
この後どうしたらいいのか
皆目見当がつかない
皆目見当がつかないまま
ずっとここに立っている

次の鬼は誰だろう

じいぱっぱと点滅していた街灯も
さっきぱたりと消えてしまった

外の気配

2007年12月08日 02:09

戸外から帰った君は
すっかり全身に外の気配をまとって
少しぼやけたような灰色に見える
大急ぎで外套を脱がせ
靴下を脱がせ
ぶらしで体じゅう払わないと
外の気配は落ちないから
落ちないまま定着して
よその男の人みたいな顔になってしまうから
君が帰ったらなるべくすぐに
ぶらしをかけるようにしている

それでも昨日は
ぶらしのかけかたが足りなかったようで
今朝見た君は少しだけ
よそよそしいちゃんとした
大人の男のようになっていた

こうやってどんどん別の
知らない男になってゆくのだろうか
誰でも

それでわたしは
外の気配が定着してしまわないうちに
君をぬるま湯を張った浴槽に入れて
押し洗いしてすすいで脱水して
物干し竿に干したのだ

君が素知らぬ顔をして
風に吹かれて乾いている間に
部屋中ほうきで掃きだしたら
今までに溜まっていた外の気配が
山のように集まった
外の気配のかたまりは
ひとつところに集まると
灰色の人間のような形になって
なんだか少しこわく見えたが

ちりとりですっかり取ってしまうと
あわれっぽく一声
きゅん
と鳴いた




おりこうな獣

2007年12月08日 01:52


夏の間じゅう
路上でかさかさしていた蟹が
すっかりいなくなったと思ったら
瞬く間に冬がきていた

人々は皆
夏の頃よりすこし膨らみ
まるでおりこうな獣みたいに
まっすぐ一列で歩いてゆく

倉庫

2007年12月04日 16:15


職場の倉庫に
何かを探しに入るのが好きで
なにやかにやと理由をつけては
すべりの悪い引き戸を開けて
薄暗くひんやりとした空間へ入ってゆく

今日は分からないことがあったから
前の店長に聞こうと思って倉庫へ入った

倉庫には前の店長や
以前働いていた社員などが
大きい段ボール箱の中に
やわらかく折りたたまれて入っているのだ

店長在住
と書かれた段ボール箱は
積み上げられた備品の後ろの方に
所在無く置かれていた
引っ張り出して埃を払いゆっくりと蓋を開けると
前の店長が血色の悪い顔をしてむくりと起き上がってきた
お久しぶりです店長
と挨拶したのだが
何も言わずにきょろきょろしている
なんだかどんどん人間じゃなくなっていくみたいで
かわいそうだった
胸の辺りに皺が寄っていたので
そっと伸ばしてあげた

それでもさすがは以前店長だっただけあって
わからないことを質問すると
その場でてきぱきと答えてくれた
まるで今も働いているみたいに
前の店長は何でも知っている
だから倉庫にしまってあるのだ

店長をたたんで箱に戻すとき
わずかに胸がいたんだけれど
決まりごとなんだから仕方が無い
せめて精一杯やさしく
あまり苦しくないようにたたんであげた




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