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七月と八月の終わり

2007年07月31日 18:21


七月という名の男子と
八月という名の女子がいた

二人はとても似通っていて
まるで双子のようだった

七月と八月は
安いパンを食べるのも
電車に乗るのも
銀行へ振り込みに行くのも
みんな一緒に
半分ずつにした

それでいいときもあれば
悪いときもあったが
二人にとってその点は
さして問題にはならなかったようだ

七月と八月は
よくわたしの家に来てくれた
わたしの家を笑い声で満たして
そこらを薔薇の香りにして帰ってくれた

彼らはまるで完璧に見えた

ご飯とおみそ汁の次くらいに
完璧な組み合わせに見えた

でも
そうじゃなかったみたいだ

ある雷の鳴る夜のことだった
七月と八月は
抱き合ってふるえながら

神様がいますように

と祈っていた

かみさまがいますように
かみさまがいますように
かみさまが

稲光はきっと七月の小麦色の肌を
金色に照らしたことだろう
雷鳴は八月の黒い髪を
ちらちらと火のように揺らしただろう

その翌日
二人の家の前には
救急車が停まっていた

二人がどうなったのか
わたしには知る術もない

何があったのか知らないが
逃げてしまえばよかったのに

馬鹿だな

二人ともあんまり誠実すぎたのだ誠実で
優しすぎたのだ

七月と八月を失ってからというもの
町はなんとなく
くすんだようになって

わたしは
帰らない二人を想いながら
居酒屋で
めろんさわーなんて呑んでいる

ふと
薔薇の香りがしたと思ったが
気のせいだったみたいだ
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トンネル/天国/書店

2007年07月27日 16:03




わたしの住む町にはトンネルがある
トンネルはぽっかり口を開いて
雨の日にも晴れの日にもただ
怠惰そうに横たわっている

トンネルってなんだか産道みたいだ
トンネルを通り抜けるということはすなわち
産まれ直す
ということでもあるように思える

温かくて暗いトンネルは
壁といわず天井といわず
うっすらと鼓動を打っているように動いて

わたしは入り口に立ち尽くして
出口を眺めながら長いこと迷っていた
入ったら最後
向こう側で何になってしまうのか
解らなくて怖かったから

むしとりあみを持った少年が
駆け抜けてって子犬になって

携帯電話で遊んでいた女子高生が
通り抜けてってストラップになって

わたしはため息をついて
一歩踏み出す
ざしゅ
という音が反響して
羊水の中にいるみたいだった



屋上で高校生たちが固まって
いったい何をしているのかな
と思ったら
飛び立とうとしているんだった
白い開襟シャツの群れは
一度
二度
ためらうように手すりの上でジャンプしてから
両腕を広げてはためいてゆく

屋上には無数の革靴と
きゃんぱすのおとだけが残されて

飛び立っていった高校生たちは
それっきり戻ってこない
ニュースは高齢化高齢化としきりに騒いで

でも多分
とわたしは靴下を履きながらテレビを消す

でも多分どこかにあるはずだ
若者だけがたどり着ける楽園が
そこではきっと高齢化も年金も耐震偽装も
なんにも関係なくて
ただいつも美しい音楽が流れている場所のような
そんな気がする

人はそれを天国と呼ぶ



書店で働いていたら
狐の子供が入ってきて
わな図鑑
という本をレジに持ってきた
葉っぱのお金で払おうとするので
だめだよ
ちゃんとゆきちとかそうせきとかひでよとか
そういうのが印刷されてるお札を持ってこないと
と注意したら
でもこれはぼくのもっているはっぱのなかで
いちばんきれいなはっぱだから
とか言って
ぜんぜん人の話を聞かない

きれいでもなんでもだめなの
と言って
ちょっと後ろを振り向いた隙に
狐の子供は葉っぱだけ置いて
ちょろちょろっと逃げていってしまった

まったくしようのない狐である

仕方がないので
自分のおさいふからひでよを出して
レジスターの中に入れておいた

わな図鑑を買っていったあの狐は
わなにかからずに健やかに成長しているだろうか
そうだったらいいと思う
そうじゃないといやだと思う

狐の子供が出した葉っぱは
現在わたしが持っているが
晴れた日に頭の上に載せて遊ぶと
時々違うものに変身できるので楽しい

書店は今日も人や人でないものを相手にして
順調に営業を続けている

おそうめん

2007年07月27日 15:04

おそうめんを食べていると
だんだん体が軽くなってゆくようだ
でも夏はあまり高く飛べない
空気がにごっているからだ

わたしはお座布団の上で正座したまま
少し浮いて
おそうめんをすすりながら深呼吸する
すると鼻から蝉が入り
のどで上手に羽化して
飛び立ってゆく

振り返ると
やはりおそうめんを食べていた君が
めんつゆがもうないよ
と言いながら
すこし透き通ってゆれていた


真っ直ぐ前を見つめて歩く理由

2007年07月24日 16:47

小さい頃から
汚いだのなんだのと言われて
育ってきたので
思春期を迎えるころには
自分がみんなと同じ形をした
いわゆる人間
であるとは信じられなくなっていた

鏡を見ては
眼が二つのはずはない
口が一つのはずはない
鼻がこのように隆起しているはずはない
わたしはもっと圧倒的に醜くて
夏の夕空にわく黒雲よりも不吉な存在で


今でもふとしたときに
たとえば土手を疾走するときや
畦道にかがんで夕顔を見つめるとき
轢き殺された動物の死骸に手を伸ばすとき
なんかに
人間の形を失ってしまいそうになる

失って

チェックプリントのシャツや
少しゆるいズボンをその場に置き去りにしたまま
どちゃっ
と崩れて
悪臭を放つ泥の水たまりになってしまいそうな
そんな気持ちになる

だからわたしは
真っ直ぐ前を見つめて歩くのだ
少し顔をしかめて
眼をぎらぎらに見開いて
けして人間以外のものになるもんかと
そういう気持で

どんなときも
どこへ行くときも

石化

2007年07月24日 16:15

お風呂の洗い場に
石の欠片が落ちている
ああいやだ
と思って
つまさきで排水溝に蹴り落とした

それはつまり
わたしが老いていっているということで
体をナイロンタオルでこするたび
ぽろぽろと
コンクリートが剥がれるみたいにして

居間に戻ると
既に全身が石化してしまった祖母が
膳を食べかけたままの姿勢で
小さく正座している

その祖母をまたぎ越し
あがったよ
と奥に声をかけると
昨日より石化が進んだ母が
よろよろと出てきて
目の前でばたりと倒れた


と口に出してみる

は長いこと空中に停滞したあと
一とタとヒに分解されて
畳の上にばらばらばらと落ちた
わたしはそれをほうきで掃く
死んでしまった死を
ちりとりに掃き集めて捨てる

いつかは必ず死ぬのだ
そのシンプル極まりない論理
死にたくなくても
死んで欲しくなくても
いくら好きでも
嫌いでも
すべて

母は起き上がる気配すら見せず

夏の夜は静かで
なんだか泣きたくなる

デパートの階段に関する思い出

2007年07月23日 14:53


デパートの階段は
人が
魚になる場所だ

そこにいる人達はみな
非常灯の光を浴びて
知らないうちに
流線型に変わってく

下へ下へと降りてゆく様子は
まるで
巣に帰ってゆくみたいだ

わたしは子供だったから
まだ魚にはなれなくて
いつも小さい蟹になって
横歩きをして遊んでた

疲れたら
ひんやりした
コンクリートの壁に耳を当てて

そうすると
なにかが
行進するような音が聞こえたから

壁の向こうにはきっと
小さい人達が住む王国が
あるんだと思っていた

階段は大きくて薄暗くて
この世にある場所だとは
とても信じられなくて

何故かな
と泡を吐くと
ちょうど降りてきた女の人が
美しい鮭に姿を変えて
わたしの横をすり抜けていった

ライフ

2007年07月18日 12:52




雨に打たれながらも
不思議と美しく揺れるヒメジョオンに
心を奪われて
傘も差さずに立ち尽くしていた

まるで君がいるみたいだったよ

ざざざ

揺れる草は
温かく湿っていて



深夜の交差点は
四方が赤信号のまま
ずっと変わらないから
前に進めずに
途方に暮れてしまう

ビニル袋の中で
じれったそうに
コカ・コーラが
汗ばかりかいてる



マシュマロばかりが
ぽろぽろとこぼれてゆく

女の子たちは
一体どこに
あんなにたくさんのマシュマロを
隠しているのだろう

まるで玉子を産むみたいに
易々とこぼれてゆく
それは
みゅっ
と踏み付けると
いいにおいをさせた



道端に男の子が座って
じゆうちょうに
?マークばっかり書いていた

ぼくまだよくわからないよ
と言いながら

?マークで真っ黒になったじゆうちょうは

男の子の胸の中で
鳩みたいに
ぱたぱたと羽ばたいてみせた



ゆうべから
腹の下で暖めていた
郵便物をポストに入れた

すこん

云う音がして
なんだかそれは

さようなら

言っているようでもあった



さようなら

さようなら

僕は寂しい

ある夜の、わたしたちの健闘

2007年07月15日 20:39


風呂上がりに
扇風機と遊んでいたら
妹が足音を盗みながら部屋に入ってきて
妊娠したかも知れない
と打ち明けた

扇風機の風は弱に設定しておいたはずなのに
妊娠
と云う言葉が発されるやいなや
興奮するみたいに風を強めて
びゅん
とわたしたちの前髪を舞い上げた

わたしは無能な姉だから
妊娠したことなんて一度もない

妹は小さな顔を板みたいに薄っぺらくさせて

なんだか可哀相だ
いつだって妹は可哀相だ

わたしたちは
顔を寄せ合って
自然に流産するにはどうしたらいいか
ひそひそ声で話し合った

妹のセックスについてや
処女喪失の場所や
相手の男のことはどうでもよかった
それどころではなかった

妹は風邪薬を嚥下したり
布団の上で跳びはねたり
わたしの古ぼけた国語辞典で
おなかをどんどん叩いたりした

そして
それでもまだ足りない
と言って
わたしにお腹を叩かせたりもした

妹のお腹は柔らかくて白くて
叩くたびにりんりんと鳴り

確かにその中には今まさに
子供がいるようにしか思われない

明け方
なにもかもやり尽くしたわたしたちは
朝日を浴びて向かい合い
お疲れ様でした
と言うと
お互いの健闘を讃えて握手した

妹のお腹は真っ赤になってて
わたしの手は蟹みたくなってて

妹はぐったりした様子で
わたしの布団に横たわると
もし流産してなかったら
生まれてくる子供は
お姉ちゃんに似てたらいい
とため息をつくように静かに言って
すぐに眠りに落ちてしまった

蟹の手で静かに毛布を挟み
そろそろと体にかけてやる
すると妹のお腹からは
りんりん

喜ぶみたいな笑い声が聞こえた

センチメンタリスト

2007年07月14日 14:01


あの頃
わたしたちの周りには
あたたかな風が吹いて
まだ発達しきっていない骨からは
ペパーミントのにおいがした

傷口はとめどなくひらき続け
そこからは花が咲いたから
いつだって
そこいらじゅうが
花だらけだった

美しい野原のように

男子は虫とりあみを構え
手頃な女子を捕まえようと
ヌーのように土埃を上げて
走りつづけていたけれど
いつも同じところばかり走っていたから
女子の作った残忍な罠にかかって
きいきい泣いたりしていた

わたしは空高く舞い上がって
そんな騒ぎとは無縁のところで
友達と輪になって踊っていた

踊りつづけていた

花の萎みはじめる
夕暮れまでずっと

じゃあまたね
って
確かにそう言って
友達と別れたはずなのに

あの頃一緒に踊った友達とは
今まで一度も再会していない

それどころか
顔も名前も思い出せないから
わたしは
友達じゃなくて
自分自身と踊っていたのかも知れない

花も咲かないくらいに堅すぎるアスファルトに立って
そのことを
少し考えたりもする

ためしに
一度飛び上がってみたけれど
今のわたしはもう
空も飛べなくなってて

風は生臭いばっかりで
ペパーミントのにおいなんて
もう全然
しなくなってて

いなくなった子供らの話

2007年07月13日 18:17



その女の子は
押し入れを
殊の外おそれていたそうです

戸を開けるときの音が
怪物の唸り声に聞こえると
そう言って
決して自分からは
押し入れに近付こうともしませんでした

ところがある日
女の子はある些細な悪戯をしたが為
戒めとして
押し入れにほうり込まれてしまいました
嫌だ嫌だ
と泣く声は
まるで豪雨のように
そこいら中に響いていましたが

しばらく経ってから
押し入れの戸が開けられると
女の子はいなくなっていたそうです

折り重なる布団のその奥の闇からは
まだ笑い声のような風がかすかに吹いていて
それどころか
なにかわからない生き物の
大きな眼さえ
丸く黄色くぴかぴかと
明滅しているように見えたそうです



少年は穴を掘るのが好きでした
納屋にしまわれていた
錆び付いた平たいシャベルで
すくっすくっ
と柔らかな土を掘るのが好きでした

夏休みに入ってからも
少年は
虫取りや海水浴には行かず
汗まみれになって
相変わらず
すくっすくっ
とやっておりました

十日もすると
穴は黒々と立派に
深く深く地中に沈んで
光の届かない深海のようです

少年は満足げに穴の淵に立ち
それから一度振り返ると
誰かに手を振りました

それから
ひゅっ
と前触れもなく
穴に飛び込んで

それきり帰りませんでした

それからしばらくして
穴は自然に塞がって

いま
その穴のあった辺りには
小さな夕顔が
笑うみたいに
ぽかっ
と咲いて
夕暮れを背にして揺れている
ということです



水泳の時間のあとに
担任の先生が点呼をとると
一人足りなくなっていました

小さな烏のように
しょぼしょぼと濡れそぼった子供らは
ぱちくりと辺りを見回しましたが
いなくなったのが誰で
どういう顔をしていたのか
不思議なことに
誰も思い出せませんでした

担任の先生も同様でした

皆はぽたぽたと濡れたまま
教室に戻りました

全員が席につくと
やはりぽっかり空いた机が出来ましたが
そこに座っていた子のことは
やはりどうしても思い出せません

やがてニ学期が始まり
空いた机は倉庫に運ばれました

クラスは一人欠けていても
滞りなく動きました

皆は一人の為に
一人は皆の為に
なんて姿勢のクラスではなかったのです

そして三学期の始まった
ある雪の降る朝のことでした

水泳の時間にいなくなった子供が
出し抜けに戻って
自分の席のあったところに
しょんぼり立ち尽くしていました

海水パンツのままで
まだカルキのにおいをさせて

だけどその頃には
それがあの時いなくなった子供だとは
誰ひとり気付きませんでした

誰だ誰だ
というざわめきの中で

その子もどうやら
自分が誰だか解らなくなったらしく
ずいぶん長い間
首を傾げて
変な顔をしていました

ひとりでできるたのしい折り紙

2007年07月10日 09:13


野原の真ん中で
背を丸めて
折り紙でばったやかぶとむしや蝶々なんかを
次々と生み出すあの女の子を
わたしは確かに知っている

緑はあおあおとして
しかしよく見ると
それも折り紙だった
折り紙を切って無造作に
地面に貼り付けただけだった

アラビックヤマトのにおいがして
女の子の手はもうべとべとだ
あんまり不器用過ぎるのだ

間違って生まれたみたいな
銀のばったや黄色いかぶとむしたちが
ぼとりぼとりと地面に落ちて

彼女の名前を呼べないのは
よく知りすぎている為だった

男子トイレの三角コーナー

2007年07月06日 17:34

土曜日の開店前
雑務として従業員用トイレの掃除をするのだが
男子トイレに三角コーナーが設置されていることを
いつも不思議に思う

女子トイレの三角コーナーには
女子が毎月排出する赤黒いものを
折りたたんでかさかさと捨ててゆく
という立派な大義名分があるからいいのだが
男子トイレの三角コーナーには
いったい何が捨てられるのだろうか

不思議に思って
デッキブラシを掴んだまま
つま先でそっと
三角コーナーのふたを開けてみた

するとそこには
男子の抱えるあらゆる哀しみが

女子より持久走を長く走らされることとか
非常にしばしばぞんざいに扱われることとか
好きでもない女子に勘違いされたこととか
ギターを始めたけど
コードが読めなくて馬鹿にされることとか

そうした諸々の哀しみが
くしゃくしゃに丸められて
たくさん捨てられているのが見えた

わたしはなんとなくしん、としてしまう

しん、としてしまってから
見なかった振りをして
またつま先でふたを閉めた

ぱたん、と案外
軽い音がした



文房具に関する三つの話

2007年07月05日 13:06



エプロンの右ポケットに
入っている輪ごむは
いつも
いつの間にか
増殖している

ぷりぷりと震えて
産まれ続けているのだろうか
おかげでわたしは
なにかを束ねるのに困ったことはないが

束ねるべきものが無くなってしまっても
輪ごむはまだ増え続けるのだろうか

この頃わたしは毎晩のように
輪ごむで窒息する夢を見る


えんぴつが無くなってしまったので
森へ採りに行った

えんぴつの樹は
森の奥深くに
新月の夜にだけ生えるのだ
あたりには削りかすのにおいが
静かに充満して
まるでわたし自体が
芯になってしまったかのようだ

うっとりした気持ちで
よく尖った枝を
二三本折り取って帰る

帰ってから
君に手紙を書いた

採りたてのえんぴつは
やっぱり新鮮で
文字なんか夜の闇で書いたみたいに
黒々と美しく湿っていて

とりわけ
さよなら
の一行なんて
見惚れるくらいに鮮やかだ



小さくなった消しごむは
己の姿を恥じるようにして
とたた

走って逃げてしまう

猫みたいに
わたしの知らない
どこか遠いところへ行って
そこで息絶えるのかもしれない

新しく買ってきた消しごむは
自意識過剰な若者みたいに
まだ固くて粉っぽく
指に馴染むのを嫌がるみたいに
消さなくていいところまで消してゆく

夜明け前のひそやかな体験

2007年07月05日 12:30


陽が昇る寸前の
うっすら涙を溜めたみたいな庭に
裸足で
牛乳瓶のように立っていると
何かに呼ばれているような気がする

それは
昔 庭に埋めたものたちが

ハムスターが
雀が
蛙が
かぶとむしが
蝶が
すずらんが
すこっぷが
割ってしまった皿が
誰かのおしっこが
死んでしまった何かや
まだ生きていた何かが

混じりあって
温かく湿って大きくなって
地中深くでくすくす笑いながら
わたしを呼んでいる声なのだ

裸足の足が踏み付けたそこらじゅうから
新しい芽が一斉に
ごわっ
と生えてきて
足首に絡み付くのを感じる

夏は不思議だ
生きなくてもいいものまで
命を持ってしまう季節だ

わたしは
背伸びをひとつしてから
それらには一切
気付かない振りをして
新聞を取りに郵便受けへ向かう

幼稚な独白

2007年07月05日 00:26



あかりのついていない
自分の部屋へ入る時は
すこしだけ怖いです

だって
既にわたしが帰ってきていて
折り紙を折ったり
お手紙を書いたりして
遊んでいたらどうしましょう

その場合
あちらのわたしは必要でも
こちらのわたしは不要であるから
背骨を丸めて咆哮しながら
闇に溶けちゃうしかありません

この世にわたしという人間は
一人も在れば充分なのです

そんな気持ちであかりをつけて
いつものように乱雑な部屋に
誰もいないことを確認すると
心の底から安堵します

心の底から安堵して
そのままわたしはごみの中

すなわち

作りかけのラブソングや
壊れたトミカや
去年の夏に集めまくった蝉の抜け殻や
遠い昔
友達から盗んだおはじきや

そんなものたちの中に
撃たれた鳩のように他愛なく
ずどんと倒れ伏してしまいます

そうしてわたしは
いつか捨てられるものたちに埋もれ
安らかに眠りに落ちるのです

どうか真夜中に
眼が覚めませんように

それだけ祈りながら

だって
真夜中に眼が覚めた時
後から帰宅したわたしが
部屋の隅に正座していたらどうしましょう

その場合だと
不要なわたしはどちらなのか
考えても多分
よく解らないと
思うんです

それがとても怖いんです

今夜の月あかりは
冷凍庫から出したてのように
きんきんに尖って冷たいです



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