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意に反する体

2007年06月30日 15:49

生きることは容易い
だが
生き続けることは難しいような気がする

と呟きながら仰向けに寝転がると
それは違う
とでも言うように
髪の毛がぴしんぴしんと跳ね上がり
額や首筋を切りつけた

わたしの体はいつも
わたしの思う通りには動いてくれない

背伸びをすると
意に反して長すぎる腕が
天井を突き破って
空を突き抜けて
小さな惑星を一つ
つかみ取ってきた
ざらざらした舌で舐めてみると
ソーダの味が広がってすぐに消えた

黒すぎる髪の毛は
勝手にどんどん伸びて
部屋中を覆ってしまうから
わたしの周囲だけ
いつも真夜中のようだ
眠りたくとも
体温は果てしなく上昇してゆくし

眼を閉じると
まぶたの裏に
君が浮かんだ
寂しくなるから
見たくなかったのに

わたしの体はいつも
わたしの思う通りには動いてくれない

真夜中の部屋で声を張り上げて泣くわたしは
非常に健康で
今日も伸びたり縮んだりしている

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ドライヴィング

2007年06月30日 14:55


世界中が
チョコレートの溶け出す温度になってしまっても
わたしはまだ溶け出さない

そのことを少し不思議に思いながら
車内の温度を北極くらいまで下げる

アクセルを踏み込むと
車は柔らかな猫のように唸るから
何だか大きな猫にまたがって
移動をし続けているようだ

もう 遥か 昔から
目的も無いのにこうして
走り続けていたような気分にさえなる

路傍に転がっている数々の死骸
侵略された惑星を見るようだ
上半身と下半身の離れてしまったパピヨン
人間の子供に酷似した猿
美しい色の腸を
何かに結びつける途中で息絶えたかのようなイタチ
死んだ動物のかおは
どうしていつも
すこし笑ったように歪んでいるのだろうか

やがて日は暮れて
世界中が真っ暗になる時間がくる
きっとくる

道しるべのように
センターラインが地平線まで伸びて
それさえ辿っていけば
救われそうだった

やさしい手つきでギアを沈めると
赤や黒や白の大きい猫たちが
眼をぴかぴかに光らせて
狂ったように駆け抜けていく

雑記

2007年06月26日 18:07



女子高生のルーズソックスの中には
何が入っているのだろう

はるか昔
恐竜が生きていて
まだわたしが女子高生だったころ
何度もルーズソックスを履こうと試みたが
あの絶妙なふくらみを
何度やっても再現できずに
結局いつも紺のハイソックスばかり履いていた

クラスメイトの
いつもルーズソックスを履いていた女の子に
一度訊ねたことがあるが
彼女は答えず
ただ高らかに
鳥のように笑っただけで

女子高生のルーズソックスの中には
何が入っているのか
わたしは未だに知らないままだ
だけど推測するに多分
あの中には
過ぎてゆく時間を惜しむ悲しみと
それから何かこまごまとしたもの
たとえばアイライナーとか消しゴムとか
そういったものが入っているような気がする

だからわたしは女子高生を見ると
いつも切ない気持になる


夜半に体がちくちくするので
裸になって見てみたら
体中の毛が小麦になっていた
黄金色にぴつんと生えた小麦は
一本一本
削ったみたいにちゃんと尖っていた

わたしはしばらく逡巡したが
思い切ってT字かみそりで
小麦を全部刈り取って集めて
それから製粉して こねて のばして
ロールパンをひとつ焼きあげた
ロールパンは不格好で温かくて
役に立たないから食べてしまうしかなくて
それはなんだかわたしに
とてもよく似ていた

初夏は変なことばかり起こるので楽しい

すべすべになった体で笑うと
窓の外で星がひとつ
バターのように溶けて流れた


野菜室を開けて
こんばんは
夕食を作りに来ましたよ
と挨拶すると
野菜たちは一斉に冷気を吐いて
ふうっと
諦めるみたいに笑った

手にしっくりとくるのは
やっぱりいつだって人参だ
ひんやりと堅い人参は
仕事ばかりして
家事もろくに手伝わないわたしの掌を
まるで許すかのように
夕暮れ色に染めてくれる

物言わぬ野菜たちは
ただ果てしなく優しい

切り刻んでころしても
文句ひとつ言わないばかりか
沸騰したお湯の中で
溶けてしまうまで踊ってくれる

背後ではニュースキャスターが
BGMのように殺人事件を伝えて

網戸から吹きこむ風は
えだまめのにおいがする



雨男と雨女

2007年06月26日 17:18


小学生のころ
仲が良かった友人の家の
お父さんは雨男で
お母さんは雨女だった

家に行くたびいつも羨ましかった
彼女の家の中はいつも雨で
じゅうたんにも床にもトイレにも
まるで熱帯のように
さまざまな植物が生えていたから

わたしたちはままごとをしながら
その辺に生っているバナナを食べ
黄色い傘を差したまま折り紙をした
折り紙はもちろんすぐに
ぐずぐずになってしまったけれど
それを友人のお父さんにあげたら
お父さんは喜んで
更に強い雨を降らせてくれたし
お母さんはそれを見て笑いながら
うれし涙を少しこぼして
足元からマンゴーの樹を生やしてくれた

夕暮れ時に
友人の家から一歩外に出ると
いつも外は
まぶしいくらいに晴天だったことを覚えている

それから少しして
友人一家は遠い街へ引っ越していった
挨拶には来なかった
たぶん
わたしの家に雨を降らせると申し訳ないと思ったのだろう

遠い街に引っ越した友人からは
今も時々手紙がくる
手紙はいつもしっとり湿って
うっすら雑草が生えている

ここいらは雨ばかり降ります

毎回のように書かれた文章を読むたび
わたしはなんとなく嬉しくなって
少し笑ってしまうのだ

友人一家が居なくなってから
この町にはめっきり雨が降らず
そのため砂漠になってしまった

わたしは少し迷ってから
友人への返事をしたためる
また遊びに来てね
そうしたら折り紙をやろうね


らくだの背中は揺れるので
いくら丁寧に書いたって
文字は歪むばっかりだけど


かえりみち

2007年06月18日 12:00


月は幸福なのだろうか
毎日毎日
あんなに太って
しかも冷たく笑っている



仕事を終えた日の夜は
なるべく歩いて帰るようにしている
疲れたわたしの足音は
ねぐらに向かうけものそのもののように
てちてち
と湿った音を立て
月をわずかにふるわせて消える



夏の夜の虫は
明るいほうへと導かれて飛ぶ
なんだか
天国へ行くときみたい
つぶやくと
道端に寝ていた野良犬が鼻で笑った

その声がすこし君に似ていたので
野良犬をそっと抱き寄せて
君にするみたいにした

野良犬は抵抗しなかったが
一度だけ大きなくしゃみをした
だから最後まではしてあげなかった



ため息をついたら
心が左にすこし傾いた
平衡を保つために
体を右に傾けて歩いたが
歩きにくいうえに効果は薄く
体を右に傾けるほどに
どんどん不安になっていった
どんどん不安になりながら
携帯電話を取り出してひらく

電池が切れていた

いよいよ駄目かもしれない

わたしは平衡を失って地面に倒れ
そのまま冷たくなるまで動けなかった

コンセントを探したけど
無かった



寄り道ばかりしているので
家に帰り着く頃には
たいてい朝方になっている
その上つむじから足の先端まで
月光や涙や鼻水で
くまなくぐっしょり濡れている
シャワーを浴びる手間が省けるので
大変たすかるのだが
しょっちゅう風邪をひくので困る

それからわたしは
ぐっしょり濡れたまま
体をちぢこめて寝床に入る
生まれ直そうとしているみたいに



月は幸福なのだろうか
毎日毎日あんなに太って
夜明けの空にぱちんとはじける



ねとねとした朝陽を浴びて
わたしは一度だけ眼を閉じる

砂嵐

2007年06月08日 18:04


今朝は
いい夢を見て眼を覚ました
いい夢を見るのは嫌いだ
生きていることがつまらなくなるから

眼を開けたまま
ふうっと息をつくと
夢に出てきたかわいいものが飛び出してきて
部屋の隅に落ちて消えた

ざあざあと音がするので
雨かと思って
立って行って外を眺めたら
雨ではなくて
砂嵐だった

放送事故だろうか

世界はいつからこんなにも
電波だらけになっちゃったんだろう

これだから
いい夢を見るのは嫌いだ
生きていることがつまらなくなる

ノイズの前に立ち尽くして
もう一度呟く
薄っぺらなわたしも指先から
だんだん砂嵐になってゆく



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