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或るカップル(男ver.)

2007年04月30日 15:08

おれが余所見をしていたその隙に
おまえときたら
ドーナツなんか食べていたのだね

おれの世界はこんなに単純なのに
おまえは何時の間にか口腔内に
油と小麦粉と粉砂糖が
溶け合って混ざり合う
複雑な王国を作り上げてしまった

おれは取り残されたみたいで
なんだか寂しい

ダイエットコークをひとくち飲むと
それは雨の味がして

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或るカップル(女ver.)

2007年04月30日 14:27


先日からあたしは
ちょっとばかり食べ過ぎている
君があたしにかまわないからだよ
一緒にいると
とてもお腹が空くの
でも
もう食べるものが無いの

だからあたしは
自分を食べることにしたわ
指から腕から胴体から脚まで
残らず食べてしまいましょう
そうしたら口だけが残るでしょう

ちょうどいいと思うの

だって君
あたしの声が一番好きって
もうせんから言っているものね

さよなら兄さん

2007年04月28日 18:10

陽光をたくさん浴びた兄さんが
崖から海へ飛び込んだ
すると
ジュッ
という音がして
兄さんはそのまま見えなくなった

妹は砂浜でそれを見て
声を立てて高らかに笑った
それは夕暮れの砂浜に
勝利のファンファーレみたいに響いていた

やがて
ひとしきり笑った妹は
新しい兄さんを買いに
町へ駆け出していってしまった

病院の海

2007年04月25日 17:34


深夜の病棟の廊下を
患者を乗せたベッドが幾つも
音もなくしずかに漂流していく
あれらはみな
モルヒネを投与された患者なのだそうだ
おっこちたりしないように
きちんと縛り付けられた患者たちは
とろりと溶け出してしまいそうな眼を見開いて
おとなしく流されてゆく

その中にはわたしの大叔父もいたのだ
たまらなくなって
大叔父さん
どこへゆくの
と問うて追い掛けようとしたら
看護士に止められた
そっとしておいてください
と事務的な声で告げる看護士は
コンピューターで出来ているみたいだった

大叔父の姿はそれ以来見かけない
ベッドが漂着するところは
患者の最も思い出深いところだと言うから
いつかまた行きたいと切望していた
タイランドにでも漂着しているのかも知れない

空っぽになった病室は
なんだか倉庫のように
薄ら寒かった

大叔母が病室の真ん中に立って
かつてそこに居た筈の人たちを
呼び戻すかのように
おおん
おおん
と遠吠えをしていた

書店で働くということ

2007年04月25日 17:15

本を読む人の眼は
例外なく真っ黒い色をしている
それはもちろん
眼が活字のインキを吸収してしまうからである
本を読みすぎて
白眼まで真っ黒になってしまった人が
こちらを向いてにいっと笑ったりすると
結構怖い
きちんと見えているんだろうかと思う

棚に沿って
ずらりと立ち並んだ人たちの間を縫って
雑誌を整頓していると
時々
樹になってしまった人を見つける
帰りたくなくなってしまったのだろう
そういう人には丁重に声をかける

お客様
お客様

二度呼ばっても人に戻らない場合は
他の店員に手伝ってもらって
根元から伐採し
店の外に放り出す
今までにそういう人はたくさんいたらしく
うちの店の前には
材木がたくさん積んである
夏になったらキャンプファイヤーをやろう
と言うと
漫画本にフィルムを巻いていたアルバイトさんが
いいですね
肉も焼きましょう
と言って笑った

書店で働き始めてから一ヶ月になるが
本というのは不思議なものだ
腕の中でさまざまに形を変えるのだ
一度
単行本を整頓しているときに
ふと気づいたら
腕の中で赤ん坊がわらっていたことがある
それは
将来わたしの生む赤ん坊のように見えた
たまらなくいとおしくなって
ベイビー
と呟きながら
背表紙にくちづけをしていたら
先輩社員に叱られた
だが
そんな先輩社員も
漫画本の並んでいる棚が
初恋の人に見えることがある
ということをわたしはちゃんと知っている
たまにうっとりした顔で抱きついているからだ

店が閉店するのは午後の十時である
わたしは床にモップをかけ
剥がれ落ちた活字や
お客様の残した性欲の欠片なんかを
丁寧に隅っこに集めて捨てる
すばやく捨てないと
活字と性欲とが反応しあって
どろどろの
得体の知れない固まりになってしまうので
注意が必要だ

お疲れ様でした
と頭を下げて
ふと手のひらを見ると
いつも真っ黒に汚れている
その手で眼をこするので
わたしの眼はだんだん大きくなってゆく
多分近い将来は
一つ目になってしまうことだろう
あまり知られていないことだが
書店の店員は
みんなそれで辞めていくのである
ほぼ一つ目になった先輩社員が
月明かりを背に
お疲れ様
明日もよろしくね
と鷹揚に笑った

逃げようと思って

2007年04月19日 03:16


逃げようと思って
荷造りをした
旅券も手配した
手紙も書いた
切手も貼った
ハンカチとちり紙も持った
ガソリンも入れた
銀貨ばかり貯めておいた貯金箱も割った

だけど
逃げても
誰も追い掛けてきてくれなかったら淋しい

と考えたら
なんとなくぐずぐずしてしまって
だからわたしは未だに
どこへも
逃げられないままである

小魚の降った日

2007年04月19日 02:29


恋人に別れを告げる為
今朝は早起きをした

天気予報によると
午後から小魚が降ると云う
猫を持って行くべきだとは思ったが
生憎と僕は猫を飼っていないし
たった一本持っていた傘も
なにかの拍子に無くしてしまった
仕方ないので
フライパンを持って
出かけることにした
なにかの役には立つだろう

議論は三時間にも及び
その間僕らは二人とも
めがねをかけていた
相手がよく見えるように
それと
傷つけられても眼が見えなくならないように

夕暮れにようやく
議論は終結した

疲れきった僕らは
百回くらいさよならを言い合い
それでもなんとなく
別れがたくて
小魚の降る町を
駅まで一緒に歩くことにした
空気は全体的になまぐさかったが
耐え難いほどではない

僕はフライパンを頭に被り
元恋人は洗面器を被っていた
遠くから見た僕らはきっと
間抜けな兵隊みたいに見えただろう

町はすっかり銀色に染まった
靴には魚の鱗が当たり
しきりにかしゃかしゃ鳴っている

駅に近くなったところで
元恋人が
急にしくしく泣き始めた
しくしくしくしく
泣くごとに
背骨がぎゅうぎゅう曲がってゆく

そういえば元恋人は
牛乳を飲まない女だった
もしかしたら骨が
千歳飴のようにやわらかいのかも知れない

僕は慌ててフライパンで
降ってくる小魚を受け止めて

君はカルシウムを摂らないから
そんなに脆弱なのだよ
とかなんとか
おろおろ言い
ひとつかみぶんを半ば無理矢理
元恋人の口に押し込んだ

元恋人は
くんにゃりと背骨を曲げたまま
それでもしくしくと小魚を食べた

不思議なことに
小魚を食べている元恋人は
だんだん猫に似てゆくようだ

その旨申し伝えると
元恋人は泣き笑いしながら
だってあたしいま猫と同じくらい飢えてるもの
と答えて
銀色のげっぷをちいさく漏らした

駅に着く頃にはもう
元恋人は
完全に猫になってしまって
改札を抜ける僕へ向かい
百一回目のさよならの代わりだろうか
首を傾げてにゃあと鳴いた
中々かわいらしい三毛猫だった

別れるんじゃなかったかな

一度だけ後悔した

公園のお友達

2007年04月18日 12:56


ちいさい子供が
泥に魔法をかけて
瞬く間にお友達をこしらえてしまった

わたしはぶらんこに腰掛けて
二人が遊ぶさまを
ぼんやり見ていた

ちいさいころは誰だって
ああいった魔法がつかえたはずなのに

やがて雨が降ってきて
泥のお友達は
流れてしまった
ちいさい子供は一人に戻って
途方に暮れたように立ち尽くしている

自殺に失敗した日の話

2007年04月15日 18:56


あるうららかな春の日にふと
生きることに飽きてしまった

これはいけないと思ったので
春の新色のくちべにを買ってみたり
大富豪になった自分を想像してみたり
夢はいつかきっと叶うと
歌いながら踊ってみたり
色々努力はしてみたが
どうも未来というものに
希望がもてなくなってしまった

それで自殺をしてみようかなと思った
自殺をしてみようかな
と口に出してみたら
不覚にも少しわくわくした
遠足の日の朝みたいに

最初は包丁を使おうと思った
それで台所へ行って
包丁を抜き出して首に当てたが
いつまで立っても血が出ない
あれえと思ったら
それはおたまだった
すると母親がやって来て
仕事もしないで何あそんでんの
とわたしを叱った
すいません
ごめんなさい
とすごすご退散するしかなかった
だから包丁は諦めた

次は睡眠薬を使おうと思った
しかしうちの救急箱には
セーロガンとワカマツくらいしか無い
どうしたものかと思いながら
とりあえず薬局へ出向き
店主に
致死量の睡眠薬ください
と頼んでみた
店主は
致死量の睡眠薬はあげられないが
代わりにこれをあげよう
と言って
チェルシーを一箱くれた
帰り道で立ち止まって
一粒口に含んでみたら
ヨーグルト味のチェルシーで
わたしはヨーグルト味のチェルシーが一番好きで
ほのぼのとした気持ちになった
だから睡眠薬も諦めた

あとは首を吊るか入水くらいしか
わたしには思い付かなかったが
日没が迫ってきていたし
ちょっと疲れてもいたので
思案した揚げ句に
どちらかと云えば楽そうな
入水をすることに決めた

入水と云えば川か湖か海
だが
生憎とここいらには沼しかない
沼ではちょっと気分が出ないが
はるばる玉川上水まで行くのも面倒だし
沼で我慢することにした

水は青緑色で生臭く
死んだ魚なんて浮いていたが
贅沢は言っていられない
よいしょ
と欄干を越えて
それっ
と飛び込んだ
どぷん
と気持ち悪い音がした

沼の中は視界が悪く
しかもごみでいっぱいだった
嫌だなあ
と思いながらしばらく沈んでいって
底のなまぬるい泥にぺたっと着地した途端
急に上へ引き上げられた

何が何やら解らぬうちに
わたしは岸辺に投げ出され
びちびちと跳ね回っていた
わたしを引き上げたのは
釣り人だった
釣り人は眼を丸くして
あんた何やってんだ
と言った

わたしは
さて
何をやってるんでしょうね
と苦笑し
ポケットからチェルシーを出して
釣り人に一粒進呈した
釣り人は合点がいかぬ顔をして
去ってゆくわたしを見つめていた

びしょびしょになって帰宅したら
案の定
散々叱られた

翌朝から
ひどい風邪で寝込んだわたしは
自殺もなかなか難しいし
面倒なものだなあ
とひとりごちながら
チェルシーを舐め舐め
とろとろ眠った

なんで自殺なんてしようとしたのか
さっぱり思い出せなくなってた

百鬼夜行/散歩

2007年04月15日 17:34


わたしが
散歩に出掛けるのは
嬉しいときではなく
哀しいときであると
相場が決まっている

その夜もわたしは
相変わらず哀しいままに
しょぼい安物のスニーカーで
しゅくしゅくと道を歩きまわっていた

夜の町の人達は
みんなお面をかぶっている
それは
天狗であったり
おたふくであったり
或は鬼であったりもするが
しゅくしゅくしながら
そういった人達と
すれ違うのは面白い

何人めかにすれ違った天狗が
わたしに声をかけてきた
知人の声をしていたが
定かなことはわからない

天狗は今現在自分が
どれだけ恵まれているかと云うことを
ちゅらちゅらと喋り散らし
わたしが愛想笑いを浮かべている隙に
ぎぎぎ
と喚きながら飛び立ってしまった

絶交しようかどうか悩むところである

更に暫く歩くと
般若と腕を組んだ鬼に出会った
鬼は恋人と同じ香水をつけ
わたしと同じ指輪をつけて
すれ違ったときに

と言った
般若は露出の激しい服を着ていた
成る程
ああいう女が好きだったのか

暫く歩いてから振り返ると
恋人も同時に振り返った
その面はもはや鬼ではなく
情けない老爺の顔に替わっていた

そんな顔をしても許してやらない

呟くとすかさず般若の女が
うるせえよ馬鹿
と叫び返してきた
やはり般若なだけはある
妙に感心してしまった
感心ついでにあの男は
生贄として差し上げることにする

散歩の終わりにコンビニに寄った
能面を付けた店員が
いらっしゃいませと発声する

ぶらぶらと雑誌コーナーの前に立つと
硝子にわたしの姿が映った
わたしは狐の面をつけていた

ためしに
こんこん
と鳴いてみた
意外とさまになっている

深く満足して帰宅した

そうして
冷蔵庫に入っていた手羽先を
むさぼり喰っているうちに
哀しい気持ちは無くなっていた

久々に安眠できそうだった

欲について思うこと

2007年04月05日 17:38


真夜中
自己顕示欲が
わたしの中から抜け出して
冷蔵庫をあさっている
そうしてますます大きくなってゆく


知らないうちに
花が咲くように
性欲が両脚の間からこぼれ出し
少し心細い気持ちになる
真昼間で
畳は陽光で温まっていて

すっかり出し尽くしたあと
わたしは抜け殻のように倒れてしまう
かさり
とかすかな音を立てて


寝ているわたしの
まぶたはいつも
うすく開いているのだそうだ
寝ている間に
世界が消えてしまいやしないか
不安でつい見てしまうのだろう
どこまで欲が深いのだろう

目覚めたときにはいつも泣いてる
夜のうちに
世界は一度
消えてしまったのかもしれない


深夜の恋人同士

2007年04月04日 16:34



恋人たちは
夜が更ければ更けるほど
双子のように似てゆき
ついには完全に融合してしまって
一人の人間になってしまう
そうして
さみしいさみしい
と呼吸をしながら
明け方の青い街へと去ってゆく

そのまま
二度と戻ってはこない
彼らの行く末は誰も知らない

恋人同士は
だから悲しい

花になった人の話

2007年04月03日 17:35

ある日
わたくしは未来へ向かって
口をあいて走っていました

そうしたら
出し抜けに蝶々が一羽
す、と喉へ飛び込んできまして
体の中をひらひらと
飛び回るようになりました

それきり
わたくしは走れなくなりました
ですからこうして
立ち止まっております

なんだか花の匂いがしますね
春なんでしょうか
それとも
もしかしたらわたくしが
花になりかけているんでしょうか

すみませんが水を一杯
わたくしの足元へ
かけてくれませんか

この頃は眼もよく見えません

喉が渇いて
いやになります


青い林檎と赤い苺

2007年04月02日 11:13

21世紀騎手キリリク詩
テーマ:青い林檎と赤い苺

いちごが赤く熟れて
春の野に溶けてゆきます
お元気ですか
君が
干してあった靴下と共に
風にさらわれてから一年が過ぎました

君がいなくなってからというもの
僕の時間は
以前より格段に速く過ぎてゆくようになり
こうしている間にも
桜は散り
向日葵が咲いては枯れ
紅葉が赤く色づいてゆきます
世の中は目まぐるしいです
僕はたちまち年をとります
きっとあっという間に死ぬのでしょう
悲しくはありませんが
途方に暮れてしまいます

思案した末
この手紙は飛行機の形に折り曲げて
両翼に君の名前を書いて
風の強い晩
月へめがけて飛ばすことにします
届いたらどうかわらってください
空のとおくで
わらっていてください

さよなら

(りんごが青ざめて
木から落下してゆきます
どうやら冬が
きたらしいのです)

習作「渋滞」

2007年04月01日 17:55

鉛筆で描いたような
地平線に沿って
車が列をなして
大人しく順番を待っている
せっかちなスポーツ・カーが時折
かわいいもののように身震いをし
森を抜けてきた白い車は
緑色に変わって
きょときょとしている
夕暮れで
あたりにはさざなみのように
ラジオのノイズ音が漂って

路上には
使用済みの成人向け雑誌が
湿ったまま無造作に捨てられている
それはまるで肌色の
死にかけた鳥のようにも見える
やがて羽ばたくつもりだろうか
そんなあられもない格好で

わたしはギアを一段落とし
すうと息を吐いて前を向く
車の列が進み始める
それはまるで未来へと向かうかのような
のろのろとした陰鬱な速度である




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