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いえのえ

2006年11月30日 13:51

小さい頃は
家の絵ばかり描いていた
庭付き一戸建て
という物質が
人生の最終形態であると
そう思っていた

今でも
画用紙を与えられれば
わたしは庭付き一戸建ての絵を
あの頃より
ほんのすこしだけ巧く
描くだろう
中に住む人も
飼うだろう犬も居ない
無人の空き家の絵を

それはとても寒々しくて
幾らりんごの成る木を付け足したところで
なんだかまがまがしいままで

ああそうか
だからわたしはあの頃いつも
絵を描いた後に泣いたのか

顔を真っ赤にして
こぶしを握って
あんなにも
生きてゆくことが怖かったのか
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どろぼう

2006年11月30日 13:23

昨日の夜
街路を走ってゆく足音を聞いた
朝目覚めると
紅葉が始まっていた
どろぼうが
僅かに残っていた夏を
すべて盗み出したのであろう

最後の手紙みたいな切なさで
落葉が地面に貼りついている

んえちうよ

2006年11月29日 22:30

んえちうよのバスが走る
子供の歓声と
折り紙が混ざった
排気ガスが空に舞う

路傍でお母さんが待ってる
エプロンのかくしに
小魚をしのばせて
多分ステップを降りてくる
子供に放るのだろう
小魚は銀で
尖ったクーピーのようだ

ばさばさしたスモックが
小さい青空のように
灰色の町中へ染み込んで行く

最後の一人が降りたとき
町は夜になるのだろう
バスは青空を放出し
だんだん空っぽになってゆく

さようなら

路上に残った小魚を
踵でつぶすと
カルシウムの音がした

ようちえん
正しい方向に居たならば
ちゃんとそう読めただろうに

王様

2006年11月29日 16:17

ふとしたきっかけで
王様と知り合いになった

漫画喫茶だった
王様は玉座に座るように
リクライニングシートにもたれ
隣のブースに居たわたしに
飲み物を取って参れ
と言ったのである

自分の分のココアと
王様の分の緑茶を手に戻ると
王様はネットサーフィンをしながら
苦しゅうない
と言ったのだ
王様が見ていたサイトは
スピリチュアルなんとか
とか云うやつで
王様は霊魂とか信じるんですか
と聞いたら
たわけ
と怒られてしまった

以来わたしは王様付きの家来
と云うことになって
たびたび呼び出されるようになった

今日は王様と一緒に
海に行った
王様の荷物は多い
折畳み式玉座
とか
黄金の杖
とか
携帯用王冠
とかで
革鞄はぱんぱんである

王様は浜辺に玉座を出して
ぎゅうと深く腰掛けた
そして水平線を指差すと
あれが世界の果てかな
と言った
いいえ
とわたしは答えた
いいえ王様
世界はもっともっと広いのです
あれは境界線に過ぎません
王様はかなしそうな顔をした
そんなに世界が広いならば
余は死ぬまでに
全てを見る事は出来ぬのか
くちおしいのう

玉座に腰掛けた王様は
花の中央のおしべのように
堂々として見えたが
少し背骨が曲がっている所為か
何だかしおたれて見えた
王様の国はどこなんですか
と聞くと
余は国を持たぬよ
余の居るところが国じゃ
そして世界の中心じゃ
と言って笑った

浜辺の風はそよそよとして
王様の王冠はきらきらと光る
帰りませんか
と聞いたところ
余はここにおる
と言うので
王様を残して先に帰った
それ以後
王様には逢っていない
波にさらわれたのかも知れない
それとも
違う家来を見つけたのかも知れない
海の近くを通るたび
余は国を持たぬ
と云う王様の声が聞こえる

正月に初詣に行ったら
自分のことと
王様の幸せを
八対二くらいで
祈ろうと思った

八百年前の月夜に

2006年11月29日 15:58

深々と更ける夜にふと
八百年前だったね
と母が青白い声で言った
丁度八百年前に
お前がうまれたのだね


わたしは
鉛筆を置いて振り返る
そこに居るのは
母親に似た
違う人だった
多分わたしも
月光を浴びて
わたしに似た
違う人になっているのだろう

かすかに息を吸って
ああそうだね
と返答した
そうだね母さん
わたしが生まれたのは
今から八百年前の
このような満月の夜だったね


母は微笑む
白檀のような匂いがする
わたしたちはちんまり座って
眼の前の地平線を眺めた
衣擦れの音

八百年前にはまだ居なかった
父の寝息が聞こえる

夜明けが近かった

キリスト(前編)

2006年11月28日 18:39

水曜日
僕は喫茶店のテーブルに座って
哲学者のように沈黙していた
ミミ子に別れを告げられたのは
先週のことだった

ミミ子は犬が好きだった
犬を飼うのでイサオとは別れる
と云うのがミミ子の出した最終結論で
意味が不明だと思うので説明すると
ミミ子が飼う犬と云うのは
アリスケと云う男の持ち犬で
つまりそれはその
ミミ子は犬を飼うと同時に
アリスケと一緒に暮らす
と云うことであった
アリスケと云うのは僕の友達で
こないだ3人で鍋パーティーをやった
ええと
つまりそういうことだ
2人がいつできちゃったのかは知らないが

おれのどこがいけなかったんだよ
とか
そういうことは一切頭に浮かばなかった
ミミ子がこれから飼う犬でアリスケが既に飼っている犬
と云うのはシー・ズーだろうか
ペキニーズだろうか
それともゴールデンレトリバーだろうか
と考えていたのである
アリスケの家に遊びに行って見せてもらおうかな
と考えていたのである
でもそれは無理だよな
と思い直して
もう一口アメリカンを飲んだ
冬っていうのは寂しい季節だと思う
人が硬化する季節である
僕の胸も例に漏れず硬化して
笑いすら浮かべられない状態になっていた

喫茶店はそろそろラストオーダーの時間で
確か昼くらいに僕は来店したので
正確を期すならば8時間
時給750円のアルバイトならば
大体6000円貰える
それくらいの時間を
僕は無為に過ごしてしまったのだった

キリスト(後編)

2006年11月28日 18:39


喫茶店を出ると
街はイルミネイトしていて
もう直ぐクリスマスだよなと思う
西洋の聖誕祭をこんなにも喜んでしまう
日本人って民族は本当に間抜けだ
間抜けといえば僕もそうだ
クリスマスを独りで過ごすのは厭だなと思う
独りで過ごすのが厭だから彼女つくろうかなとか思う
だけど
どうすればいいんだろう
ゆるゆる考えながら
めがねを曇らせていると
ペットショップの前を通りかかった
入ってみるとハムスターが安く売られていた
ハムスターってのは可愛いねずみのことだ
もわもわしていて柔らかそうで
だけど未開拓地の村ならば
間違いなく食用にされる類の小さな生き物
ずいぶん迷った挙句に
僕は心臓くらいの大きさのハムスターを買った
財布の中にまだ少し金があったので
ひまわりの種も買った
帰る途中
携帯が震えて
ぱちっとひらくとアリスケからで
3人でクリスマスパーティーやんねえ
とか言う
誰がやるかボケナス
と答えて切った
切ってからすぐに
ハムスターの名前はキリストにしよう
と思いついた
クリスチャンからは怒られるかも知れないが
でもそうしよう

路傍で立ち止まってケージを開き
キリスト
と呼びかける
既に寝入っていたが
もう一度
キリスト
と呼びながら
指先でそっとさわると
幸福を具現化したようなさわり心地で
何故だかは知らない
すこし泣いた

エレベータ

2006年11月27日 11:28


四角い三次元空間の中に
自分の気配が溶けて行く
他人の体温と混じりあう
それというのは
結構官能的であると
思うのだけど
どうにかなる前に
いつも一階についてしまう
階数ランプが
一人ぼっちみたく点灯し
ワイヤーが軋んで

抜け出さないから
どこへも行かない
上下に反復するのみだ
エレベータは観覧車に似ている
その無為さは青春に似ている
形は老朽化した校舎のようだ
色は裏路地のコンクリートだ

ふと煙草のにおいがして消える
それは
居ないはずの人の気配

水槽に泳ぐ魚のように
わたしは隅っこに身を寄せる

------

「未開拓詩地区」
十月テーマに寄せて。

ねずみ/蟻/山椒魚/くま

2006年11月26日 22:39


・ねずみ

幾ら両手を遣っても
雨からすら逃れられなかった
わたしが
どうやったら
何を守れるか
とか

考えていたら
濡れねずみになったから
ちゅう
と泣いて
駅に入った

なんでかな
右も左も
解らなくなってる

レールを辿って
帰ろうと思った

・蟻

おさないころ
年寄りにはどうして
歯が無いのかが不思議だった

寝しなに祖母に尋ねると
蟻が持っていったんだ
と言った

歯は角砂糖に似ているだろう
だから寝ている間に
蟻が間違えて持ってっちゃうのさ

後日しばらく
わたしは両手で
口を押さえながら眠ったらしい
悪い蟻が来ないように

そうやって
おかしげに語る
祖母の歯もいつしか
蟻に持ってゆかれたらしく

わたしは僅かに俯いて
紅茶に砂糖を二つ落とした

両手で口を押さえると
甘いにおいがしたようだった

・山椒魚

しらじらと浴槽に
身体を横たえ
そうしてそのまま
どこへも行かない

排出された気泡がはじけ
青い憂鬱が湯気に溶け
皮膚とタイルとの境が消える
眼だけゆらゆらさ迷って

山椒魚は逃げ出さず
ただ三日月を眺めては
ふかぶかと夜に息をつく
故郷の川の夢をみる

生きてゆけない訳ではない
さりとて生きたい訳でもない

今宵の月は悲しげである
何を照らしているのだろう

・くま

くまが一頭欲しい
生きてるやつがいい
出来れば
つきのわぐまがいい
さみしいときに
抱かさって
さみしいね
さみしいね
と泣きながら
温かい月の模様のところを
人差し指でさすってみたい

くまが一頭欲しい
つめはそのままでいい
出来れば
力が強いのがいい
何時か
何もかも解らなくなった時に
気持ち良く
ころしてもらうために

ねえ
そんなくまを
一頭くれませんか
わたしに

(先日
山の猟師のところへ行き
そんな相談をしてみたが
殴られただけで
だからわたしはまだくまを
一頭も持っていないのである)

ぐりこちよこれいと

2006年11月26日 14:10

じゃんけんで
始めにぐーを出す癖は
昔から変わらない
ぐりこ
ぐりこ
と夕暮れに向かった

太陽にとろりと背中が溶けて
だんだん見えなくなってゆく
後方で
それを見ていてくれたのは
父だったか

だからあんなにも
安心していた
溶け流れても
また
組み立てて貰えるって

ぐりこ

ちよこれいと
に抜かされ
解っていたのだけど

気付いていなかったのか

直ぐ後ろに迫ったのは
それは既に
父では無く

握ったぐーが
汗をかいて

呼び声に
振り向いても
もう

思い出と食堂

2006年11月25日 13:34


大学の近くに
みすぼらしい食堂があった
不味い
と云う噂だったが
どうしてつぶれなかったろうか

少し空いた戸からは
べたべたした飴色のテーブル
屹立した割り箸立て
それから
どこにつながっているとも知れない
ねずみ色の薄闇が見えた

暇そうにおかみさんが
頬杖を付いたりもしてた

デカダンスっぽい感じで

樹脂性の見本品は
何時も
モザイクがかったように
埃にまみれ
置き去りにされた
価値の無いアンモナイトみたくて

わたしはあそこに居た時に
どうして一回でも
確かめに行かなかったろうか

前を行き過ぎるとき
あんなに下らない話をしていた
口をあいて
はあはあしていた
貼り付いた影法師の
重さなど知らずにいた

馬鹿だったから
なにもかも持ち切れるつもりで居たよ
好きな人も
義務も
夢も娯楽も

だけど
何年かしたら
何も残らないようになった
一過性のものものは
ほんとに二度と
戻らない

食堂の前で
溜息をついてた
なんだか酷く疲れていた

ありがちな経過ではあったが
わかったのは
自分の小ささで
わたしが泣いても
涙は海になどなるわけがない
足元を湿すばっかしだ

五年分の荷物は
鞄一つと
段ボール五個
あとは無数のわだかまり

住んでた町を去るとき
発車ベルが鳴るさなか
一度だけ振り返った
何だかラーメンのにおいがしたから

車内に乗り込むのは
三歩ふみだせば
それで充分だった

朝の情景

2006年11月24日 15:32


朝起きると
正中線が曲がっている

御免ね
今朝は
きみじゃない人の夢をみた

つまさきが遠くて
ちゃんと歩けているのかな
こんなんで

階段の踊り場に
錆びたボルトが一本
落ちてた
水を飲んだら
下から全部あふれた

ボルトをひろって
はめなおす
どうもぼんやりしていけない

正中線が
きちんとした頃
決まって体内から
鳥が飛び出す
その羽毛は
夜の色をしている
追い掛けようとしたら
髪につまづいて
一体
いつの間にわたしは
こんなに髪がのびたろうか

呆然として

そのとき初めて
空が晴れていることに
気付いた

つめばかりが
魚のうろこみたく
きらきらしてて

教習所ロビー

2006年11月24日 14:40


分針がすこしずつ
じゃきりじゃきり
刻むたび
あと一本吸える
って
小さくなりながら

ソファーには
昨日と同じ人が座ってる
ぬくいさん
という高校生
夜学にかよっているんだって
ぬくいさんが動くと
わきががくさいから
動くな
ってみんな言う
だからぬくいさんは
所在無さげに
偶像みたいに静止してる

誰も見ちゃいない
夕方のワイドショー
音声が床に落ちて
ぼたぼた云ってる
サハラ砂漠って
こんな風な
寂しいところなのかも知れない

チャイムの音はごく控えめだが
本能にまで届く程
絶対的だ

誰かが深い溜息をつく
ぬくいさんの存在感
圧倒的だ

みんなもう
随分刻まれてしまって
半分も無い

あと一時間後には
削りかすだけ遺して
わたしも
消えちゃうんじゃないか

外ではエンストした車が
溝にはまって
汗をかいてる

怒涛の恋愛

2006年11月23日 15:49

赤銅色のしーそーに
滑空してゆくひこうきに
乾いてしまった水脈に
わたしは度々きみをみる

昼間
ぷらたなすを揺らしたのは
きみでしょう
逢いたいと願ったんだ
あの香水のにおいが
中空に
漂ったままきえない

何時の間にか
つめをかむ癖がついたようだ
十本のゆびさきは
猫のようにやわらかい

砂時計の砂は
全部抜いてしまった
待つのは厭だ
二十本の指は
すこしおおすぎる
多分
全力を出したら
きみのもとへ行くのに
十秒とかからない

明かりの消えた玄関で
わたしは姿勢をととのえる
しんみりと
這い上がってくる冷気は
肋骨の間にはさまり
妄執に姿を変えて
血管に取り込まれた

もう
ておくれだ

どこからか聞こえる
しーそーの軋轢音
それを
スタートの合図としよう

非常口のひとがた

2006年11月23日 15:01

雨の日にともる
ブレーキランプのように
置き去りにされて
放課後
いつまでも泣いていた
女の子は
非常口のひとがたになりたかった
と言う
がらんどうの市民体育館で

きっと
おおきくなってゆく過程で
何時しか忘れ去られてゆく
そう云った思いを
どこからか吸い上げて

非常口のひとがたは
今日も脱出できないまま
りゅんりゅんとひかっている
硬直して

誰かが仕舞い忘れたままの
バスケットボールが
転がっている



疑問符

2006年11月22日 10:51

春の公園に
縦列して
なわとびをする子供たちが
つながってゆく
へびのように見えた

わたしは
頭がおかしいのだろうか

ステップ

2006年11月22日 00:42


夕暮れになると
何時も
ちいさい誰かが
心臓を歩き
始めるのである
とことこ
その微かな振動や
揺さぶられる静脈や

わたしは
涙ぐみながら
加速する
それしか
能がないからである

五時になると
この町には
ゆんゆんと
カノンが響き出す

涙と魚の相関関係

2006年11月18日 17:41



錯綜している視神経の
からまりあった編み目の間に
ちいさい魚が
かかっている

つめたいつめで
そっとつまんで
涙腺の中へ
放してやろう
水草があれば尚いいが
涙腺の底には
水草は無くて
代わりに
いくつもの
うすあおい硝子片が
あるように思う

魚はそこへ棲むだろう
気泡を吐いて踊るのだ
それはきっと夢のように
愉快ですこし
痛いだろう

ゆっくりでいいと思う

2006年11月18日 15:03


公園の
ぶらんこの前に
散乱した
足跡

視床下部に
舞い込んで
そこで朽ちる
落ち葉

はい
だいじょうぶです
わたしは
元気です

未収

2006年11月17日 17:28


郵便受けの中に
蝶々の形をした手紙が
ぎっしり
留められている

わたしは
ピンセットを遣って
ていねいに剥がし
掌に落としていったのだが

手紙は未だ
生きていたらしい
あとからあとから
羽ばたいてしまって
どうしようも無い

歯痒くなって
マッチで燃やした
飛んでるのも
留まってるのも
抵抗せずにみな燃えた

ついに
郵便受けは空になった
こぼれだした熱いインキが
結末みたいに
点々と残っているだけだ

燃え残った蝶々が
白い罫線を見せながら
足元に落ちて
まどろんでいる

きえる―父へ、きれぎれに

2006年11月17日 15:35


今宵もまた
お父さん
あなたは咳をしていますね

青い毛布をかけましょう
それはあなたの首元で
小さな海となるでしょう


お父さん
わたしは
あなたの命が
太い根底から
細分化した先端まで
完全に消える
そのときまで
あなたに属していたいのです


ああ
お父さんのロウガンキョウも
誰のものでも無くなる時が
きっとくる
そのときわたしは
たくさん泣くでしょうか
いま泣いたら
お父さんは
わたしより永く
生きてくれますか


こわいのです

今が最期であるかも知れないと
深更
あなたは背を丸めます
それは
しばしば
石化していくかのように
見えます


襖の向こうで
わたしが
耳をそばだてているのを
あなたが知っているといい
或いは
あなたが映画俳優で
今は撮影中であるといい
いままでの全部が
全部
演技であると一番いい

とまる

2006年11月16日 16:27


はしりだすと
とまれない
わたしには
たぶん
ぶれーきが
ひょうじゅんそうび
されていないのだとおもいます

ときどき
かそくしすぎて
とんでしまう

くちが
ひゅうひゅういいます

はしりだすまえに
ふりかえっても
だれもいなくて
きみもいなくて

かなしいものは
かなしいままに
せいふくのむれにうめて
なにかを
おもいだしそうだけど

ゆびがひらき
わたしはこくうをつかみます
いえ
つかもうとしたのです

しかしながら
くうきばかり
するうりするうり
ぬけてしまって
なにももっていないのに
どうしてなにもつかめないのか
りりくしながらかんがえましたが
あたまがつめたくなるばかり
そらはあおくなるばかり

そんざいしないぶれーきが
きしんだような
きがしました

すきとおる

2006年11月16日 13:14

今日
昨日も会った人に
最近見かけないけれどどうしたの
と言われた
それでわたしは
自分が透明になれること
―風のなかでじょじょにすきとおっていけること
を発見した
たしかに凄い発見ではあるが

わたしは少し笑って
それから少しさみしくなって
君とは昨日も会ったよ
電器屋の横で会ったよ
と言おうとした
けれども
何時の間にかすきとおって
じべたに平たくなっていたので
伝えることは無理そうだった

こころは不思議と静かであって
じべたは案外やわらかかった

知人はじょじょに
遠のいてゆくところだった
その背中は丸で
何かの表徴みたいに揺れてたけど
でもそれはいったい何だったかな
うまく考えられなくて
銀杏が確か
雨みたいにちってて


下書き(日々の習作)

2006年11月15日 13:02



しゅんじゃく神社
と云う神社をみかけた
春寂神社と云う字である
煮過ぎた菜っ葉を
噛んだときの音みたいだ
と思った

神様も春は寂しいんだろうか


教習所の帰りに
落ち込んだ侭
ココスに入った
子供が泣いてたから
泣きたいのはこっちだよ
と思いながら
妙に好戦的になって
ハンバーグとサラダとパルフェを注文
みちみちみちと食らいつくして
持ち合わせが足りなくて
母親に電話した

子供が泣いてたから


飛行機雲と黒雲と
夕暮れが混沌として凄い空だ
方法的懐疑を試みたが
あれは間違いなく空であって
間違いなく凄くて
圧倒されて
脱構築も出来ない


辛いとか
さみしいとか
疲れたとか
そういうのをだらだら
口の端から零しながら
足跡をつけてく
誰かに追ってきて欲しくて


生きている
と云う事は既に
生に束縛された状態

真夜中の長女(短歌)

2006年11月14日 21:10


ニコチンで
始終頭をぼやかして
例え世界が終わっても
(けして悲しくないように)


パン屑を
こぼすと群がる小鳥にも
家庭はあって
欲望もあって


真夜中に
長男は祈り次女は駆け
長女はじっと
耳を澄ませる


父の手も
声も顔もにおいも全部
永遠に覚えて
おけないものかなあ


黒々と
手帳は埋まってゆくけれど
すべきことなど
本当は無くて


針立てて
ちくちくちくと縫い進め
言葉も思想も
国境も越えて



しあわせは
一瞬のうちに過ぎ去りて
目覚ましが鳴る
途方に暮れる


うねっても
吼えても鳴いても叫んでも
去るものは去るし
残るものは残る

変貌する女

2006年11月14日 16:18


毎年この時期になると
瞼が退化するので
夜は
眼をあいたままねむる
口をあいていると
小さい生物の死骸が入るから
歯はくいしばるようにしている

深更
瞳孔がうっとりとひらき
白眼がしらじらと冴え渡る
そうなると最早
何も解らなくなって
フェード・アウト

朝起きると
首に噛み痕がついていたり
腕が一本増えていたり
羽が生えていたりする

もう既に
そう成ってしまっているので
仕方が無い
騒ぎ立てたりはしない

わたしは
ひとつ欠伸をして
諸々ひっつけたままで
ラジオ体操をやる

冬が深まると
瞼だけじゃなくて
もっと色々退化するので
今のうちに体力を付けて
酷いことには負けたくないので

深呼吸をして
腕を降ろすと
羽がばさっと取れた
三本めの腕で拾い上げ
庭の隅で
落ち葉と焼いた

真っ直ぐに上がった煙は
遥か上空で
飛行機雲と交差し

まばたきをしようとしたけれど
涙が湧いただけだった

恋の切除

2006年11月14日 00:05


路上で
一人の痩せた人が
青いナイフを取り出して
恋人らしき人のお腹を
鮮やかな手つきで開腹し
ほかほかした切り口から
あっという間に
何かを切除してしまった

恋人らしき人は呆然とした
血は出ていなかったが
痛みはすこしあるようだった
おなかは可愛いステッチみたいに
さくさくさくと縫い合わされ
信号が変わった

痩せた人は去り
青いナイフはいつの間にか
空に溶けてしまってた

痩せた人が切除したのは
あれは若しかして
恋だったのだろうか
どうしようもなく肥大化して
破裂寸前だったのかも知れない

確か学校でならった
恋はいい加減に扱うと
肥大化して破裂するって
それは
周囲の人を巻き込むこともあり
非常に悲惨なのだとか

また
一定の条件を満たせば
肥大化せずに硬化する場合もある
恋が硬化したものは
往々にして愛と呼ばれ
広範囲にわたって
各臓器と癒着するため
切除は出来ず
また有効な薬も無い
救いようの無い状態
なのだそうだ

恋人らしき人は
それから何回
赤が青になっても
青が赤になっても
その地点から動かなかった
泣いてはいなかったけれど

体内が
あるべきものを無くして
淋しいんだろう
うすくひらきはじめた
傷口の向こうには
闇が広がっていた

次に恋が育まれるまで
長い夜の中を
生きなきゃならないんだろう

どんな気持ちがするのかは知らないが
横顔は
案外
やすらかであった

自殺願望と高校生

2006年11月12日 14:19


その時確かに
さよならと
振り向きざまに
彼女は言った
それは何の暗喩だったろう
僕はちっとも気付かなかった


まどをあけておいて


と彼女は言う
教室はプレゼントの箱の中みたいだ
如何して僕は
こんな人が好きなんだろう
沈黙と意味を為さない会話
彼女は窓から
何が入ってくると思ってんだろう

また沈黙
制服が揺れてる


おくじょうって
あたしすきよ
ふゆがくるのがみえるから
あたしがわらうのは
さびしいからであって
おかしいからじゃないわ


救急車の音が聞こえる
英語の授業中

わかんないな
彼女は何を恐れているんだろう
何ひとつ知覚しないで
何がわかるというんだろう
今回は
女子トイレに
カッターを持ち込んだらしい


あのね
あたし
いかなきゃなんないの
あっちで
あたし
はなやをやろうとおもうの
びょういんみたいな
しろいはなばっかり
あつかうつもりよ


決まって彼女は一人で
なにもかも終えようとする
僕がいるのに
僕が此処にいるのに
何処にいたって
空ばっかり見てる
逃げるのは
狡いと思う


ふゆがくるまえに
あたしきっと
ねむっちゃうわ
ずいぶん
つかれちゃったの
だから


その時確かに


さよなら



振り向きざまに
彼女は言った

彼女に出会ってから
二回目の冬で
死に様は全然
美しくなんかなくって
汚らしくて惨めで
白い花なんて
似合うわけもなかった

生物より数学より物理より
理想と現実との差異を
学ぶべきだったんだと思う
僕たちは

安眠日

2006年11月11日 14:06

愛は愛の侭
留めておくことが
出来ないのかも知れない

詮ないことをぶつけあって
温度差に泣くのかも知れない

ざらざらと足の骨が
夜に感応して
指がうごきだす
何処か湿った場所を探って

牛乳をのんだあとのコップが
脂肪分をへばりつかせて
しらじらと白けて

安心して
と言って
透き通っている

魚(食用)

2006年11月09日 17:21

「うるめいわし」

石灰を流したような眼で
うるめいわしが
此方を見ている
その口元は
あいらびゅ
と言っているように見えて
切なくなっちまう
もうじき冬で


「こおなご」

布団を干したら
シーツの隙間から
こおなごがいっぴき
ぽろりと落ちた
いったい僕は
眠っている間
何処へ行っていたんだろう


「ししゃも」

ししゃもは
帰らない人を待っているから
あんなにも口をあいているのです
月夜の晩の食卓に
置き去りにされた
ゆうべのししゃも
たまごを抱いたまま
ナイフのように
じょじょに固く
尖っていきます





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